金爆 鬼龍院翔×サイサイ すぅが語る、アーティストと音声創作ソフトの新しい関係性 「VoiSona」に感じた音楽の未来とは?
最新のAI技術で人間の歌声をリアルに再現する音声創作ソフトウェア「VoiSona」(ボイソナ)。昨年9月にスタートした「VoiSona」は、ソフトを購入するのではなく、サブスクリプション方式(定額使い放題)で利用できるのも大きな魅力だ。
また、昨年12月には鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)の声を使用したVoiSona専用ボイスライブラリ「機流音」(きるね)、すぅ(SILENT SIREN)の声による「AiSuu」(あいす)も利用可能に。今後もアーティストの歌声を増やしていく予定だという。
リアルサウンドでは、鬼龍院翔、すぅの対談をセッティング。「機流音」「AiSuu」の印象、「VoiSona」に対するイメージなどについて聞いた。(森朋之)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
「(機流音は)これまでの歌唱の集大成」(鬼龍院)
ーーまずはお二人に、歌声合成ソフトで制作された楽曲に対しては、どんな印象がありますか?
鬼龍院翔:世代的には、すぅさんのほうが聴いてるんじゃないですか?
すぅ:めっちゃ聴いてたわけではないんですけど、「好きだなと思った曲がボーカロイドだった」ということがけっこうあって。その後、ちょっとずつボーカロイドを意識しはじめたんですけど、特にじん(自然の敵P)の曲が好きで、そこからさらに聴くようになりましたね。“ボカロPさんが、じつはバンドマンだった”ということも多くて。
鬼龍院:僕は世代的にそれほど親しみがなかったんですよね。ニコニコ動画内のボカロ曲もそんなにチェックしていなかったし、人間らしい、特徴がある歌ーー中島みゆきさん、西川貴教さんだったりーーが好きで、ボーカロイドで胸に響く曲は作れないのでは? と思ってたんですが、2007年の「メルト」(supercell)という曲があまりにもよすぎて、認識が変わって。その後、ヒットチャートやカラオケのチャートにどんどんボカロ系の曲が入るようになり、それを眺めていたという感じですね。
ーー音声合成ソフトが音楽シーンに与えた影響については、どう感じてますか?
鬼龍院:そうですね……ユニットやバンドをやるって、けっこうエネルギーが必要じゃないですか。
すぅ:そうですよね(笑)。
鬼龍院:例えばボーカロイドが発売されてからは、ボーカルが見つからなくても楽曲を発表する機会が一気に増えて。しかも人間では出せない音域、歌いづらいキーやメロディでも大丈夫ですからね。曲調も広がったのもすごいし、ボカロの曲を聴いて育ってきた世代は、実際にそういった曲を歌えるようになってきて。音楽業界にとって合成音声ソフトの登場は、すごく大きな出来事だったと思います。
すぅ:テンポがめっちゃ速い曲とか、メロディが複雑な曲も増えましたよね。リスナーも耐性がついて、もっと速い曲を求めるようになって。ボカロは人間と違って、どんなメロディも歌えるし、噛むこともないですからね。私たちも影響を受けて、BPMが速くなってた時期があるんですけど、あるとき「速すぎやしないか?」と冷静になったり(笑)。
ーー「VoiSona」のソフトに参加してほしいというオファーがあったときは、どう感じました?
鬼龍院:すぐに「絶対にやりたいです」とお返事しました。僕が難色を示せばほかの人に話がいくだろうし(笑)、実際、本当にやりたいと思ったので。
すぅ:SILENT SIREN のサウンドプロデューサーのクボナオキくんが(「VoiSona」デフォルトボイスライブラリの)「知声」(ちせい)ちゃんユーザーで。普段から「知声」ちゃんの歌声のデモを聴いているし、その仲間入りができるのはうれしいなと思いました。
ーーボーカルデータのやりとりのプロセスは?
鬼龍院:(VOCALOID)「がくっぽいど」(2008年発売)のレコーディングを担当した方と知り合いなんですが、GACKTさんは長時間に渡ってスタジオに入って、いろんな声を録ったそうなんです。今回の「機流音」はぜんぜんそんなことなく、今までのレコーディングデータをお送りして、それをもとに制作していただきました。それでほぼほぼ大丈夫でしたね。
すぅ:私も基本的には同じですね。あとはSILENT SIRENの音源では使ってない音をいくつか追加で録って。「かえるの合唱」、歌いませんでした?
鬼龍院:歌った! 「きゃ・え・りゅ・にょ・う・た・ぎゃ」みたいな感じで歌って、足りない音を補って。AI歌唱ソフトは、どんなワードでも歌えなくてはいけないので。
ーーなるほど。実際に「機流音」「AiSuu」の声を聴いたときの印象はどうでした?
鬼龍院:すごかったですね。自分のリアルなクセがちゃんと感じられたし、これまでの歌唱の集大成だなと。さっきも言った通り、僕はほとんど何もしてないんですが(笑)。生々しくて、暑苦しくて。それがいいなと思いました。これまでのボーカロイドはどちらかというと無機質なイメージもあったので、差別化できているのかなと。「女々しくて」(ゴールデンボンバー)のデモ音源もすごかったんですが、「インフルエンサー」(乃木坂46)を歌わせた参考音源とかもあって。
すぅ:合いそう!
鬼龍院:すごく暑苦しいんですよ(笑)。すごく興味深かったし、可能性を感じましたね。
ーービブラートの効かせ方なども、すごくリアルに再現されていて。すぅさんはどうでした?
すぅ:「AiSuu」は「機流音」と違って、機械的な要素を入れてもらってるんです。「AiSuu」は14歳の設定で、かわいらしくて幼い雰囲気もありつつ、体からシールドが出てたりするので、生々しさよりも機械っぽさがあったほうがいいのかなと。バランスをいろいろ試しているうちにどれがいいのか分からなくなったんですけど(笑)、スタッフの皆さんにアドバイスをいただいて。もちろん自分らしさも入っています。語尾だったり、高音の発声だったり、「自分っぽいな」と思うところもたくさんあるので。