小泉今日子からVTuberまで……ポッドキャストがアーティストらの発信の場に 好評な理由は?
お気に入りのミュージシャンやメディア露出の少ないアーティストのトークを聴こうと深夜ラジオにかじりついた経験がある方も少なくないのではないだろうか。テレビの音楽番組や雑誌では、なかなか聴くことのできないマニアックな会話や、垣間見えるミュージシャン/アーティストの素顔。ラジオならではの親密でリアリティあふれる雰囲気は、映像や文章からではなかなか伝わりにくい。このような音声メディアの重要性は今も変わらないものの、2010年代ごろからSNSで直接メッセージを発信することでファンとの距離を縮めてきたように、独自のポッドキャストがラジオと並行してアーティストとファンをつなぐ窓口になりつつある。娯楽の選択肢が多様化し、さまざまなコンテンツが人々の可処分所得時間を奪い合うなか、何かをしながら「ながら聴き」ができるポッドキャストの聴取人数は右肩上がり。Spotifyをはじめとしたサブスクリプションサービスの普及も追い風に、ジャンルや世代を問わずさまざまなアーティストが自身のポッドキャスト番組を開設し始めているようだ。
ポッドキャストの魅力は、手軽さとニッチさ。公共の電波や一般流通の雑誌のようなマス媒体とは違い、特色豊かな、より踏み込んだ内容をテーマにしたコンテンツが多い。たとえば、歌手だけでなく、俳優や文筆家として多方面で活躍している小泉今日子は、そのマルチな才能をポッドキャストで余すことなく発揮している。読書家としての顔を覗かせるのは『ホントのコイズミさん』。このチャンネルでは、作家や書店オーナーをはじめ、さまざまなゲストを招き、ここでしか聴くことのできない多種多様なカルチャーに関するトークが展開される。また、このチャンネルのために上田ケンジと小泉の音楽ユニット“黒猫同盟”が楽曲を書き下ろすなど、歌手としての小泉の魅力も感じることができる。そして、K-POPにフォーカスした『小泉今日子とYOUのK-POP PARTY』では、BTSの大ファンであることを公言している小泉がタレントのYOUと一緒にK-POP愛を語り尽くす。『ホントのコイズミさん』の落ち着いた雰囲気から一転、熱くゆるく繰り広げられるK-POP談義は、まるで居酒屋での会話を聴いているような親しみを感じさせる。
また、多彩なテーマを扱う小泉とうってかわり、生業とする音楽を深く掘り下げるポッドキャストを配信しているのが、NONA REEVESの西寺郷太だ。西寺が手掛ける『西寺郷太の最高!ファンクラブ』は、招いたゲストの「最高に大好きなアーティスト」について語り尽くすトーク番組。マイケル・ジャクソンやプリンスに関する著書を上梓している西寺だけあって、80年代を中心に活躍したアーティストたち、具体的にはジョージ・マイケルやデヴィッド・ボウイをテーマにしたトークでは、その知識に驚かされる。そして、リスナーを飽きさせない軽妙な語り口も特徴的で、テーマにあがっているアーティストのことを知らなくても充分面白く聴くことができる。