ビートボックスバトルが熱い! 世界大会の前哨戦『BEATCITY JAPAN』で体感した現場で味わう興奮

『BEATCITY JAPAN』振り返る

 国内外のヒューマンビートボクサーによるイベント『BEATCITY JAPAN supported by SWISSBEATBOX』が2月25日、東京・Spotify O-EASTで開催された。

 今年はいよいよ、ビートボックスの世界大会『Grand Beatbox Battle 2023(通称:GBB2023)』が10月18日から21日までの4日間、東京・EX THEATER ROPPONGIで開催。記念すべきアジアでの初開催を迎える。今回の『BEATCITY JAPAN supported by SWISSBEATBOX』はその前哨戦として行われた。

 内容は賞金50万円と『GBB2023』出場券を争うトーナメントバトル、そして海外からのゲストの特別ショウケース。満員となった現場の熱気に、まるでフリースタイルラップバトルのブーム前夜のアンダーグラウンド感と人気の爆発を感じさせた本企画について振り返っていきたい。

 DJ FrancoのオープニングDJに続いてトーナメント戦が始まる。栄冠を争うのは129名のチャレンジャーがひしめく予選を勝ち上がったRay、TKM、RUSY、GEN、KAJI、Darren、MOMIMARU、Cheeの8名。試合は対戦者ふたりがそれぞれ90秒1ラウンドを2本ずつおこない、それを判定する方式だ。

 審査を務めるのは日本のビートボックスの第一人者・AFRA、『GBB2016』ソロ部門の優勝者・Kenny Urban、世界的に尊敬を集めるビートボクサー・NaPoMの3人。NaPoMは本戦に期待することを「クレイジーになること」とした。

 第1試合のカードはRayとTKM。先行・TKMが勢いよく90秒を決めると、Rayが低音をきかせつつ歌も交えた表現で応戦する。さらに喉や胸を叩くテクニックを駆使してTKMが反撃、しかしRayも両手でマイクを握りこみつつ豊かな音色で魅せ、審査員の満場一致で勝者に。AFRAは「めちゃめちゃ僅差。悩みました。言葉にするのが難しい」と審査の難しさをこぼす。

 続くGENとRUSY(SARUKANI)の一戦は、なめらかなリズムと強烈なハイの音でGENが先制。しかし同様のハイをRUSYが用いつつ返していく。2ラウンド目は連打の応戦へ。打ち合いの果てに勝ちを得たのはRUSYだった。Kennyは「違うスタイルのぶつかりあい」とコメント。まだ2組目の試合だというのにオーディエンスの熱気もかなり高い。

 第3戦はDarrenがきれいな歌を保ちながらビートを鳴らし、対するKAJI(SARUKANI)がフリーキーな音で応じる。さらにDarrenはフィルターのエフェクトをかけたような表現で目立ったが、ダブステップ調のビートを操ったKAJIがとどめ。NaPoMに「ワイルドスタイル」と称され準決勝へと駒を進めた。

 準決勝最後となったのはMOMIMARUとCheeの対戦。Cheeは派手さを潜めた渋い表現で攻めていくが、MOMIMARUは音楽的な展開を巧みにコントロールして一歩も引かない。接戦となったが、軍配はMOMIMARUに上がった。AFRAは「ふたりとも限られた音数のなかで攻めあった」とコメント。他2名も「これでセミファイナルか」とレベルの高さに驚いていた模様。

 ここでEttomanのショウケースが挟まれる。途中でTATSUAKIをゲストに迎え、ユニット・iLLDEMとしてのパフォーマンスも。両者は8年前に同じこの場所で戦ったことを思い出しながら「今回はお客さんの数が全然違う」とシーンの成長をしみじみと語った。

 ステージは再びバトルモードへ。準決勝はRUSYとRay。RUSYのスウィングしたビートに対して、Rayはメロディアスな立ち上がりで挑む。さらに逆再生の音を再現するなど善戦したものの、勝負の分かれ目はRUSYの観客の下半身を振動させるほどのローの音だった。これにはAFRAも「ベースが決め手。こみ上げるものがあった」と講評。

 続いてKAJIとMOMIMARUがステージへ。前戦と同様に「早い・太い・強い」の三拍子でKAJIが猛攻、それをMOMIMARUが遅いBPMのグルーヴィなビートでいなす。2ラウンド目も人間業と思えぬサウンドを聴かせるが、それをクールかつ音楽的な表現で中和したMOMIMARUが決勝への鍵を得た。スタイルウォーズと化すなか、ジャッジの鍵はテクニックよりも個性である。

 最終決戦を前に、Kenny Urbanがショウケースを披露。ひとつのひとつの音圧とグルーヴが世界を感じさせた。特に日本勢と異なったのはスネアのキレ。これの良し悪しの判断はおいておくとしても、ここに注目してビートボックスを楽しむのもよいかもしれない。

 

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