猫又おかゆ、音楽活動を通して辿り着いた予想外の未来 「応援してくれるみんなが僕のことをアイドルにした」

「ファンの方々をびっくりさせることが好きなんです」

あっかんべ / 猫又おかゆ

――楽曲のテーマや制作陣のセレクトは猫又さんの意見が反映されているんですか?

猫又:そうですね。今回は1stアルバムになるので、作家さんも曲調も自分から希望を出してお願いしていきました。コンセプトを事前に決めて作ったわけではないものの、僕は結構毒っ気の強い曲が好きなので、結果的にそういう系統の曲でまとまりができましたね。

――『ぽいずにゃ~しんどろーむ』というタイトルは、曲ができあがってから考えましたか?

猫又:タイミングとしては曲が出揃ってからです。テーマを毒に絞って、そこでタイトルを揉んでいきました。ただポイズンとつけるだけだと自分らしさが足りないなと思ったので、そこに猫を組み合わせて、「ぽいずにゃ~」っていうのを思いついたんですよ。なんかグミっぽい、ポイフルみたいな可愛さがあるなと思って(笑)。それを運営さんに提案したらタイトルリストが送られてきて、その中に『ぽいずにゃ~しんどろーむ』っていうのがあったんです。スキマスイッチさんの楽曲に「アイスクリームシンドローム」という楽曲があるんですけど、そのタイトルがめっちゃいいなって子供の頃から思っていたことを思い出して。いつかなにかに名前つける機会があったら「シンドローム」という言葉を使いたいなとずっと思っていたので、このタイトルにしようと決めました。

――今作には今まで発表した楽曲の他に、新曲も7曲収録されています。「Grrr Grrr Tummy」は曲の前半と後半で声の印象が違うと感じましたが、これは意図的に歌い分けたんですか?

猫又:「Grrr Grrr Tummy」は意図的ではなかった気がします。この曲は全体的にテンポが早くて難しかったんですけど、2番の最初のリズムがめちゃくちゃ難しくて、そこに一番時間がかかりました。歌詞の言葉数が多いので、噛まずに歌うのが難しくて。僕、歌っているときに熱が入りすぎると目をつぶる癖があるんです。「Grrr Grrr Tummy」をレコーディングする時も熱が入って目を閉じちゃったんですけど、それで先の歌詞が読めなくなって、そのまま間違えちゃうみたいなことが多いんですよね。ちゃんと次にくる歌詞を読むというか、目を開ける意識をしないといけなかったです(笑)。

――「あっかんべ」もすごくロックな楽曲で感情が入りそうだなと感じました。今までリリースした楽曲とは違う毛色の曲になりますが、初めて聴いたときの印象はいかがでした?

猫又:この曲を依頼したときに、DECO*27さんと直接打ち合わせをさせていただいて。その中で、いつものほのぼのしているおかゆではない、ダークな一面を見せたいっていう話をして、本当にその要望通り作っていただけました。

――最後にガラリと曲調を変えて、ケロっと〈驚かせてごめんね〉〈どちらが僕でしょうか〉と歌うのもギャップがありますよね。

猫又:ありがとうございます。こういうギャップを見せて、ファンの方々をびっくりさせることが好きなんです。「もぐもぐYUMMY!」のときも、〈次はお前の番だ〉ってちょっと脅すような歌詞があったりとか……多分脅すのも好きなんだと思うんですけど(笑)。「あっかんべ」も例に漏れず脅せたのかなと思いますね。

――曲や歌詞の内容によって声の印象も全然違いますが、曲ごとの声色のイメージはどうやって掴んでいくんですか?

猫又:頭で考えるよりは、表情を作りながら歌うようにしています。口元の形などで声色は変ると思うので、こういうシーンだったらこういう表情で歌っているだろうなとイメージして、実際にその表情を作って歌う感じかもしれないです。

――そうなんですね。「パボ」は声色も言葉選びも可愛らしい印象もあります。

猫又:「パボ」のオーダーとしては、『「馬鹿ばっかりだなこの世の中は」みたいなことを言っている自分が一番馬鹿』みたいなニュアンスで曲を作りたいとお話して生まれた曲です。

――そういった最初のアイデアはどういうところから出てくるんですか?

猫又:今回はすべて私の好きな作家さんに依頼しているので、皆さんに対してこういうところが好きというポイントがあるんです。この作家さんのこういうところを見てみたいという気持ちが、アイデアのもとになっているのかもしれないです。

“全肯定おかゆ”を曲にした「カミサマ・ネコサマ」

――そうなんですね。「カミサマ・ネコサマ」はまさに“全肯定おかゆ”と呼ばれる猫又さんのキャラクターをそのまま写し取ったような肯定的な言葉が並ぶ楽曲ですね。

猫又:そうですね。まさに“全肯定おかゆ”を曲にしてもらいました。意外と、そういう楽曲がなかったんですよね。“全肯定”ではあるんですけど、明るくなりすぎないようには気をつけていて、最終的には一癖ある感じの仕上がりになりました。

――歌詞のリズムも気持ちいいですね。セリフも多いですが、レコーディングはいかがでした?

猫又:そうなんです、セリフや合いの手がめちゃくちゃ多いんですよ。特にセリフがたくさん並んでいるパートは、一個飛ばしで2パターン録ってそれを組み合わせたりしたんですけど、普段とは違う録り方だったので大変でしたね。

――セリフを歌やリズムに乗せる難しさもありますか?

猫又:それはあんまり思わなかったです。先程ボーカロイドと椎名林檎さんを聴いていたと言いましたけど、その少し前はSound Horizonが好きで。Sound Horizonの曲の中には詩が当たり前に出てくるので、そういう構成の曲には聴き慣れていたというか。特に難しさや違和感はなかったです。

――こういった合いの手の多い楽曲は、ライブでも盛り上がりそうですね。

猫又:どの曲も本当に自分の好みというか、ライブ映えみたいな意識はなかったので、結果的にそういう曲ができたなって。今はご時世的に声を出すことは難しいかもしれないけど、それがなくなった時にみんなと掛け合えたら楽しいだろうなと思います。

――「琥珀糖」はまた印象が違ってサビでは音域も高く、綺麗な雰囲気がありますね。

猫又:一番最初にいただいた音源がこれよりキーが3つほど高かったんです。そのキーで歌いたかったんですけど、どうあがいても自分の声では届かなくて(苦笑)。あと、仮歌では息の成分が結構多めで、普通に歌っているだけだとそれがなかなか表現できなくて。そうしたらレコーディングエンジニアの方が、息の成分を多めに表現するのであれば、普通に歌っている上に小声気味に声を重ねると厚みがでるから、そういう方法もいいんじゃないかと提案してくれて。それでめっちゃしっくりくる感じになりましたね。

――「Lazyroop」についてはいかがですか?

猫又:これは歌詞の内容がすごく温かいですよね。「Lazyroop」は聴いたら励まされるような曲になったらいいなと思っていて、その気持ちを表現するような優しい声で歌うことを意識しました。

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