Benlou、古今東西のポップミュージック愛で紡ぐ“新しさと懐かしさ” 仙田和輝&山本幹宗ならではの化学反応に迫る

Benlouの化学反応に迫る

ポール・マッカートニーやELOから影響された“質の高い生演奏”

ーーM3「ミラージュ」は、今作の中で最も60年代テイストな雰囲気を持った曲ですよね。

山本:仙田のデモの段階ではもっとCarpentersみたいな牧歌的な雰囲気だったのですが、おそらくロックっぽいアレンジの方がメロディとのはまりもいいだろうなと。ちなみにアレンジのリファレンスは完全にThe Stone Roses「Waterfall」(1989年)です。ベースを弾いてくれた佐藤(征史/くるり)くんも、「俺はマニ(The Stone Rosesのベーシスト)をやったらええんやろ?」ってすぐ理解してくれましたね(笑)。豪太さんはまさにリアルタイム世代な上に、当時UKに暮らしていましたし、エンジニアさん(小森雅仁)にもジョン・レッキーとかスティーヴ・リリーホワイトが得意とする、ちょっと靄のかかったリバーブサウンドにしてほしいと頼みました。

Benlou – ミラージュ [Official Video]

ーーギターのオーケストレーションも、他の曲と比べると大きくフィーチャーされています。

山本:そうですね。おそらく、ギターが同時に2本も3本も鳴っているのはEPの中でこの曲くらい。

ーーエンディングに向かってリバーブが深くなっていくのも遊び心ありますね。

山本:当時ジョン・レッキーがやっていたようなことをやってみました。イントロはThe Beatles「Mother Nature's Son」をもじったアルペジオなんですけど、アウトロはもうまんま弾いています(笑)。

ーー引用できるフレーズは、できるだけわかりやすく引用するように心がけていると以前のメールインタビューでおっしゃっていましたよね(※1)。次のM4「フェイク」はかなりケレン味のある楽曲だなと。

山本:この曲は唯一、仙田くんの当初のデモの音が残っています。パッと聴いたときに「VシネマのBGMみたいな曲だな」と思ったんですけど(笑)、この曲が一番「コスプレ」しているというか、ちょっと肩パットが入ったスーツみたいな仕上がりになっているんです。今ならこういうサウンドも出せそうだなと思って。

ーーヴェイパーウェーブ的な虚無感もあって、サビのメロディと歌詞の組み合わせは聴いていて病みつきになりますし、Miami Sound Machine「Conga!」(1985年)を思い出しました。M5「路地裏」もかなりケレン味あふれるメロディですよね。

仙田:この曲はまさに歌謡曲っぽい、マイナー調で憂いのあるメロディを書いてみようという意識がありました。

山本:レコーディングでは最初、シェイカーのループに合わせて、豪太さん、俺、佐藤くんで合わせて演奏しました。結構なまった感じのグルーヴなので、ただ昔懐かしい昭和歌謡をやるのとは違う雰囲気になったと思います。

Benlou – 路地裏 [Official Video]

ーーBenlouの記念すべき1stシングルとなったM6「Ripple Mark」はどうでしょう?

山本:仙田からデモが送られてきてパッと聴いた瞬間、「最初にこの曲を出そう」と思いました。鍵盤の音色は、複雑な倍音のYAMAHA DX-7ではなく、もっとグランドピアノらしいCP-80のイメージ。ブラスはかなり硬くて攻撃的なメロトロンのサウンドにしました。

ーーツインギターソロもいいですよね。

山本:これはもう、茶目っ気というかノリですね(笑)。ツインギターって面白いじゃないですか。よくELO(Electric Light Orchestra)のジェフ・リンがやっていると思うんですけど、昔から大好きで。あの感じを狙っています。

ーージェフ・リンといえば熱狂的なビートルマニアで、The Beatlesメンバーとの共演歴もありますけど、「Ripple Mark」は確かにThe Beatlesやトッド・ラングレンあたりを思い出しますね。

山本:The Beatles界隈でいうと、ポール・マッカートニーの70年代後期以降のソロ作はずっと好きですね。あとはポール・サイモンや、解散直前のELOとか。ELOは、全く評価されてないけど最後の2枚のアルバム(1983年『Secret Messages』、1986年『Balance of Power』)とか最高なんですよ。あの辺のサウンドを実はかなり参考にしています。

ーー言われてみればホーンセクションとか、ポール・マッカートニー『Tug Of War』(1982年)あたりのサウンドっぽいですよね。スティーヴ・ガッドらをフィーチャーし、いわゆるブラックコンテンポラリーに接近した頃のポール。

山本:まさにドンピシャですね。世間的なトレンドとかではなく、単純に僕の中の流行のサウンドをそのままやっている。あの頃の作品って、とにかく演奏力が高いじゃないですか。今みたいなエディットもなかった時代なので、めちゃくちゃ上手くて。とにかく今回こだわったのは、質の高い生演奏。デモは打ち込みで作ってもいいのですが、そういう現代的な音像を、ひたすら実直に演奏で再現していく。それが不思議な雰囲気を醸し出す作品になった理由なのかなと思っています。

Benlou – Ripple Mark [Official Video]

ーー最後に、Benlouの今後の展望についてもお聞かせいただけますか?

山本:このEPが一つの区切りというか。仙田が自分で作ってきた曲に対して、僕が編曲を施しレコーディングをするという、Benlouの序章となるタームがこれで一つ終わりました。次はゼロの段階から二人で一緒に作っていけたらなと。曲もサウンドもかなり変わっていくと思いますし、そこでようやくBenlouとして本当の姿になっていくと思います。すでに新しい曲もだいぶ出揃ってきていて。すごくいい感じなので楽しみにしていてほしいですね。

仙田:とにかく、学ぶことや新しい発見ばかりで嬉しい毎日です。そういう環境に負けないくらい、自分からもそこに向かっていかなければという気持ちもあって。これから自分をもっと高めていきたいです。

Benlou 1st Digital EP『煙』

■リリース情報
1st Digital EP『煙』
2023年2月1日(水)配信リリース
ダウンロード/ストリーミング
https://benlou.lnk.to/kemuri

■ライブ情報
『好芻×Benlou Night Market vol.1』
日程:2023年3月11日(土)
会場:下北沢 近道(旧 下北沢ガレージ)
時間:開場18:00 開演18:30
料金:前売 ¥3,500 (税込/ドリンク代別途¥600)
チケット一般発売中
https://eplus.jp/night-market/

Benlou Official HP

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