藤木直人、パワフルなステージで届けるジャンルレスなエンターテインメント 50歳の誕生日迎えた中野サンプラザ公演を振り返る
「藤木直人ってどんな音楽をやっているの?」と尋ねられたら、「なんでも」と答える。そして「とにかくまずは、ライブに行ったほうがいい」と付け加える。ロック、ポップス、ファンク……藤木が歌い、奏で、ときには踊り、リスナーに届けているのは、ジャンルにとらわれることのないエンターテインメントだった。
7月19日、東京・大阪・愛知を巡るライブツアー『Naohito Fujiki Live Tour ver13.0 ~L-fifty-~』東京公演が、中野サンプラザホールにて開催された。ツアー2日目となるこの日は、藤木の50歳の誕生日。40代最後の日である前日もファンと過ごした藤木は、誕生日公演も特別扱いはせず、楽しませる姿勢に変わりはない。けれどやはり、ちょうど50年前の今日生まれた「藤木直人」という人が今ここにいるのだと思うと、不思議な感覚を覚える瞬間もあった。そしてライブを通し、1995年の俳優デビュー以来、藤木が愛され続ける理由がよく分かった。
定刻まもなく暗転。オルゴールの音色に乗せ、藤木の誕生から現在までのヒストリーが映し出される。写真の多くは今と変わらぬ笑顔で、時折おちゃめなカットも差し込まれる。メロディは次第にバースデーソングを奏でていた。会場には大きな拍手が起こる。
「ミライ」でライブの幕が開いた。会場は間もなく、クラップで一体となる。「こんばんは藤木直人です。50歳になりました。今夜は楽しんでいってください!」と、「コズミックライダー」へとテンションを上げていく。ポップでありつつトガったギターラインが痺れる「アイネ・クライネ・ナハト・ミュージック」、コンピュータサウンドから始まる「タイムトラベル」では、ペンライトやタオルがくるくると回る。ギターをかき鳴らし、歌い、ダンサーとステップを踏み、踊り……アッパーチューンに乗って、笑顔で会場中を見渡す藤木。ギターを抱える立ち姿は、とにかく格好良い。
「誕生日おめでとう俺!」「Happy Birthday to me!」と自身へのお祝いから始まった冒頭のMC。「2daysだから、昨日とは違うことを」と、セットリストの随所に変更を取り入れたという藤木は、前日と異なり、ヒゲも剃ってきたとファンに報告。話題は「ヒゲの有無、どちらが好きか」のアンケートに発展、「なんちゅう会話(笑)」と笑う藤木だが、ファンと築いてきた関係があるからこその、くだけた会話が微笑ましい。「ヒゲがあってもなくても俺が好きだよって人ー?」という選択肢に、会場は大きな拍手で応えた。「あ、そうだ」「そういえばね」と、藤木はどんどん話していく。イヤモニが見つからず「俺の耳どこいった?」と、ジョークを飛ばす場面もあった。ライブでの藤木は、日頃目にする姿よりもずっと饒舌で、人懐っこい印象。これは、ファンしか知らない藤木なのだろう。
「Birthday」では、作者の橋口洋平が所属するバンド・wacciが登場。豪華な演奏にも関わらず、目を閉じて聴きたくなる時間だった。藤木のライブを支える、優しく楽しいサポートメンバー、藤木を慕うwacciとともに、誕生日に歌う「Birthday」。奇跡のような時間が生まれるのは、藤木の人柄があってのことだと思った。
ライブ中盤、藤木はギターからキーボードへとチェンジ。ロックバラード「50」は力強く、「ゆりかご」間奏のピアノソロは、歌うように繊細。「緊張した」という藤木だが、会場からは拍手がやまない。それでも「(ファイナルの)名古屋までにうまくなりたい」と向上心を見せた。
ここから、畳みかけるようなラストスパート。ブラス隊のサウンドに乗せ、手拍子が鳴り響く「This Is My Life」、パンキッシュなロックナンバー「Speed★Star」、モンキーダンスで踊り狂う「恋のROCK'N'ROLL! DRIVE!」では、中野サンプラザが揺れた。“ミドルなちょうど良さ”を歌った「ナイスなミドル!」は、振り付け講座もユーモラスに。「SAMURAI FUNK」では、NiziU(ニジュウ)ならぬGoziU(ゴジュウ)ということで2本の縄跳びを使ったダブルダッチというパフォーマンスでリアル縄跳びダンスを決めてみせ、岡崎体育が楽曲提供したラップありのEDMナンバー「湿布」では、MVでも見せていたキレキレのダンスをバンドメンバーも総出で踊る。
「50歳になっても僕を愛してくれるかい?」。もちろん、と答えたくなる甘い台詞から始まった「愛のテーマ」。「HEY! FRIENDS」のパラパラ風ダンスは当然、ファンも完璧だ。暗転ののち、わざと大きくため息をついて現れた藤木は「50代の初日がこれ(笑)」と、笑った。ときおり年齢をジョークにする藤木だが、これほどパワフルなステージを見せている以上、自虐もカラッとした笑いになる。
ライブタイトル「L」は、ラテン数字で50を意味するらしい。「さまざまなことが繋がっているからおもしろい」と、最後の曲は「LOVE!」。アコースティックギターを鳴らす壮大なサウンドと歌詞は、ラストにぴったりだった。