キングギドラ、nobodyknows+、RIP SLYME……国内ヒップホップシーンで活躍広げるベテラン勢　人気再燃の背景とは？

　コロナ禍が徐々に終焉していく中で、まさに躍動の年となった2022年の日本のヒップホップシーン。『POP YOURS』や『THE HOPE』といった大規模なヒップホップフェスが大きな成功を収め、さらにその両方のフェスにも出演していたAwichやBAD HOPといったアーティストがジャンルを超えてクロスオーバーな人気を得ているのは、この日本にヒップホップというカルチャーが完全に根づいた証拠とも言えよう。そんな今の時代を象徴する若いアーティストが大活躍する一方で、90年代半ばから2000年前後にかけてデビューしたベテラン・ヒップホップグループが再始動、あるいは再ブレイクするという現象が同時多発的に起きている。

　記憶に新しいのが、1995年にアルバム『空からの力』にてデビューし、日本語ラップにおける“韻（＝ライミング）”の基礎を作ったとも言えるグループ、キングギドラの約20年ぶりの新曲「Raising Hell」のリリースだ。新曲発表に先立ち、まずは10月28日にYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にて公開された、彼らのヒット曲「UNSTOPPABLE」のパフォーマンス映像が話題となる。さらに間髪を入れずにLUNA SEAのSUGIZOをフィーチャーした新曲「Raising Hell」の映像が『THE FIRST TAKE』にて11月9日に公開され、さらにその2日後に同曲がデジタルリリースされる。「Raising Hell」というタイトルで、かつ『THE FIRST TAKE』では全身アディダスを着込んでパフォーマンスを披露していたのは、当然、Run-D.M.C.へのオマージュであるわけだが、USのヒップホップシーンにおけるRun-D.M.C.と同様に、日本のヒップホップシーンのオリジネイターでありキングであるという彼らの自負が強く感じられる一曲であった。

　『THE FIRST TAKE』といえば、nobodyknows+の出演も大きな話題となった。6月10日に公開された彼らの2004年リリースのヒット曲「ココロオドル」のパフォーマンス映像は、『NHK紅白歌合戦』にも出演するほどの人気であった当時の彼らの活躍を知らない層にも魅力が届き、公開からひと月を待たず1000万回再生を達成。12月下旬現在では、3000万回再生を突破している。この再生回数はこれまで260本以上公開されている『THE FIRST TAKE』の全動画中30位以内に入っており、上位を現役のトップアーティストが占めている状況を考えると異例とも言える。そして『THE FIRST TAKE』が話題となったことで、9月23日に放送された『MUSIC STATION 4時間スペシャル』（テレビ朝日系）などのテレビ出演や、フェスを中心にイベント出演も急増。さらに11月30日にはベスト盤『ALL TIME BEST』がリリースされるなど、文字通りの再ブレイクを果たしている。

　キングギドラ、nobodyknows+とはまた異なる形で、グループとして復活したのがRIP SLYMEだ。2018年頃から実質的に活動休止状態であった彼らであるが、長年活動を共にしてきたPESとSUが脱退し、RYO-Z、ILMARI、DJ FUMIYAの3人体制にて再スタート。2021年よりインスタライブやYouTubeチャンネルにてファンに向けた情報発信を開始しながら、昨年末に約5年半ぶりとなる新曲「Human Nature」をYouTubeチャンネルにて発表し、今年4月15日に同曲をデジタルリリースした。さらに6月19日開催の『YATSUI FESTIVAL! 2022』を皮切りに、ライブのサポートメンバーとしてWISE、おかもとえみを迎えながらフェスへの出演をスタートし、11月6日にはKEN THE 390主催のヒップホップフェス『CITY GARDEN ～超ライブフェスティバル～』への出演も果たしている。また、再始動後第5弾シングルとなる最新曲「Rightnow! feat. SAMI-T from Mighty Crown」を11月19日に発表するなど、作品のリリースも精力的に行っており、2015年リリースの『10』以来となるニューアルバムを渇望するファンも多いに違いない。