(sic)boy、自己最大規模のステージで見せた新しい挑戦 豪華ゲストも続々登場したKT Zepp Yokohama公演レポ

 序盤のMCで「今回は新しい挑戦をしている」と語っていた(sic)boy。ここからはTOTALFAT/OZROSAURUSでロックを軸足にヒップホップシーンでもクロスオーバーに活躍するBunta(Dr)がサプライズ登場し、エレキギターとドラムによる初のバンドセットを披露。まずはドラムが楽曲に力強さを加えたlil aaronとの共作「Creepy Nightmare」で観客を圧倒し、ブリンク182のトラヴィス・バーカーが牽引する世界的なポップパンク・リバイバルと同期するかのような未発表曲で熱気を上昇させていく。タイトル未発表の新曲にも関わらず、客席全体が腕を上げて盛り上がる様子は、今後この曲がライブで欠かせない曲に成長する未来が想像できる。

 「君の匙加減でぶち上がってくれ」と煽った「living dead!!」、続けて披露した「Ghost of You」のバンドセットも最高だった。改めて(sic)boyのルーツにはヒップホップのみでなく、ロックがしっかりと根ざしていることがわかる。ここからステージに置かれたソファに座り「生演奏の良さを僕が一番感じています」と語ってからの「(stress)」では、ジャジーなライブアレンジに合わせ、原曲とは全く異なる繊細な表現を見せる。先程まで我を忘れて盛り上がっていた観客も静かに聴き入っていた。

 ライブも後半戦。再びDJセットに戻ると「Heartache」からステージが再開。この楽曲はあえてVJの映像演出を抑えて、白く明るい照明のみでシンプルな構成で楽曲を聴かせる。そして温かな手拍子が客席から響いた「Last Dance」から「眠くない街」や大ヒットクラブアンセム「Heaven's Drive」を披露し、最後は「Hype's」で感動的にライブを締めた。

 序盤から客演アーティストと一気に盛り上げ、中盤ではバンドセットへの新しい挑戦を披露し、後半では(sic)boy本人のみで真っすぐに感動を届ける。ワンマンだからこその練り込まれた構成のライブだった。アンコールではnothing,nowhere.との共作「Afraid??」を披露。スタッフやファンへの感謝を述べてから最後に「Akuma Emoji」でこの日一番の盛り上がりを作り出す。(sic)boyは全てを出し切るようにステージを動き回り、煽りながら歌っている。観客はそれぞれ自由に踊ったり腕を上げたりと楽しんでいる。過去最大規模でありつつも、この規模でも収まり切らないほどのライブだった。

 ライブの最後には2023年のメジャー1stアルバムリリースも発表した(sic)boy。今回のライブも素晴らしい内容だったが、これからメジャーでの活動が本格化した時、さらにすごい景色を見せてくれるのではと期待してしまう。そんな未来を感じるライブでもあった。

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