沙花叉クロヱ×戦慄かなの、経験したからこそ言えるTikTokブレイクの真理 戦慄「そもそも“売れる”と“バズる”はやっぱり違う」
「偏見や決めつけはもう取っ払われるべき時代」(沙花叉)
ーー狙ってバズソングを生み出したということは、裏を返すとそこはお二方の音楽性における源流ではないってことでもありますよね。
戦慄:そうですね。音楽性のベースがトレンドに左右されるものだけになってしまうと、自分の特色とか持ち味がなくなってしまうと思うんです。なので、femme fataleの活動においては、自分たちのやりたいことをやりつつ、同時に狙うとこは狙っていくっていう感じですかね。
沙花叉:本当にそう思いますね。沙花叉は宇多田ヒカルさんが好きなんですけど、彼女の曲や歌詞はいつの時代の人にとっても共感できるものだと思うんですよ。どれだけ時間が経っても色褪せないっていう。自分自身もそういう曲を歌っていきたいなって常々思っているんですよね。とは言え、まだ音楽を初めてからあまり時間が経っていないので、自分に似合うのはどんな曲なのか、みんなが沙花叉クロヱに歌って欲しいと思うのはどんな曲なのか、みたいなことを探ってる段階でもあって。だからできるだけいろんなことにチャレンジしていこうと思ってます。
戦慄:自分のやりたいことっていうのは大前提ですけど、求められているものを意識することも大事ですもんね。日本にあまりなじみのないドープなダンスミュージックとかをそのまんま取り入れたとしても、みんながどう聴いていいかわからないじゃないですか。femme fataleのファンは中高生の女の子がすごく多いので、そういった子たちに受け取ってもらいやすくキャッチ―にすることは、けっこうしっかり考えますね。
ーーでは、アイドルであることへのこだわりはどうですか?
戦慄:私はすごくあります。アイドルっていう枠組みの中で活動している理由のひとつに、アイドルオタクのリテラシーを上げたいという気持ちがあって。中には楽曲派オタクみたいな人もいるんですけど、だいたいは疑似恋愛の対象としてアイドルを見ている人が多いと思うんですよ。そんな状況の中、私がアイドルを名乗っていろんなクリエイトを生み落とすことで、アイドルという存在の見られ方やファン層自体が変わっていけばいいなって思うんですよね。それがリテラシーの底上げっていうことなんですけど。
沙花叉:そういうところがいいですよね。高い志を持ってアイドルをやられているっていう。
戦慄:アイドル界隈の中では、ちょっと普通のアイドルとは違った見られ方をしますけどね。でも、アーティストの中に入ると「どうせアイドルでしょ」みたいな見られ方をするし。そういった偏見みたいなものを覆す意味も含めて、活動を続けていくことに意味があるのかなと私は思ってますね。
ーー沙花叉さんはアイドルであるという認識はあります?
沙花叉:そこは難しいところですよね。ホロライブをアイドルとして見てる人っていうのは、今でこそすごく増えたとは思うんですけど、そもそもいちファンとして当初から見ている自分からすると、ちょっと疑問が残るというか。ただ、「アイドルだから」とか「VTuberだから」みたいな偏見や決めつけがあるのであれば、そこはもう取っ払われるべき時代じゃないかなとは思います。だから沙花叉としてはどう受け取ってもらってもいいとは思ってます。基本的には「君たちに任せるよ」っていう(笑)。
ーー戦慄さんとはちょっとスタンスが違うのかもしれないですね。
沙花叉:そうですね。“アイドルとしての反逆”みたいな気持ちを持っているのが戦慄かなのさんだとしたら、沙花叉の場合はホロライブに所属している沙花叉クロヱでしかないというか。自分の中にアイドルとかVTuberとかっていう括りは正直ないですね。
戦慄:いやでも同じじゃないかな。私がアイドルだからアイドルらしくしないのと同じだと思う。あくまでも個を突き詰めることが大事っていう部分ではすごく共感できますね。
「負の感情のおかげで異常に頑張れてた時期があった」(戦慄)
ーーそんなお二人のクリエイティビティの源泉も気になります。どんなことをトリガーにして曲が生まれることが多いですか?
戦慄:私はやっぱりいい作品です。曲でも映像でも絵画でもなんでもいいんですけど、いい作品に触れるとインスピレーションを受けるし、それが創作の原動力になりますね。点と点が繋がって新しいものが見えてくる瞬間が必ずあるので、とにかくずっといろんなものをインプットしている感じです。
沙花叉:沙花叉の場合は、感情に触れたときに曲を作りたいって思うんですよ。幸せだったり、悲しみだったり、悔しさだったり、生きているといろんな感情がありますけど、その中でも沙花叉は他者の気持ちで自分の感情を揺さぶられることが多くて。例えばTwitterとかで心無いことをつぶやいている人がいたとき、その人のアカウントをめっちゃさかのぼって見たりするんですよ(笑)。そうすると、その人がどんなことを思って生きているのかが見えてくるし、心無いことをつぶやいてしまう理由も少し感じられるというか。感受性が強すぎるのかもしれないんですけど、なんだか他人事とは思えなくなってしまって。そこで、その人の気持ちになって、その人が伝えたい言葉として曲を書くんです。
ーーあくまで出発点は誰かの感情なんですね。自分の思いではなく。
沙花叉:そうなんでしょうね。今お話していて思いましたけど、自分のことを曲にするのが怖いのかもしれないです。もちろんやろうと思えばできますけど、完全に表現し尽くせるかどうかの自信もないし、意図しない受け取り方をされることへの恐れもあるんだと思います。だからこそ他者の気持ちを自分事として書く方が向いているのかなって。誰かの感情に背中を押してもらってるのかもしれないですね。
ーー創作のスタイルとしてはアリだと思いますけど、他者の人生をどんどん背負っていくのはけっこうしんどそうですよね。
沙花叉:確かにそうですね(笑)。けっこう何を見ていてもそういう受け取り方をしてしまうので、時には気持ち的にかなり暗くなっちゃうときもあって。なので、しんどくなりそうなときはなるべくTwitterとかは見ないようにしてます。
戦慄:でもそういう感覚はわかるかも。私自身、負の感情のおかげで異常に頑張れてた時期がありましたからね。今でもぶっ殺したいやつがいるときとかは、そいつがダメージを受けるくらいにクオリティの高いものを作って見返してやろうって気持ちになったりするし(笑)。気持ち的に追い詰められないとダメなんですよ。追い込まれてなんぼ。
沙花叉:負の感情が原動力になる部分はあると思います。ハッピーな瞬間に、そのハッピーを共感してもらう曲が生まれるとは限らないんですよ。変な話ですけど、自分がハッピーな瞬間だからこそ、いつもとは違ったテイストで書けるネガティブな曲があると思っていて。沙花叉は基本ベースでネガティブな曲ばっかりなんですけど(笑)。
戦慄:今の時代、みんないろんなものが溜まってるんじゃないですかね。みんな現状に満足できていなかったりもするし、刺激に飢えているところもあるだろうし。だからこそ負の感情を込めた曲が求められるところもあるんだと思う。
沙花叉:「人生リセットボタンぽちーw」もそうでしたけど、ちょっと病んでる曲がバズったりするのも、そういう理由かもしれないですよね。
ーー初顔合わせでの対談、いかがでしたか?
沙花叉:やっぱめっちゃ可愛いなって思いました!
戦慄:すいません、本当にキモい人な感じで終わってしまった(笑)。
沙花叉:いやいやいや全然全然! 想像していた以上に柔らかい方なんだなって思いましたし。お話してて、本当に楽しかったです。
戦慄:怖がられるんですよ、よく(笑)。私もすごく楽しかったです。VTuberは大人の人がプロデュースして、それに倣ってやってる人が多いのかなって勝手に想像していたんですけど、沙花叉さんのように自分でしっかりプロデュースして、ご自身のやりたい音楽をやっている方がいることが知れて嬉しかったです。VTuberという存在はすごくおもしろいと思うので、これからたくさん調べてみようと思います。
沙花叉:やったー! VTuberへの理解が深められてよかった(笑)。
ーーこれをきっかけにコラボとかがあってもいいわけですもんね。
戦慄:ほんとですよね。もしコラボするならTikTokに全振りですよ。
沙花叉:思いきりバズらせましょう! 戦慄かなのさんと沙花叉クロヱの組み合わせ自体、バズる要素しかないと思うので(笑)。
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