Miricah&が描く、大都市の中で繰り広げられる恋愛模様 リアルで繊細な感情を表現した「東京3部作」を読み解く
3作目「渋谷STATUS」はこれまでとは雰囲気を変え、ダンスミュージックを軸にした音作りで渋谷の活発な雰囲気を表している。〈学歴 財産 生い立ち 必須条件〉というインパクトのあるサビを初め、〈見映えさえ良ければそれだけでいい〉など、相手が持ち合わせるものに価値を見出し、それによって自分の劣等感を埋めるという人物を描写した歌詞。MVでも、SNSの高評価の数を他人と比べるなど、数字や自分の持ち物で評価をすることで自身を安心させようとしているようだ。
そんな、主人公の抱える劣等感が垣間見える楽曲だが、戸惑いや弱気さが直接うかがえる歌詞はない。終始強気なスタンスで隠しているのが、かえってリアルな人物描写に繋がっている。評価のために他人をそばに置こうという主人公は、3部作の中では一番独りよがりな人物像のようであるが、周囲からの評価を気にするが故に自身の持っているものを使って強がろうとするのはそう珍しいことではないのではないか。渋谷の生き生きとした街並みの中に溢れているであろう気持ちを的確に表現している楽曲だ。
なお、この3部作では、クラブシーン等で活躍するDJ KOJI NAKAMURAと音楽プロデューサーのKiwyリミックスバージョンもリリースされている。
「あなたと表参道」のリミックスは原曲よりもミニマムな音とテンポアップした曲調が軽快で、サビの韻がさらに強調される。「SHINJUKU without you」のリミックスも同様に、軽やかなテンポでダンサブルに進化。アルコールとともにもの悲しく〈どうにでもなれ〉と歌っていたのが、クラブで踊りながら〈どうにでもなれ〉と気持ちを紛らわすような、歌詞のニュアンスの変化も楽しむことができる。8月10日にリリースとなる「渋谷STATUS」のリミックスバージョンは原曲と大きく印象を変え、メロウでしっとりとした雰囲気が漂う。渋谷の喧騒とは距離をおいた孤独感を感じさせるリミックスで、主人公の強がりの裏にある本当の気持ちに迫るようだ。
街の雰囲気やそこで生活する人物の違いを音と歌詞で表現し、繊細な感情を織り交ぜるMiricah&。シリーズ化することにより、それぞれの楽曲の特色が見えやすいのも魅力だ。“街”という人々が身近に感じる題材をテーマに、人物像や心理描写をリアルに描き上げるMiricahが、次にどのような楽曲をリリースしていくのか、楽しみでならない。
■リリース情報
Miricah&
3rdシングル「渋谷STATUS」
2022年7月27日 リリース
作詞・作曲・編曲:Miricah&
featuring vocalist : himika
■関連リンク
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