連載「lit!」第17回:リナ・サワヤマ、Pale Waves、ステラ・ドネリー、Dry Cleaning……新作携え来日予定のアーティストたち

The Comet Is Coming「CODE」

The Comet Is Coming - CODE (Visualizer)

 ロックやダンスミュージック同様、近年活況を呈するUKジャズ界の重要人物であるサックス奏者、シャバカ・ハッチングス(本バンドでは「キング・シャバカ」と名乗っている)と、精力的にアルバムリリースを続けるUKエレクトロデュオ・Soccer96からなるトリオ、The Comet Is Comingの待望の3rdアルバム『Hyper-Dimensional Expansion Beam』の冒頭を飾る楽曲。Sons Of Kemetでもサックスを吹くシャバカの力強いプレイとSoccer96の2名による電子音楽が今作でも不思議な熱気に包まれた極上のグルーヴを生み出している。特に今回紹介する「CODE」はダンスミュージックのようでもあり、まさにアルバムの顔としてもふさわしい楽曲だ。

 「彗星がやってくる」という意味の名を持つ本バンドは、Soccer96のライブ中にシャバカが突如として参加したことで宇宙爆発的なエネルギーが生まれ、それをきっかけに結成された(※3)。フジロックでの来日経験もある彼らが12月1日から12月3日にかけて新作を携えて東京・大阪を巡る。そのエネルギーをライブ会場で浴びてみたい。

Jamie xx「KILL DEM」 

Jamie xx - KILL DEM (Official Audio)

 The xxのメンバーであり、ソロではDJ/プロデューサーとしても大活躍のJamie xxの最新曲。本楽曲は彼が10代の頃に初めて参加した、ロンドンの夏の風物詩『Notting Hill Carnival』というカリブ諸国の文化を祝うストリートカーニバルからインスパイアされているという。カッティ・ランクスの「Limb By Limb」(1993年)をカットアップし、今年のポップシーンでも流行の兆しがみられるハウスミュージックに仕上げている。

 2015年の前作『In Colour』以降、2020年には巧みなビートチェンジが光る「Idontknow」、今年4月の「LET’S DO IT AGAIN」、バンドメンバーのオリヴァー・シムのソロ作でのプロデュースやリミックスという、音源のリリースは非常にゆったりとしたペースとなっている。しかしDJとしてのライブ活動は精力的に行っており、9月末からは年をまたいで世界中でツアーを行うことが決定している。アメリカを皮切りに、日本、イタリア、メキシコ、オーストラリアでのツアーが予定されており、日本では10月29日に今年初開催となる『Tonal Tokyo』でプレイしてくれる。本楽曲のコンセプト然り、世界中の言語のグラフィックが飛び交っている「LET’S DO IT AGAIN」のMV然り、彼の視線が世界に向いているのは明らかだ。日本ではどのように私たちを楽しませてくれるのか、しっかりと目に焼き付けたい。

Jamie xx - LET'S DO IT AGAIN (Lyric Video)

ロレイン・ジェイムズ「Maybe If I (Stay on It)」

Maybe If I (Stay on It)

 昨年ロンドンの名門レーベル<Hyperdub>から『Reflection』を発表し、高い評価を獲得したプロデューサーによる新作アルバム『Building Something Beautiful For Me』1曲目。今年のWhatever The Weather名義での新感覚なアンビエント作品も記憶に新しいが、10月7日に<Phantom Limb>からリリース予定のアルバムは、注目を浴びずに早逝したNYの作曲家ジュリアス・イーストマンの主要作品を再解釈、再創造した楽曲により構成されている。

 本楽曲はジュリアス・イーストマンの「Stay on It」が下敷きとなっており、BPM90程度のビートの上にリズミカルに編集されたボーカルとアンビエント的なシンセサイザーの音色が耳を包む。

 ロレイン・ジェイムズは初来日公演が11月2日から11月4日までの4日間予定されており、東京・大阪にて本名の「Loraine James」名義と「Whatever The Weather」名義で2回ずつプレイする。また、11月5日、6日に静岡で開催される『Festival de FRUE』にも「Whatever The Weather」名義での出演が決定している。

 今回紹介した楽曲は本名名義だが、ダンスフロアを一旦チルさせるのにはうってつけの、両名義が交差したような音楽性だ。あわよくばどちらの名義でも堪能したい。

(※1)https://www.elle.com/jp/culture/music-art-book/a41160787/rina-sawayama-interview-220920/
(※2)https://www.rollingstone.com/music/music-features/dry-cleaning-band-interview-london-1139020/
(※3)https://www.prsformusic.com/m-magazine/features/interview-comet-coming/

リナ・サワヤマ、マネスキン、ヤングブラッド……海外アクトがサマソニに残した、型に縛られず生きるメッセージ

先日8月20日、21日、無事に3年ぶりとなる開催を終えた『SUMMER SONIC 2022』。国内外のアーティストが集結するだ…


レディー・ガガ、苦しみ乗り越えたキャリア史上最もパーソナルなショー 音楽による救済描いた8年ぶり来日公演

レディー・ガガにとって8年ぶりの来日公演となった、『LADY GAGA PRESENTS THE CHROMATICA BALL…

関連記事