リュックと添い寝ごはん、最高の一体感に包まれた『四季』ツアーファイナル 軽快かつソリッドな演奏で見せた“本当の姿”

 いつの間にか春めいてきた季節に触れ「当たり前にどんどん進んでいってるなって感じます。当たり前というのは一番尊いものだと僕は思っていて。突然、当たり前だったものが当たり前じゃなくなってしまうこともあるから、当たり前を、今を大切にしてほしい」。そんなメッセージを観客に届けると、「だからこそ僕は今を歌い続けたいし、今という儚くて尊いものを大切にしたい」と「みんなのうた」を演奏し始める。『四季』のなかでもひとつの白眉といえる名曲を、じっくりと歌う松本。一音一音噛み締めるように鳴らされる音が、今目の前にある「当たり前」に光を当てるように聞こえてくる。そしてここでもすばらしいのがぬんのギターソロだ。情感豊かなフレーズが楽曲に込められたエモーションを代弁している。

 と、歌い終えて「本当に幸せです」と感慨に耽っている松本に堂免が「忘れてない?」と叫ぶ。「今日、誕生日なんです……」。そう、じつはこの日は彼の21歳の誕生日。「なんで自分で言わなきゃいけないんだよ!」と憤慨する堂免だが、もちろん観客もそれは知っていて、フロアからは「おめでとう!」の声が飛ぶ。あまりにも誰にも祝われないために自分からスタッフに言って回っていたという寂しいエピソードを披露する堂免を見て松本が突如笑い出した。「なんでサングラスかけてんだよって思って……」と今さら彼がかけていたサングラスがツボにハマった様子だ。こういう光景を見ているだけでこっちがにやけてしまう。仲がいいというか、いい雰囲気でバンドをやれているんだな、とこういうなんでもないシーンに思うのだ。

 ライブはここからラストスパートに突入していく。これまでバンドを支え続けてきた「ノーマル」が始まった瞬間に大きな手拍子が巻き起こり、その手拍子は松本の「一緒に!」という言葉をきっかけにシンガロングに変わっていく。最高の一体感。コロナ禍で成長を続けてきたリュクソの道のりが、決して間違っていなかったことを証明するような光景だった。そこから「手と手」につなげると、フロアから鳴る手拍子に「いいね」と松本も笑顔を浮かべる。そしてその名の通りまっしぐらに走る「疾走」。前のめりのリズムにオーディエンスも飛び跳ねて盛り上がる。以前のリュックと添い寝ごはんのライブは、バンドも観客もどちらかと言えばまったりと楽しんでいる雰囲気だったのだが、今回はまったく違う。これがきっと本当のリュックと添い寝ごはんなのだ。その後「グッバイトレイン」を経て本編最後は「Thank you for the Music」。宮澤が刻むハイハット、堂免のファンキーなベースライン、曲をドライブさせるぬんのギタープレイ。軽やかで鮮やかなサウンドに乗せて松本が弾むような歌を響かせたところで、ライブは一旦終わりを告げた。

 アンコールではメンバーから堂免へのサプライズ(彼の顔がプリントされた「ヒデさんTシャツ」をプレゼント)を経て、くじ引きで演奏する曲を決める流れに。このツアーではずっとそうやって決めてきたそうなのだが、この日当たったのはなんと「Thank you for the Music」だった。ファイナルにうってつけのミラクルな選曲だ。本編での1回目よりさらに盛り上がって、最高のバイブスがクアトロを包み込む。そして「みなさんに出会えて僕は本当に幸せです。またリュクソファミリーみんなで仲良く集合しましょう。ありがとうございました」と松本がフロアに語りかけ、「ほたるのうた」と「home」を披露。最後までフレンドリーで優しげな空気に包まれたまま、リュックと添い寝ごはんのツアーは幕を下ろした。

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リュックと添い寝ごはん オフィシャルサイト

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