Novel Core、“時代のアイコン”を目指す上で芽生えた覚悟 SKY-HIやBMSGメンバーとの信頼関係が育んだ成長
「永遠というものはない」という観念が自分の心の根底にある
ーー話は作品に戻りますが、今回のEPは5曲ともそれぞれカラーの異なる、曲のキャラクターが明確な作品になっていますね。
Novel Core:それはめちゃくちゃ意識しました。やっぱり『iCoN』を名乗るEPに収録する5曲だから、自分の持っているポテンシャルだったり、感情の振れ幅を余すことなく出したかったんですよね。だからこの5曲を通して(レーダーチャートに)本当に綺麗な五角形ができることをイメージしながら作りましたね。
ーー今回はRyosuke “Dr.R” Sakaiさんのワンプロデュース作品ですが、その方法論は今回のEP制作には欠かせなかった?
Novel Core:それが必要でした。Sakaiさんは世界基準のトラックメイカーなのは当然、現行のヒップホップから、オーケストラのようなサウンドまで幅広く制作されるオールラウンダーな方なので、五角形を作る上で、プロダクションワークの手法が広いSakaiさんとタッグを組みたいと思ったんですよね。その方が自分の頭で鳴ってる音や作品全体のイメージが再現できるという確信もありました。
ーー単曲を5曲出すのではなく、EPというパッケージだったのは? YouTubeやサブスクなどに、単曲をコンスタントに出していくという近年主流の方法論とは真逆ですね。
Novel Core:やっぱりサブスク時代になってから、「産業としての音楽」のスキームは全然変わったと思うし、1曲単位で出していくほうが、コストや予算に困ることもなくて、ビジネス的にも効率がいいんですよね。そういうリリースの仕方も否定はしないし、場合によっては全然アリだと思う。でも、自分はメジャーアーティストではあるけど、そういうビジネス的な視点の前に、やっぱりいち音楽ファンとして、一つのパッケージでストーリーがあったり、重い意味を持つ作品に影響を受けてきたからこそ、自分の作品でも、そういう視点を持った作品作りは続けていきたいと思うんです。それで今回もEPというパッケージになりました。
ーーオープニングの「DAWN」 はSFチックな世界観も感じる曲ですね。
Novel Core:コロナ禍は、エンターテインメントや、音楽の重要性が再度議論されるタイミングでもあったと思うんですね。そういったものが軽視された瞬間もあったし、僕自身も悔しい思いをした時間がたくさんあって。でも一方で、その中で音楽に救われたり、肯定された人たちもたくさんいたし、だからこそ、エンターテインメントは絶対に淘汰されず、残り続けるものだという確信が、自分の中でより強くなったんです。そして、どんなにAIやロボットが発達しても、仮に人が滅びたとしても、響き渡るような音楽を作りたいと思ったんですよね。また、内容としては、豊洲PITでのワンマンライブ(『Novel Core ONEMAN LIVE -Untitled-』は、地球滅亡後の東京をコンセプトにしていて、そのイメージに沿った、メインコンセプトを楽曲化したという部分も強いですね。
ーーこの曲の解釈は多元的ですね。
Novel Core:想像させる、余白を残すというのは、音楽だけではなく、アートワークを制作する上でもすごく意識してますね。感受する側の自由度にこそ、アートの面白さがあると思っていて。だから、あえて語尾を濁したり、逆にピリオドを打つことで、そこでみんなが想像したり、考えるきっかけになるというのが、一番美しいと思っています。
ーー「FREAK PARADE」は、主語が〈We〉であることが興味深く感じました。
Novel Core:自分自身も含めて、みんな全員変わり者であり、怪物なんだよ、と。アーティストとか、表現者を仕事に選ぶ人たちこそ、自分の中にある潜在的な狂気とかを武器にしていると思われがちですけど、そうじゃない人達も、みんな奥底にはそういう部分を持ってると思うんですよね。内側にある狂気とか、もっと素っ裸の感情を、みんなさらけ出して欲しいという思いがあるし、それを刺激する曲にしたかった。音楽や様々な才能がみんなの中に眠っていると思うし、それを目覚めさせることができたら、もっと世の中はヤバいことになるんじゃない? っていう。やっぱり日本は同調圧力が強いから、品行方正が求められるし、人からどう見られてるかを気にして、無意識のうちに自分を閉じ込めるような部分が強いと思うんですよね。でも、もっと素直でありのままの姿でいてほしいし、そういう存在を肯定するために、僕は音楽をやってるんです。この曲はそういう「すべてを肯定する曲」だと思います。
ーー「SORRY, I'M A GENIUS」は、明確なボースティング曲ですね。
Novel Core:自分の中のポリシーとして、ヒップホップの畑から出てきたことや、ラップが武器であることを軸にした曲を、まとまった形の作品には必ず入れたいと思っていますね。その上で、ステレオタイプなボースティングをするよりも、もっとトンチが利いていたり、気品があったり、コミカルな要素があるようなものにしたいと思っていて、それがこの曲に繋がりました。
ーー「ジェンガ」でこのEPを閉じた理由は?
Novel Core:このEPを通してのコンセプトとして、「みんなの感情を象徴する」というテーマがあったので、この世に存在する人間全員が平等に背負ったり、必ず経験する痛みや業として、「別れ」をテーマにしようと思ったんですよね。
ーー別れや離別することのやるせなさ、「愛別離苦」というか。『A GREAT FOOL』を閉じる「THANKS, ALL MY TEARS」、『No Pressure』を閉じる「Untitled」でも、「“全ては無常”だからこその“かけがえのない現在と未来”」ようなイメージを形にされていますが、それはCoreさんの中で一貫したテーマなのかなとも感じました。
Novel Core:音楽とは直接関係ないかもしれないんですが、別れに対する危機感というか、不安とか恐怖感みたいなものが、子供の頃からずっと強いんですよね。それは両親の離婚や、父親が交通事故に遭って急にいなくなったりしたことなど、突然自分の大切な人や、大切なものが目の前からなくなる瞬間の経験が、そういう曲を書く動機になっているのかもしれない。音楽のキャリアでも、音楽業界に入ってMCバトルで名前が売れて、たくさんのオーディエンスが自分を支持してくれるようになったけど、急にその梯子が外されるような感覚に陥る瞬間もあって。そういう「急に味方がいなくなる時」という感覚をたくさん味わってしまっている分、「永遠というものはない」という観念が、自分の心の根底に、意識の奥底にあるんだと思います。だから、信頼の置けるものが増えていくのが、20歳ぐらいまですごく怖かったんですよね。
ーー愛や信頼が深くなればなるほど、裏切られたり、別れる瞬間に、より負の感情が生まれますね。
Novel Core:どうせ失うんだから、どうせ手放すんだから、どうせ見限るんだから……それなら先に離れようという気持ちになることがすごく多かった。でも、今はBMSGの仲間も含めて、本当の意味で自分には「周りにいてくれる人達」がいると感じることができるし、それならばいま大切だと思うことを大事にしよう、信頼しようと思えるようになったんですよね。僕らの命は永遠じゃないから、いつかお別れは必ずくるけど、その別れが本当に苦しかったり、愛おしかったり、大切だと思えるような、そういう「出会い」こそが、自分にとってすごく意味がある。だから、それを抱きしめて、今を生きようって感覚になれたのが大きいことだし、歌詞にも反映されていると思いますね。
ーー「ジェンガ」の冒頭はオーケストラ的なリッチなサウンドで構成されていますが、その楽器がどんどん減っていって、最後はゴスペル的な、ほぼ人間の声のハーモニーだけで構成されていく流れも印象的でした。
Novel Core:この曲は、明確に合唱曲を意識しました。僕が元々、音楽の世界を目指したきっかけは合唱だったんですね。中学校の3年間、合唱の指揮者をやっていて、そこで音楽のパワーを感じて、音楽の世界に興味をもって。それで、オーケストラの指揮者になりたかったんですけど、いろんな事情で挫折してしまって、そこで出会ったのが、音楽の知識や学力がなくても始められるラップだったんです。でも同時に、いずれアーティストとして、指揮者だったり、合唱を率いるような曲で、その自分の思いを回収したいという気持ちがずっとあって。それで、この曲の中でフルオーケストラに乗せて自分が歌うことで、その部分を形にしようと。人生にとって普遍的なことを、自分の原点の一つでもある合唱を強く意識した作風でいまこのタイミングでリリースするのは、後々の自分の作品にとっても一つのキーになるような気がしますね。
ーーそして来年1月17日には、武道館ワンマン公演を行うことが発表されました。
Novel Core:自分の中では演出やプランが頭にあって、それが固まりつつありますね。その中で重要なテーマになると思っているのが「サイクル」。一人が道を作っていったとしたら、それを踏まえて次の世代が新しい道を作って、またその次の世代が……というような「バトンを渡し続けること」がイメージとしてありますね。文化とかカルチャーは、やっぱり回っていくものだと思うし、それを武道館で表現したい。
ーー「連綿と続くもの」がキーになると。
Novel Core:それは自分自身としてもそうですね。自分が続けてきたこと、自分の経験、音楽キャリア、考えてきたこと、未来……そういう自分の中でも「サイクル」するものを、武道館で形にできたらと思っています。
■リリース
1st EP 『iCoN』
発売日:2023年1月18日(水)
レーベル:B-ME
購入&配信:https://bio.to/NovelCore_1stEP_iCoN
︎360 Reality Audio
Amazon Music:https://music.amazon.co.jp/albums/B0BQ19B919
︎Dolby Atmos
Apple Music / Japan:https://music.apple.com/jp/album/id1658481634
■関連リンク
Official HP : https://novelcore.jp/
Instagram : https://www.instagram.com/iamnovelcore/
Twitter : https://twitter.com/iamnovelcore/
LINE : https://page.line.me/?accountId=novelcore
Music : https://novelcore.lnk.to/MUSIC
YouTube : https://www.youtube.com/c/NovelCore
BMSG : https://bmsg.tokyo/