シド、リリースから1年を経てファンに直接届けたアルバム『海辺』 苦難を乗り越え成し遂げた“最高”のライブ

 再び4人がステージに集結すると、「液体」を披露。Shinjiはステージギリギリまで歩み出て、観客たちの目の前で艶やかなソロプレイを披露した。「騙し愛」でエンジンをかけたあとは、「ANNIVERSARY」で一気にボルテージを上げていく。熱狂した観客たちがサビで一斉に飛び跳ねると、会場全体が大きく揺れるのがわかった。

 「循環」の前には、声出しが解禁されたライブならではのメンバーコールタイム。メンバーの名前を嬉々として叫ぶ観客たちに、マオは「ちょっと内股でハート作って首を傾げながらダーリンって呼んでください」とおねだり。もちろん観客たちは全力で応えた。そして「one way」で最高潮の盛り上がりを見せ、本編は幕を下ろした。

 アンコールでは、「揺れる夏服」「夏恋」とさわやかなサマーソングを立て続けに披露し、「park」「眩暈」と暴れ曲を打ち込む。観客たちは疲れた様子も見せず、激しいヘドバンやモッシュを繰り広げる。ステージとフロアの熱がぶつかり合い、再び盛り上がりがピークに達すると、ここで初期のレア曲「吉開学17歳(無職)」がサプライズ投下。「いやらしいあなたたちのために!」という煽りに続いてマオがタイトルコールをすると、悲鳴のような叫び声と共にヘドバンの嵐が巻き起こり、フロアは一気にカオス空間に。曲終わりには、マオが「最高……!」と呟きながら思わずお立ち台の上に倒れこんだ。

 そしてこの日のラストは、「海辺」。演奏前にマオは、「Zepp DiverCityでは、今日とは別人のような苦しいライブも個人的に経験してるから、その記憶を絶対に塗り替えたくて、すごい気迫をもってこのステージに挑みました。みんなのおかげでこの箱が俺の中でキラキラと輝きだしました。このツアー、今日のライブ中は、いつにも増してみんなへの感謝の気持ちが強かった。ずっとありがとうって思いながら歌ってました。俺はヴォーカリストなので、最後は歌でこの気持ちを伝えたいと思います」と素直な思いを伝えた。最大限の心を込めて演奏するメンバーと、その姿を真っすぐに見つめる観客たち。この曲が持つ愛という壮大で普遍的なテーマをまさに体現している瞬間であった。

 ライブを終えたメンバーは、晴れやかな笑顔で一人ずつステージを後にする。最後まで残ったマオは、マイクを通さない生の声で「愛してます!」と叫び、舞台袖に向かいながらガッツポーズを決めた。その姿は、シドが苦難を乗り越え、20周年という大きな節目に最高のライブを成し遂げたという証だった。

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