「誰にでも好かれるTHE ALFEEでいたい」 THE ALFEEの“いいところ”を再確認した99回目の武道館公演
この日は坂崎の美しいギターから始まる、アルバム音源を完全再現したフルバージョン。曲が終わると同時にステージがやや暗くなり、高見沢のエンジェルギターが点灯。「Jupitar」が演奏され、そこから流れ込んだ誰もが知る代表曲「星空のディスタンス」では、ステージ前方には炎も上がり、演奏を盛り上げる。風の吹く音がして、2023年4月からのツアータイトル『THE ALFEE 2023 Spring Genesis of New World 風の時代』にも使われている「風の時代」へ。西洋占星術では200年あまり続いた「地の時代」から、「風の時代」へと、このコロナ禍に移行。“軽やかな生き方”が求められる時代に、THE ALFEEがこのナンバーを引っ提げ、どんなツアーをするのか今から楽しみだ。そして、鐘が鳴り響き、同じくアルバム『天地創造』から、本編ラストナンバーの「愛という存在」。金色の照明が満天の星のように煌めく中、高見沢が語りかけるように歌う。演奏が終わり「愛という存在」のインストゥルメンタルが流れる中、メンバー3人、そして一歩下がった位置からサポートメンバー2人が深々とお辞儀をしてステージを後にした。
拍手が鳴り響く中、アンコールに突入。赤とゴールドのライトが点滅するステージに「浪花節だよ人生は」(小野由紀子)が流れ、着物に白いヒゲ、サンタやトナカイ、ツリーを頭につけた「ひこいち」「すけいち」「さくいち」の「昭和兄弟」が登場。将棋の駒型ベースを持った桜井にちなんで村田英雄の「王将」やクリスマス・キャロルの「Silent Night」、敏いとうとハッピー&ブルーの「星降る街角」、ファンキーなリズムのダンサブルな毛髪増毛祈願ナンバーなどを次々披露。このごちゃ混ぜ感もTHE ALFEEならでは。怒涛の展開が終わり「昭和兄弟からのクリスマスプレゼント」とステージには赤と緑の照明で作り出されたクリスマスツリーが光る中、THE ALFEEのクリスマスをテーマにしたナンバーが続く。坂崎ボーカルのフォークテイストナンバー「心の鍵」、桜井がベースを持たずにムーディに歌う「Happy Chiristmas Time」と続き、「それではみなさんごきげんよう」の昭和兄弟のテーマで締めくくり、3人は着物を脱ぎにステージ裏へ。再登場して始まったイントロは「クリスティーナ」で、客席はまたもやヒートアップ。ボーカルは桜井、坂崎はパーカッションを担当、高見沢はドラえもんギターに初期QUEENのような白いヒラヒラとした衣装だ。続くは坂崎の美しいアコースティックギターで始まる「聖夜―二人のSilent Night―」へ。銀テープがアリーナに舞い、左右花道には5人ずつサンタクロースが登場し、キレのいいダンスパフォーマンスで盛り上げる。観客の手元は、ミカエルの剣の青いライトと赤い手袋が美しく彩る。サンタダンサーがステージを去り、「メリー・クリスマス!」の高見沢の声で演奏は終了。ジョン・レノンの「Happy Xmas (War Is Over)」をバックにステージの5人が深々と頭を下げ、手をふりステージを後にする。
程なくして、2回目のアンコールが始まり、「星空のCeremony」と両A面としてリリースされた、彼らの原点とも言えるDチューニングのナンバー「Circle of Seasons」が披露される。曲間に一段と鳴り響くアンコールの拍手。それに応え、未だ声出し禁止の客席に「アンコールの声が今日は聞こえた気がした」と高見沢。そして、「俺たちに貫禄は必要ない、誰にでも好かれるTHE ALFEEでいたい」と、ここでも非大御所宣言。そしてTHE ALFEEのロマンティックなラブソング「至上の愛」へ。ギターを抱きながら歌う高見沢の感情を盛り上げるように、美しいピアノや激しいドラムでサポートのふたりもバックアップする。曲が終わり、3人は肩を組み、左右の客席にあいさつ、ステージ中央に戻り固い拳を空に掲げステージを後にした。終了しても鳴り止まない拍手。そこにガッツポーズで現れた3人。3回目のアンコールでは、この1年のツアーで披露してきた『天地創造』からの約9分のプログレッシブナンバー「組曲:時の方舟」を披露。目まぐるしく変わる曲の展開に合わせて色鮮やかに変わる美しい照明が美しい。THE ALFEEの持つさまざまな音楽性や豊富なテクニック、優秀なスタッフの技術を見せつけて幕を閉じた。
「THE ALFEEのいいところ」。それを改めて考える隙を与えないくらい、長年のファンにとってTHE ALFEEは日常になっている。MCで高見沢が自認する“THE ALFEEのいいところは全て”という言葉にみな同感だろう。そして、何と言っても彼らのいいところは「変わらない」ことだと思う。50年前の出来事をまるで昨日のことのように生き生きと語る無邪気さ、お互いを思いやるチームワーク、温かい人柄がにじみ出るようなトーク。楽曲に関してはそれぞれの時代で変化はしてきたが、核には“変わらない”彼らのサウンドがしっかりある。生活の変化で一時離れていたファンが近年多く戻ってきているのは、変わらぬ彼らに触れて、自分自身もすぐにその時代に戻れるからだろう。そして今戻ってきたファンは、これからはもう絶対離れないはず。そしてまたここ数年は特に、あらゆるところから、思わぬところからもどんどん新規ファンが入ってきている。長く成功し続けるバンドには、必ずいいスタッフといいファンがついている。2023年の結成50周年、2024年のデビュー50周年。記念すべき瞬間をTHE ALFEEを愛する全ての人たちみんなで一緒に見届けたいと思う。
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