Ado、『ONE PIECE FILM RED』劇中曲のヒットチャート独占を紐解く3つのポイント ウタを通して発揮された歌声の真価

 二つ目のポイントは、主題歌「新時代」を中田ヤスタカが、劇中歌をMrs. GREEN APPLE、Vaundy、FAKE TYPE.、澤野弘之、折坂悠太、秦 基博が担当し、総勢7組のアーティストが提供した豪華な楽曲のラインナップだ。今年1月にリリースされたAdoの1stアルバム『狂言』はボカロPやネットシーンに出自を持つ才能が作り手に並んだ作品だったが、『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』では『ONE PIECE FILM RED』劇中曲制作にメインストリームのアーティストや作家が集結。単に名のあるアーティストを集めた企画性だけでなく、ある種ミュージカル的な視聴体験をもたらす本映画において、ストーリー上の必然性を持った楽曲制作がなされているのもポイントだ。

Ado「新時代」MV

 まずは中田ヤスタカが手掛けた主題歌「新時代」。Adoが冒頭からアカペラで歌う〈新時代はこの未来だ 世界中全部 変えてしまえば〉というサビのメロディが強力なフックを持っている。楽曲の配信リリースは6月8日。映画公開の約2カ月前から楽曲が世に浸透していったわけだが、実際に映画を観ると、「新時代」というキーワードも、〈あれこれいらないものは消して リアルをカラフルに越えようぜ〉という歌詞のフレーズも、いろいろな意味でストーリーに沿ったものであることがわかる。メロディだけでなく作詞においてもキャッチーな言葉のセンスを持つ中田ヤスタカらしい一曲だ。

Ado「私は最強」

 「私は最強」はMrs. GREEN APPLEが楽曲提供。いかにもミセスらしいカラフルでアッパーな一曲だ。〈さぁ、怖くはない〉とファルセットで始まる冒頭から、サビでは〈大丈夫よ 私は最強〉とハイトーンでシャウトする、ダイナミックな抑揚に満ちたボーカルがインパクト大。この曲のAdoのボーカルには、どことなく大森元貴の発声や歌いまわしに通じるところも感じられる。

Ado「逆光」

 「逆光」はVaundyによる楽曲。多彩な表現のチャンネルを持つVaundyだが、実はアニメとアニソンへの強い思い入れを持つミュージシャンでもある。曲は彼のそんな一面を前面に押し出したライブ映えするアレンジの疾走感あふれるロックチューン。Adoの尖った声との相性は抜群だ。

「ウタカタララバイ」

 「ウタカタララバイ」はFAKE TYPE.による楽曲。FAKE TYPE.はMCのトップハムハット狂とトラックメイカーのDYES IWASAKIによる音楽ユニットで、ダンサブルなエレクトロスウィングをベースにした変幻自在な曲調が持ち味だ。この曲はまるでテーマパークのアトラクションを彷彿とさせるような、クルクルと目まぐるしく展開するナンバー。Adoの高速ラップにも耳を奪われる。ファンタジックでありつつ不穏なテイストも聴き所だ。

 Ado「Tot Musica」

 「Tot Musica」は澤野弘之が作曲を担当。『進撃の巨人』など様々なアニメの劇伴を担当し、ボーカルプロジェクト SawanoHiroyuki[nZk]としても活動する彼が書き下ろしたのは、壮大で神秘的、かつ怪しくダークなナンバー。劇中でもクライマックスの重要なシーンを担う一曲である。この曲の冒頭でAdoはなにやら呪文のようなフレーズを歌っているのだが、その部分の歌詞はルーン文字で書かれている。こういった禍々しいタイプの楽曲を迫力たっぷりに歌いこなすのもAdoならではの魅力だ。

「世界のつづき」

 「世界のつづき」は折坂悠太が書き下ろしたバラードナンバー。このような親密な空気感を持った曲は、実はAdoがこれまで歌ってこなかったタイプの楽曲だ。そういう意味では新境地のボーカルパフォーマンスと言っていいだろう。ウタの幼少期の思い出を描いた歌詞やメロディには、温かい空気感と切なさが背中合わせのように同居している。映画を観てから聴くと、〈夢のつづきで また会いましょう〉というラストのフレーズなど、ウタの思いを反映した歌詞のフレーズが非常に印象深い。

「風のゆくえ」

 「風のゆくえ」は秦 基博が作詞作曲を手掛けている。この曲も映画の中で重要な役割を担うスケールの大きなバラードナンバーだ。やはりAdoにとってはあまり歌ってこなかったタイプの楽曲である。

 『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』は「私は最強」や「逆光」といった“歌姫”としての押し出しの強いアッパーな曲が前半に並び、「ウタカタララバイ」と「Tot Musica」というトリッキーな“闇属性”の曲が中盤、そしてウタのパーソナルな思いを綴った「世界のつづき」「風のゆくえ」というバラード2曲が終盤に並ぶ構成になっている。映画を観た人には納得の曲順だろう。

 そして三つ目のポイントは、『ONE PIECE FILM RED』とAdoとのコラボレーションが日本のポップカルチャー全般にもたらすだろうインパクトだ。

 ここ数年、「アニメ映画×音楽」が相乗効果を生んだヒットが続いている。『君の名は。』(2016年)や『竜とそばかすの姫』(2021年)など、オープニングやエンディングを彩る主題歌としての扱いだけでなく、物語の展開の中で主題歌を含めた複数の劇中歌が重要な役割を果たすようなアニメ映画が脚光を浴びる例も少なくない。『ONE PIECE FILM RED』もまさにそういうタイプの作品なのだが、特筆すべきは主題歌&劇中歌の7曲がすべてヒットチャート上位に位置し注目を集めていること。Apple Musicの国内ランキングでは7曲がトップ7を独占した日もあった。

 その背景には、巧みなリリース戦略もあるはずだ。6月15日にMVを公開した「新時代」に始まり、6月22日に「私は最強」、7月6日に「逆光」と映画公開の1カ月以上前から楽曲の先行配信とMV公開によって期待を煽り、映画公開日の8月6日に「ウタカタララバイ」のMVを、アルバムリリース日の8月10日に「世界のつづき」のMVを公開。楽曲の内容が映画のストーリーと密接にかかわる「Tot Musica」は8月17日、「風のゆくえ」は8月24日にMVを公開と、公開後はより深い話題性を誘う設計になっている。

 映画の話題がこの先続くことを考えても、おそらく「新時代」は2022年を代表するヒット曲の一つになるはずだ。Adoにとって、そしてJ-POP全体の潮流にとっても、マイルストーンになるのではないかと思っている。

『Ado LIVE TOUR 2022-2023

■ツアー情報
『Ado LIVE TOUR 2022-2023「蜃気楼」』

<2022年> 
12月2日(金)神奈川・KT Zepp Yokohama
OPEN17:30/START18:30
12月8日(木)福岡・Zepp Fukuoka
OPEN17:30/START18:30
12月14日(水)北海道・Zepp Sapporo
OPEN17:30/START18:30
12月17日(土)東京・Zepp Haneda (TOKYO)
OPEN16:00/START17:00
12月18日(日)東京・Zepp Haneda (TOKYO)
OPEN14:00/START15:00
12月21日(水)愛知・Zepp Nagoya
OPEN17:30/START18:30
12月22日(木)愛知・Zepp Nagoya
OPEN17:30/START18:30
12月26日(月)大阪・Zepp Osaka Bayside
OPEN17:30/START18:30
12月27日(火)大阪・Zepp Osaka Bayside
OPEN17:30/START18:30

<2023年> 
1月10日(火)東京・Zepp Haneda (TOKYO)
OPEN17:30/START18:30

その他詳細はアルバム特設サイトにて
https://sp.universal-music.co.jp/ado/uta-no-uta/

 

■リリース情報
アルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』
2022年8月10日(水)発売
詳細:https://sp.universal-music.co.jp/ado/uta-no-uta/

■関連リンク
【各SNS / HP】
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