オジンオズボーン篠宮暁、スーパー戦隊シリーズ愛を熱弁 『ドンブラザーズ』など、ストーリーを彩る楽曲の楽しみ方も語る
直近2作『ドンブラザーズ』&『キングオージャー』の見どころ
――そんな『ドンブラザーズ』ですが、どのように物語をご覧になっていましたか?
篠宮:『ドンブラザーズ』は正直、最初の10話くらいまでは「いや、面白いんやけど、どうやって観たらええんやろ?」って、ちょっと戸惑いがありました。というのも、敵組織がいて攻めてくるとか、メンバーが揃って「よし行くぞ!」ってなるとか、お約束が一切ないじゃないですか。そもそも誰が敵なのかよくわからない(笑)。だから、最初の頃は何も考えず、「1話1話を楽しんでいけばいいんや」みたいな感じで、今までとは違う見方をしていたんです。そうしたら、どんどん面白くなってきて。いや、とんでもない番組でしたよね。
――お気に入りのキャラクターは?
篠宮:鬼頭はるかはすごいと思いました。志田こはくさんの顔芸には「何回笑わされんねん!」って、観るたびに思いましたよ(笑)。はるかと言えば、教習所の回(ドン40話「キケンなあいのり」)も忘れられないし、特に映画(『暴太郎戦隊ドンブラザーズ THE MOVIE 新・初恋ヒーロー』)で、女優として芝居するはるかは、ぜひ観てもらいたいです。あと、もう一人挙げると、犬塚翼。他のみんなは「はるか」とか「タロウ」とか名前で呼ばれているけど、彼だけ「犬塚翼」ってフルネームで呼ばれているんですよね。
――終盤までみんな犬塚の正体を知らないし、なんとなく距離感を感じさせますね。
篠宮:そもそもヒーローなのに指名手配犯で逃げるところから始まり(笑)、恋人の(倉持)夏美探しのくだりや、雉野つよしとの「なつみほ問題」にも引き込まれましたね。何より柊太朗さんの演技が回を重ねるごとにどんどん上手くなってきて、それで感情移入できたところも大きかったと思います。
――『ドンブラザーズ』でお好きなエピソードを挙げると?
篠宮:さっき話した教習所回も好きなんですけど、ひとつ挙げるとするなら、ドン・キラー回(ドン39話「たなからボタンぽち」)。ドン・キラーがめちゃくちゃ好きなんですよ。幹部クラスの強敵で、たぶん例年の作品だったら数週間に亘って続くところが、この回だけで終わる(笑)。そういうところがまた『ドンブラザーズ』らしいなと。しかも、はるかたちが間違えて復活させてしまって大混乱に陥る展開がまたおかしくて。でも、ドン・キラーの描き方自体はむっちゃ怖いんですよ。みんな腹を括って、死ぬ覚悟で戦いに臨むんですけど、その辺りの展開も今までの戦隊とは全然違っていて、もう、裏の裏をかかれたかのような感じでしたね。
――最終回はいかがでしたか?
篠宮:ずっと、「どんな感じで終わるのかな?」と思いながら観ていたんですけど、今振り返ると、こういう終わり方しかないなって。むしろ、この1年間が最終回に持っていくためのフリだったのか? と思わせるくらい、実に見事な着地をしたと思います。桃井タロウの芝居も相当難しかったんじゃないかなと思うんですけど、やっぱり樋口(幸平)さん以外あり得なかったですよね。その続きが知りたくて、今(取材時点)は、あの最終回から『暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー』(2023年)にどう繋がるのか、気になって仕方がありません!
――現在放送中のシリーズ最新作『王様戦隊キングオージャー』(2023年)については?
篠宮:番組が始まった時、“正統派”みたいに言われていたと思うんですけど、僕としてはむしろ逆で、かなり奇抜なことをしているなと思いました。たぶん、『ゼンカイジャー』『ドンブラザーズ』があったからなんでしょうが、今度は5人揃っているのに、気持ちが全く揃ってないんですよね。例えば、カグラギ(・ディボウスキ)も何を考えているかわからへんし、リタ(・カニスカ)も中立の立場でいるようだけど、かといってギラを信用しているわけじゃない。それぞれが国を束ねる王様ということもあって、思惑がハッキリ見えてなくて、そこが観ていて白熱するんですよね。いわゆる戦隊の王道の展開をやらず、それでいて『ドンブラザーズ』ともまた別の新しいパターンを見せてくれるんじゃないかな、と期待しています。
――映像面でも大きく変えてきたところがありますね。
篠宮:LEDウォールを使った映像が、毎回とんでもないクオリティで、むちゃくちゃ豪華ですよね。キングオージャーに搭乗した際のスケルトニクスも見どころのひとつで、ロボといえば、コックピットは重要な要素だと思うんですけど、『ドンブラザーズ』のドンオニタイジンは本人が変身してしゃべる設定で、コックピットはなかったじゃないですか。今回、久々にコックピット描写が復活して、改めてコックピットの魅力を実感しました。それからビックリしたのは第1~5話まで、全てカミホリ(上堀内佳寿也)監督が撮られていること。パイロット版って、だいたい1~2話の担当ですよね。第1話から観続けていたら、毎週毎週カミホリ監督で、これには驚きました。過去には『仮面ライダーフォーゼ』(2011年)や『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013年)の坂本浩一監督が、4話持ちでパイロットを撮られたことがあって、あれも相当イレギュラーなケースだったんでしょうが、今回は5話分ですからね。きっと、これまで以上に入念な準備をした上で撮影に入ったと思うんですけど、5人それぞれを1話ずつ割いて丁寧に描いていて、そこは本当にすごいと思いますよ。
――スーパー戦隊シリーズの音楽については、どのように楽しんでいらっしゃいますか?
篠宮:主題歌は全部いいですね! どの主題歌もイントロを聴いただけで、「あの作品や!」とわかるのが特徴だし、聴いていても本当に胸が熱くなる楽曲ばかりです。個人的には、ブラスの音が好きで、『マスクマン』主題歌(「光戦隊マスクマン」)のトランペットのイントロがとにかく聴いていて気持ちいい。次の『ライブマン』になるとシンセが入ってきて、それはそれで子どもながらに「新しいな!」と思いました。『チェンジマン』の主題歌は(「電撃戦隊チェンジマン」)、徹頭徹尾、胸の鼓動が高まりっぱなしで、影山ヒロノブさんの歌声も好きだし、イントロから心を鷲掴みにされましたね。中には、一番最初に聴いた際に「これ、胸熱くなるのかな?」と思う主題歌もあるけど、作品を観ていくと、これがまた印象が大きく変わることもあるんですよ。
――具体例を挙げると?
篠宮:『ドンブラザーズ』の主題歌(「俺こそオンリーワン」)がまさにそう。個人的には『ゼンカイジャー』の主題歌(「全力全開!ゼンカイジャー」)が良すぎて、「俺こそオンリーワン」で熱くなれるのかな? って最初は思ってましたけど、今はこれ以上ないくらい『ドンブラザーズ』にマッチしていると思うし、聴けば聴くほどどんどん味わい深く感じられるようになったんですよね。とはいえ、ちょっと不思議な主題歌だと思います。最近だと、『キラメイジャー』の主題歌(「魔進戦隊キラメイジャー」)がお気に入りで、大人になってもあんなに元気をもらえる歌って、他にはないのではないでしょうか。曲自体が素晴らしいのはもちろんだけど、ちょうどコロナ禍だったじゃないですか。それもあってあの歌からは本当に元気をもらいましたね。
――『ドンブラザーズ』では、挿入歌やキャラクターソングも話題になりましたね。
篠宮:なんと言っても「月ノミゾ知ル。」が推しですね。いやぁ、あれはもう絶対外せないでしょう。桃井タロウとソノイの決闘回(ドン27話「けっとうマジマジ」)で流れていたけど、「こんなジャジーな曲が流れるんだ!」って。その後、再び決闘する回(ドン32話「けっとうソノ2」)ではピアノバージョンが流れるんですよ。演出も月の向きが逆になってたりして、そうやってリンクさせているのも凝っているし、スーパー戦隊シリーズは、ちゃんと印象的な場面にいい音楽を入れてくれるのが嬉しいですよね。キャラソンについては『超英雄祭』でキャストの皆さんが歌われていて、そこで改めて「ええなぁ」と思ったところもありますが、その中でも猿原真一の「空想談義」は、ちょっとエモさがあるのがいいですね。
それからTTFC(東映特撮ファンクラブ)でMV撮影の模様が配信されていた「アバターパーティー!ドンブラザーズ!」。あれはまさに『ドンブラザーズ』感が詰まっているなって。あの空気感を曲に落とし込むのって、すごく難しい気がするんですけど、短い各パートで一人ひとりのキャラクターがきちんと伝わるようになっていて、まさに「ザ・キャラソン」ですね。作曲された大石憲一郎さんは、『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008年)の「炎神ラップ」シリーズや、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011年)の「スーパー戦隊ヒーローゲッター」を作曲された方で、この手の楽曲を手掛けたらピカイチですよね。