Wakana、音楽を信じて歌う“一人じゃない”という想い 武部聡志プロデュースで生まれた癒しのアルバムを語る
松井五郎や鯨庭の言葉から浮かび上がってきた“伝えたかったこと”
――そして、「希望」で〈それでも夜は明ける〉と信じ、「殻」でも〈だって かならず 陽は昇る〉と歌っています。
Wakana:「希望」は岩里祐穂さんに歌詞を書いていただいたんですけど、岩里さんはこの世界の今の現状を歌いたいという思いがあったみたいで。戦争とか、悲しいことがなぜ起きるのかっていうところにスポットを当てているんだと思います。私は歌い手として、岩里さんが歌詞に込めた思いを大切にする義務を改めて思い知らされたし、勉強になった曲ですね。
――「殻」は作詞:松井五郎さん、作曲:武部聡志さんのタッグです。
Wakana:デビューシングル『時を越える夜に』に収録されていた「翼」は武部さんが作ってくださった曲で、今回は「翼」の続編のようなテイストの曲を作りたいとおっしゃっていて。それで、作詞を松井五郎先生にお願いすることになったんですけど、オンラインの打ち合わせで初めてお会いして、「翼」のことや、私が初期に書いた歌詞のことをいろいろと聞いてくださったんです。「翼」をもとにしつつ、そこから時を経た話という曲になっているので、「翼」と照らし合わせて聴いていただきたいですし、松井先生から私に向けたメッセージも入っているなと思います。
――Wakanaさんはどんなメッセージを受け取りましたか。
Wakana:松井先生に「私は人を信じるのが怖い」っていうことを話したんですね。ついつい信じてしまうんですけど、裏切られることもあるし、そのたびにすごく傷つくんですよ。世の中はある意味、面倒くさい人で溢れていて、自分自身のことも面倒くさいなと思ったし、相手もそう思っているんだろうなと考えると、「もういいや、一人で!」ってなる瞬間があるじゃないですか。そういうときは自分がすごく孤独に感じるんですけど、「いや、そうじゃないぞ!」と。やっぱり大切な友達や家族のような、いつも一緒にいてくれる人はすごく支えてくれている。だから私は前を向けるし、このアルバムの中でも言っている「一人じゃないんだよ」って感じることができるなって。仕事でもスタッフの皆さんがいてくれるから、こうやってアルバムを作ることができて、歌えている。そう思うと、昔よりも歌う楽しさも増したし、みんなに伝えなきゃっていう思いが強くなったんですよね。
――なるほど。「そのさきへ〜Interlude〜」を挟んで、「KEMONO feat.清塚信也」は1番では〈ひとりきりで〉と歌ってますが、2番でついに〈ひとりじゃない〉という思いに到達してます。「Rapa Nui」とも共通するメッセージがありますよね。
Wakana:そうなんですよね。「KEMONO」はアルバムの中で最後の方にできた曲なんですけど、鯨庭さんが歌詞をくださったのは昨年で、「Rapa Nui」が同時期ぐらいに楽曲が来たんですけど、ちょっと似てる部分があるなって思っていたから、すごいなと思いましたね。
――作詞はWakanaさんと鯨庭さんの共作になってます。
Wakana:鯨庭さんは「一人でいることを恐れないで」「他人と違うことを恐れないで」ということ、それでも胸を張って生きていっていいんだよっていうことを伝えています。今、社会の中にはいろんな人がいて、それぞれにスポットを当てられてきているじゃないですか。だからこそ、みんなが一人になることを恐れないでいいし、でも、一人じゃないっていうことを忘れないでほしいっていう思いに繋がってて。この曲は最後の最後まで一番悩んで、歌詞も最後にできた曲なので、このアルバムのいろんな面を担ってるかもしれないですね。
――歌が速くて、難解なメロディラインですよね。
Wakana:今までに経験のない速さと難しさだったんですけど、私は言葉をちゃんと伝えたかったので、日本語が聞こえるギリギリのラインを探って歌っています。
――清塚さんとのコラボはいかがでしたか?
Wakana:すごく気さくで面白い方でした。武部さんもそうなんですけど、清塚さんも1回ずつのプレイにちょっとした違いを出してくれるんですよね。それがプレイヤーの方のこだわりでもあり、魂だなって思うから、それを見るのが楽しくて。ミュージシャンの皆さんのレコーディング現場は、本当に毎回勉強になるので、見てて飽きません。途中に入るフレーズにはジャズっぽさがあって、ゲームのようなピコピコ感をピアノで表現するのがカッコいいなと思ったし、間奏は超絶技巧の“スーパー清塚タイム”。あと、とにかくいい匂いがしました。
「あとひとつ」をさらに深く掘り下げた「そのさきへ」
――(笑)。「KEMONO」で〈あぁ 夜明けが来る〉と歌い、ライブで歌ってきた「明日を夢見て歌う」で〈僕ら〉が手を取り合い、「Flag」で〈僕たちを称える歌声〉が鳴り響き、タイトル曲「そのさきへ」と「あとひとつ」というひらがな表記の2曲へと向かっていきます。「あとひとつ」もライブでお馴染みの曲ですね。
Wakana:これは一番古くて、5年間歌わせてもらってきた曲ですね。本当に不思議なことに、「あとひとつ」と「そのさきへ」で歌ってることも一緒で、私が言いたいことはずっと一緒なんだなって思いました。ただ、最初は「あとひとつ」はライブアルバムにも入っていたので、このアルバムに入ることをあまり意識してなかったんですね。「そのさきへ」をアルバムのラストにしたいと思っていたんですけど、武部さんから「あとひとつ」が最後の方が絶対にいいと思うよって言われて。
――ライブでもいつも最後に歌ってた曲だから。
Wakana:そうなんですよね。武部さんは今までお客さんが見てきた景色をちゃんとわかっている人なんだなって改めて感じました。「あとひとつ」はもともと、曲を書いてくださったときから、「この曲は祈りだよ」って武部さんに言われていて。なので、私はいつもライブに来てくれている皆さんのことを思って歌詞を書いたんですね。一つひとつを積み重ねて、日々を生きてきたから、今日ここにみんながいるんだねっていう感謝の気持ち。それと、これから先もちょっとずつ進んでいければ、それが一番幸せだっていう気持ち。私にとっては、一つひとつを頑張ってきて、最後にみんなのもとに行けるライブがあったら、それが一番幸せっていう思いを書いたんです。だから、より“そのさき”を感じるラストになりました。
――ライブのステージに繋がってますよね。「そのさきへ」もメッセージとしては近いものですか。
Wakana:はい。「あとひとつ」からさらに深く掘り下げています。この世界は、いろんなことに絶望したり、悲しくなることがとても多い世の中だと思うんです。でたらめだと思うこともあったりする。「なんなんだ。この世界は!」って思ったときに、それでも一人じゃないんだなとか、誰かがいてくれることがすごく幸せだなって思うことが増えていて。家族がいてくれること、友達がいてくれること、いつも周りに支えてくれる方々がいてくれること、それがより一層幸せだと感じられる。これまでも、いろんな方がいっぱい歌ってきているけど、日々の何気ないことに幸せを感じられるっていうことが一番の幸せだなと思うんですよ。
――ええ。
Wakana:それって、例えば自分の親や祖父母が、「経験を積むと、どんな小さなことでも幸せなんだよ」って言うのと同じだなって。それがすごくわかる気がしたのもよかったなと思うんですね。そういう気持ちで、今を諦めてほしくないって思ったから、一人だと思い込まないでほしいなって。もちろん、一人になりたいときもあると思うけど、それがあるときに辛くなってしまうんだったら、「一人ではないことを思い出してね」っていう気持ちで〈ひとりじゃないから〉と歌っています。一人でいたとしても、群れでいたとしても、心の中に自分の目標があれば大丈夫。人はいつだって迷うし、その目標が時にはブレることもあるかもしれないけど、周りにはいろんな人がいて、いろんな意見を聞くことで、自分の中で自然と判断できる。ある意見に対して「私はそうは思わない」と思うのであれば、それがあなたの答えであって、だからと言って、一人になるわけではない。これは、自分自身にも言い聞かせていることですね。
――孤独や葛藤、悩み、人間関係の複雑さなど、全てをひっくるめて、「その先をみんなで一緒に歩いて行こう」と呼びかけています。
Wakana:そうですね。音楽で、誰かのそばに少しでも寄り添えたらいいなという思いを込めて歌っています。本当に、このアルバム1曲1曲に、私自身を含めていろんな方の強い思いが詰め込まれていて。これまでのアルバムもすごく大切に作ってきたんですけど、コロナ禍を経て、約1年間かけて作ってきたからこそ、今回は思いがより一層強い1枚になっていて。だから、これも綺麗事ではなく、本当にいろんな人に聴いてもらいたいんですよね。いつも応援してくださる方には期待してほしいですし、私を知らない人の耳にもフッと入って、少しでも多くの方に届いてほしいなと強く思います。
■アルバム情報
Wakana 3rdアルバム『そのさきへ』
2023年5月31日(水) 発売
ダウンロード/ストリーミング
https://jvcmusic.lnk.to/wakana_sonosakie
<CD収録曲>
01.約束の夜明け
02.442
03.オレンジ
04.夕焼け
05.myself
06.時には昔の話を(Cover)
07.愛にできることはまだあるかい(Cover)
08.君の銀の庭(Cover)
09.標
10.明日を夢見て歌う
11. Flag
12. Happy Hello Day
13.記憶の人
14. magic moment
<初回限定盤A(CD+DVD)>
価格:6,600円(税込)
・Live DVD「Wakana Classics 2022 ~Christmas Special~」(約86分)
01.約束の夜明け
02.442
03.オレンジ
04.夕焼け
05.myself
06.時には昔の話を(Cover)
07.愛にできることはまだあるかい(Cover)
08.君の銀の庭(Cover)
09.標
10.明日を夢見て歌う
11. Flag
12. Happy Hello Day
13.記憶の人
14. magic moment
<初回限定盤B(2CD+フォトブック+ポスター、LPサイズ仕様)>
価格:6,050円(税込)
・LPサイズジャケット仕様
・LPサイズフォトブックレット封入
・ポスター(B2変形サイズ)封入
・LIVE 音源CD 「Wakana Classics 2022 ~Christmas Special~」(約86分)
<通常盤(CD)>
価格:3,300円(税込)
■ライブ情報
『Wakana Billboard Live 2023 ~そのさきへ~』
《横浜公演》
日時:2023年7月6日(木)
<1stステージ>開場17:00 開演18:00 / <2ndステージ> 開場20:00 開演21:00
会場:ビルボードライブ横浜
《大阪公演》
日時:2023年7月20日(木)
<1stステージ>開場17:00 開演18:00 / <2ndステージ> 開場20:00 開演21:00
会場:ビルボードライブ大阪
【出演】
Vocal:Wakana
音楽監督・Piano:武部聡志
Guitar:遠山哲朗
Manipulator:前田雄吾
【チケット料金】
サービスエリア:¥9,000 / カジュアルエリア:¥8,500(1ドリンク付き)