Chilli Beans. 多方面から集まる注目の視線 『ロッキン』『サマソニ』など今夏フェス出演で本格ブレイクなるか

 7月13日にリリースされたChilli Beans.(チリビ)のアルバム『Chilli Beans.』。満を持しての1stアルバムは、タイトル通り彼女たちの現時点でのすべてを注ぎ込んだ、全14曲入りの渾身作となっている。デビュー作となったEP『d a n c i n g a l o n e』から1年足らず、精力的に楽曲制作やライブに取り組みながら、彼女たちはバンドとしての力を高め続けてきたチリビの軌跡も、今後のさらなる飛躍の予感も、このアルバムには詰め込まれている。聴くたびに気分がアガり、柄にもなく踊り出しそうになってしまう、パワフルでポップなアルバムだ。

Chilli Beans. - L.I.B (Official Music Video)

 昨年のデビュー以来、楽曲やMVをリリースするごとに彼女たちに対する注目度は高まり続けている。先日、楽天グループが発表した「2022夏トレンド予測」でも「エンタメ編」の一角を担うネクストブレイクアーティストとしてピックアップされた。デビュー曲である「lemonade」のMVは現在もYouTubeで再生され続け、現在240万回再生を突破。自主企画やワンマンライブも次々にソールドアウトとなっており、今この瞬間も彼女たちのファンは増え続けているのである。

 しかし、彼女たちの何がそんなに人々を惹きつけるのだろう。ソングライティングのセンス、キュートでクールなビジュアル、あらゆるジャンルを自分のものにして表現できる卓抜した演奏力、ビデオやアートワークなどのクリエイティブ力……いろいろあるが、それらも全部ひっくるめて、彼女たちがまとっている自由で軽やかな空気こそがチリビの魅力の根源だと思う。他のバンドやアーティストには決してないそのムードが、その表現に触れた我々をなんだかワクワクさせるのである。

 2019年、音楽塾ヴォイスのシンガーソングライターコースで出会ったMoto(Vo)、Maika(Ba/Vo)、Lily(Gt/Vo)の3人で結成されたChilli Beans.。全員がもともとシンガーソングライター志望であったこと、講師からの「バンドやってみれば?」という勧めが結成のきっかけだったことからもわかるとおり、彼女たちはそもそも生粋のバンドマンというわけではないし、何がなんでもバンドをやりたい! というところから音楽を始めたというタイプでもない。……と書くとなんだか否定的な響きに感じるかもしれないが、要するに「バンドをやる」ということが目的になっていないのがChilli Beans.の強みなのである。だからこそ彼女たちは誰よりも自由に伸び伸びと「バンド」を楽しみ、それぞれのクリエイティビティを存分に発揮できているのだ。

 弾き語りをベースに曲を作ることも、トラックメイキングから曲作りを始めることもできる。もちろん3人で音を合わせながら、セッションで楽曲をまとめ上げていくこともできる。3人全員がリードボーカルを取れる歌唱力をもっているのはもちろん、コーラスワークにおいても3人がポジションを変えながら美しいトライアングルを描き出す。歌詞も同様に、誰かひとりが描きたいイメージを持ってくることもあれば、3人でキーワードを出し合ってひとつの歌詞を作り上げることもある。それを阿吽の呼吸で繰り広げながら、Chilli Beans.の音楽は生み出されている。それぞれが3人の位置関係を俯瞰しながら、絶妙なバランスで前に出たりバックアップに回ったりしながらバンドをドライブさせているのだ。だからこそ誰よりもユニークで新しく、何より面白い楽曲が次々と生まれるのである。

関連記事