LAGHEADSが示す、インストバンドのニュースタンダード 2ndアルバム参加陣全員を招いた賑やかなリリースパーティー

 LAGHEADSが2ndアルバム『Where is "LAGHEADS"?』のリリース記念に参加アーティスト全員を招いたライブ『Where is “LAGHEADS”? RELEASE PARTY~聴きに来て、ゼッタイ~』を3月24日、SHIBUYA CLUB QUATTROで開催。ファンク・ジャズなど現代のインストとJ-POPにも隣接する歌もののボーダーを溶かすライブを展開し、ソールドアウトした満員の会場を大いに沸かせた。

 ステージに向かって右から小川翔(Gt)、少し奥に宮川純(Key)、伊吹文裕(Dr)、小川と同じ前線に山本連(Ba)というほぼ横一列の陣形。現在のバンドのテーマと言えそうな「Where is "LH"?」でスタートし、テンションコードのアンサンブルに歓声が上がる。身体のどこも力まない、ツボを押されまくる抜き差しが早くもフロアをグルーヴさせる。

宮川純(Key)(写真=森内春香)
 

 宮川のピアノリフから始まり、4人の鳴らす音がこれ以上ないほど明快に聴こえる「Mr. San Diego」、70年代のアメリカンロックのフレーバーが漂う小川のメインリフや宮川のブルージーなオルガンのフレーズがさらに全身を脱力させる「Edward」と、新作からインスト曲を立て続けに披露。リラックスを超えて“のどか”という表現がハマるほど、リビングルームのような心地よさを醸成していた。メンバーもニッコニコである。そこに最初のゲストであり、全員がサポートしたことでLAGHEADS結成に至ったきっかけのキーパーソン、kiki vivi lilyが呼び込まれ、渋谷系が30年の歳月を経て生音でブラッシュアップされたような「Drivin’」が披露された。2ndアルバム収録楽曲はこの日がライブ初披露なのだが、いい意味で緊張感はない。

伊吹文裕(Dr)(写真=森内春香)

 そしてkiki vivi lilyに引き合わせた張本人であり、LAGHEADSのメンバー各々とも付き合いの長いMELRAW(Sax)が、山本の「お祭り野郎が控えてます。すでにロング缶4本飲んじゃってる。呼びますか? MELRAW!」という呼び込みで登場。と同時にMELRAWは「大切なLAGHEADSのライブ前に飲んでない!」と反論し、さらに山本のMCにもダメ出しをするも自分がしどろもどろになり、会場の笑いを誘っていた。ただLAGHEADSを称して「同世代で最も(演奏で)歌えるプレーヤー」だということを言っておきたかった様子だ。気を取り直してkiki vivi lilyとこのメンバーで初めてセッションした楽曲「Brand New」に、さりげないフワッとしたサックスを融合させてみせた。さらに新作からMELRAWをフィーチャーした有機的なフュージョンテイストの「Playground」をプレイ。センターに小川と山本を呼び寄せ、ユニゾンのフレーズで山場を作り、メロウな中にもインストならではの高揚感を差し込む。メインテーマに戻るとフロアから手が上がり揺れている。思い思いの反応がステージの上にもフロア同士にもいいバイブスを伝えていく。

MELRAW(sax)(写真=森内春香)

 伊吹がシンバルのセッティングを替え、タイトな16ビートとクランチなリフが鳴らされると、LAGHEADSナンバーのリリックも手掛ける仲間、DinoJr.が登場。生音のハードな演奏でラップする「TKMKMYKN」を展開。音源同様、アウトロで小川が踏切の警告音めいた単音を鳴らす。ちょっとしたアイデアのようでもあり、アレンジとして必須に思えるのが愉快だ。演奏を終えるとDinoJr.が開口一番、自分だけ呼ばれていなかったことを愚痴り、小川からは「こんなにお客さん入ったから良かったけど、ゲスト多いから」と言われ、山本には「この曲やりたかったから良かったけど」と、関係が暴かれる様子もリアルで笑いを誘っていた。一貫してこの調子で、フロントゲストは全員、建前で付き合っていない仲間なのだろう。そのことがグルーヴを加速させる。

 さらにコールに食い気味で登場したのは高木祥太(from BREIMEN)。ハンドマイクの彼は「いつもベースを背負ってるから、今すごいドキドキしてる」とのこと。DinoJr.が同じステージにいるということで、BREIMENの「Black or White」を披露することがわかるとフロアから嬉しい悲鳴が。高木とDinoJr.のラップとメロディが混ざったバトルと、小川のギターソロの間、シュールなポーズを決める二人の様子もまた可笑しい。高木のピンボーカルでLAGHEADSと初共演した新曲「ZOMBIE'S HIGH」は温かみのあるポップなファンクだが、宮川のシンセが90年代のJ-POP感を醸していてニヤニヤしてしまう。決して一色では終わらないアレンジの妙はゲストのキャラの濃さも相まって絶妙なラインで成立するのだ。

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