Saucy Dog、大躍進の先へ歩みを進める強い意志 エモーショナルな演奏が感動を呼んだ『in your life』ファイナル

 そしてライブは最終盤へ。石原がステージから放つメッセージもどんどん熱を帯びていく。「精一杯生きていると、自分が好きなことも、何をしたらいいのかも、大切なことさえもわからなくなるような時が来ると思う。そんな中でも『俺は大丈夫だ』って言えるような、そんな歌」。後半はほとんど叫びながらそんな言葉を吐き出して「現在を生きるのだ。」に突入していくと、ステージ上にはストリングス隊とキーボードのゲストミュージシャンが姿を現す。前のめりな歌と演奏を、美しい弦楽器の旋律とピアノの音色が柔らかく、大きく包み込むような特別なアレンジ。楽曲後半のコーラスでは、せとと秋澤の声に客席からのシンガロングも重なり、会場中がひとつになっていった。

 「俺の大切なおじいちゃんとおばあちゃんを思い浮かべながら書いた曲です」と、「紫苑」をこちらもゲストミュージシャンとともに届けると、歌い終えた石原は「言葉選ぶなあ」と言いながら「結構、成長させてもらえるツアーやなと思って」とツアーを走ってきた手応えを口にした。

「こうやって楽しみに来てくれているあなたがいて、俺たちもそれに応えたいし……結果的に、今日はみんなに心配をさせてしまうような演奏になってしまって、正直ちょっと悔しい。でも、今日来てみて『行ってよかったな』って思ってもらえるように、最後まで精一杯歌いたいと思う」

 そんな正直な言葉に客席からは拍手が送られる。「次は心配させないようにするからさ。またみんなに会えたらいいな」「ちょっとしんみりさせちゃったね」と笑いながらも、彼は今の気持ちを言葉にせずにはいられなかったのだろう。その正直さ、嘘のつけなさが石原慎也、Saucy Dogだなと思う。

 そして今のSaucy Dogを象徴する曲だといっていい「怪物たちよ」をすべてを吐き出すようにしてパフォーマンスすると、秋澤の弾くベースのリズムとともにアッパーな「優しさに溢れた世界で」へ。客席からは大合唱が起き、最後の最後でもう一度ガーデンシアターはひとつになった。その後、アンコールでは「Be yourself」を披露。ここでもガーデンシアターに集った全員で鳴らすハンドクラップとシンガロングが、最高の一体感を生み出した。バンドとしての意志や思い、そして聴いてくれる「あなた」に対する優しさや愛。音楽にはどちらも必要だが、今のSaucy Dogはその両輪をものすごいパワーで回転させている。この日発表された通り、7月には新しいアルバムのリリースも予定されている。そのアルバムを経て開催されるアリーナツアーで、これまで以上にスケールアップしたSaucy Dogとひとつの音楽を奏でる日が、今から楽しみだ。

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