Benlou、好芻との対バンで聴かせたグッドメロディと抜群の演奏 同じバンドメンバーながら異なる個性を見せた2組

Benlou、好芻と対バンレポート

 続いては好芻が登場。といってもボーカルが中嶋イッキュウに替わっただけで、あとは山本をはじめBenlouと同じメンバー。しかしながら、ドリームポップやヴェイパーウェーブと共振するようなその酩酊的なサウンドは、Benlouとは全く違うものだ。

 例えば、1曲目に演奏した「YES」は『Let's Dance』時代のデヴィッド・ボウイを彷彿とさせるような、オリエンタルかつ妖艶なメロディが特徴。続く未発表の新曲「大遅刻」は、トレモロをたっぷりと利かせたエフェクティブなギターによるカッティングと、ソリッドかつタイトなドラムのパターンがテクノポップやニューウェーブあたりからの影響を伺わせる。中嶋も、tricotの時ともジェニーハイの時ともまた一味違う、アンニュイかつキュートな歌声を、まるで楽器の一部のようにアンサンブルに馴染ませながら歌う姿が印象的だ。

 中嶋によれば、この日のイベントに急遽出演が決定した彼らは、「今あるレパートリー5曲では足りない」と急いでもう6曲仕上げ、ステージに立ったという。「急いで作った割には、(全部)いい曲ですよね」と、中嶋が冗談まじりに自画自賛するとフロアからは大きな拍手が上がった。

 他にも、モジュレーション系のエフェクターをかけた山本のギターが幻想的なアルペジオを奏でる「Gakkari」や、浮遊感たっぷりのコーラスがフィッシュマンズを彷彿とさせる「デリバリー」、硬質なベースサウンドと気だるいボーカルのコントラストがセルジュ・ゲンスブールの書くフレンチポップのような「カカオ」など、百戦錬磨のアーティスト二人がお互いの引き出しを開け合いながら、遊び心たっぷりに作り上げたであろう楽曲たちが、次々と披露された。

 さらに、The Cureを思わせる「夏空の下」やデビュー曲「Blue boat」、クジラの鳴き声のようなシンセ音が鳴り響く「未体験」と畳み掛けて本編は終了。アンコールでは、懐かしくもどこか寂しげなムードが夏の終わりのような、イベントタイトルにもなった「Night Market」を演奏し、幕を閉じた。

 Benlouと好芻。全く異なるサウンドを持ちながら、どこかアジアの夜店に煌々と輝くネオンを思わせるような、不思議な共通点を持つバンドのツーマンイベントだった。

※1:https://realsound.jp/2023/02/post-1249777.html

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