King Gnu、王座を掴んだ初の東京ドーム公演 “ロックのカタルシス&バンドの絆”で到達した偉大なる通過点
オーディエンスはアンコールを求める拍手をしながら、スマホライトを点灯させ、4人の再登場を待ち詫びる。充実した表情を浮かべた井口が、「アンコールありがとう!」と口にする。ここで、Srv.VinciからKing Gnuに改名した時のエピソードを話す。下北沢でのリハーサル後にキッチンオリジンで4人で食事をしながら、King Gnuというバンド名を常田が提案したそう。「ヌーの大群の王様というとても意味のある名前にその時はピンときてなかったんですが、満員の東京ドームを目にするとやっとKing Gnuになれたんじゃないかなと思います」(井口)。拍手が送られる中、常田が嬉しそうに両手を上げてバンザイのポーズをする。
井口が「しばらく名前負けしてました」と言い、占い師にKing Gnuは画数が悪いからSrv.Vinciのままが良いと言われたという話を明かすが、「占い関係ねえ! 地道にこの4人で仲良くやってきて良かった」と素直な気持ちを述べ、勢喜も「自分の人生、自分で占っていこうぜ!」とコメント。最後に井口が「こんな感じで楽屋でも和気藹々としてるバンドなんです。今後も等身大でやっていくのでついてきてください。下北沢とかのライブハウスでやっていた曲を4人でやっていこうと思います」と締め括った。
4人の密やかなハーモニーがドームに響き、原点を確認するかのように鳴った1stフルアルバム『Tokyo Rendez-Vous』収録の「McDonald Romance」に続いて、文字通り永遠の10代を歌った「Teenager Forever」へ。常田が歌う横で、井口と新井が肩を組み、嬉しそうに左右に揺れる。井口のマイクに常田と新井が近づき、3人で体を寄せ合って歌い、東京ドームに〈teenager forever〉という合唱が響く。ロックはユースカルチャーではあるが、それはいつでも鳴らせる衝動なんだーーそんな瑞々しさが爆発していた。
さらに「Tokyo Rendez-Vous」で拡声器を通した常田のやさぐれたラップがきまる。小さなライブハウスで演奏されていた曲が何十倍ものスケールの会場でも有効な強度を放つ。そもそもKing Gnuは黎明期から王様になり得るスケール感を持っていたということだ。井口がそれを裏付けるかのように、「さっきKing Gnuにやっとなれたと言いましたが、もっと広い会場でやりたいよね。もっと王様になりたいです。王様……恥ずかしいわ(笑)」と照れると、常田が「王様になりたかったんだ(笑)?」とツッコむ。井口が「今いる(観客)1人が、次は5人くらい連れてくればいいよね」とまるで楽屋で話しているかのように盛り上がると、常田が「マジで小さいライブハウスでやってた曲をそのままできてるのがありがたい」と言い、しみじみと頷き合う。
井口が「最後にみんなでライトを振って歌いましょう!」と言って、ゴスペルチックな歌声が流れ、「サマーレイン・ダイバー」で大きな盛り上がりを生み出し、ライブは幕を閉じた。
高い音楽的知識に裏打ちされた知性のもと、緻密にバンドを走らせている面はありながらも、King Gnuはロックのカタルシスとバンドの絆という何にも代えがたいものに突き動かされているのだということが伝わってきた。とても生々しく美しい物語のひとつの到達点であり、今後見せてくれるであろうさらに大きな景色に向けての偉大な通過点だった。最後、4人は肩を組んでお辞儀をしたが、常田が最後の最後までギターを掴んで放さなかったのは、このバンドサウンドで王座を掴んだんだという矜持の表れのようにも見えた。
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