De La Soul、ヒップホップで体現した“見栄を張らないリアル” ストリーミング解禁&トゥルーゴイ追悼を機に革新的功績を辿る

 『3 Feet High And Rising』が広まり、メディアによって平和を愛する「ヒップホップ界のヒッピー」というレッテルを貼られた彼らは、そのイメージを覆す『De La Soul Is Dead』というタイトルの2ndアルバムを1991年にリリースした。当時、写真撮影には大体フローリストが参加し、ヒナギクの花が置かれている現場が多かったと明かしており、『De La Soul Is Dead』のジャケットでは倒れたヒナギクの絵が描かれている(※2)。当アルバムと3rdアルバム『Buhloone Mindstate』では、成功を得てからの音楽業界での経験が反映されており、当時の派手なライフスタイルを押し出す流行りのヒップホップなども揶揄している。

 そうしたテーマをさらに深掘りしていったのが、1996年にリリースされた4thアルバム『Stakes Is High』である。特にJ Dillaがプロデュースした、かの有名なタイトルトラック「Stakes Is High」では、銃規制やドラッグ、ハイブランドをひけらかすトレンド、人種差別などについてラップしており、名ビートだけではなく多くの名パンチラインを残した。『Stakes Is High』はDe La Soulにとって、プリンス・ポールがプロデューサーを務めていない初のアルバムとなり、ネオソウル色が強いサウンドとなった。

De La Soul - Stakes Is High (Official Audio)

 以前、筆者はDe La Soulの故トゥルーゴイと少しだけ会話をする機会があったのだが、彼は日本のヒップホップファンに対して、以下のように語っていた。

「私たちは1989年以来、何度も日本に来ているんだ。日本のファンは、愛したカルチャーを100%サポートしてくれる。だから日本は他のどの国よりもヒップホップやアーティストをリスペクトをしてくれているように感じる」

 見栄を張らない、オルタナティブで不思議な要素をヒップホップにもたらし、“等身大の自分でもクールになれる”と後世のヒップホップアーティストに伝えたDe La Soul。彼らが存在していなければ、今のジャズヒップホップも、オルタナティブヒップホップも、アンダーグラウンドヒップホップも存在していないだろう。こうしてストリーミング上で正式に音源が解禁された今、De La Soulの功績を振り返り、亡きトゥルーゴイを想いながら、数々の名曲を聴き込んでみてほしい。

De La Soul - The Magic Number (Official Lyric Video)

(※1)https://www.thefader.com/2019/08/08/de-la-soul-unable-to-reach-an-agreement-with-label-urge-fans-not-to-stream-their-tommy-boy-catalog
(※2)https://youtu.be/8i346sS-_8Q

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