『京都大作戦』、3年ぶりに全日程開催された4日間を総括レポート 10-FEETと全てのアーティストが繋いだ“ライブへの想い”

 3年ぶりに全日程が無事に開催された、今年の『京都大作戦』。2020年の開催中止、2021年の2週目開催中止、それ以前も事あるごとに中止や中断に見舞われてきたことを思うと、4日間を完走したという事実だけで感慨ひとしおなのだが、『〜今年こそ全フェス開祭!〜』というサブタイトルを改めて見返してみると、10-FEETが並々ならぬ覚悟を持って今年の『京都大作戦』に挑んでいたことが感じられた。

10-FEETが2022年の全てのフェスに繋いだ襷

 まだコロナ禍前のような完全なライブを行うことはできない2022年、10-FEETは結成25周年、『京都大作戦』は15周年を迎えた。とりわけバンドが主催するフェスというのは、バンド同士の交流がダイレクトに反映されたラインナップになるとともに、先輩が若手バンドをフックアップする場でもあるため、(ときにはローカルな)生きたロックシーンがそのまま形になる。『AIR JAM』を経た2000年代、10-FEETはそうした土壌をいち早く地元で築き、たくさんのバンドと絆を結びながら音楽性も磨き続け、ロックバンドの1つのニュースタンダードを象徴する存在となった。結果、『京都大作戦』は“10-FEETにしか作り出せない最高の遊び場”として、多くのバンドマンの憧れの場所であり続けている。喜び、楽しさ、悲しみ、痛みをロックで混ぜ合わせ、爆音に乗せて鳴らすことで、明日を生きるための活力にしたいーーそんな想いでステージに立つ10-FEETの優しさが隅々まで行き渡っているからこそ、観客もアーティストも「一緒にロックの渦を大きくしたい」と思えるフェスが『京都大作戦』なのだ。

 今年、まず印象的だったのは、出演しているバンドのライブがどれも気迫に満ちた素晴らしいものだったこと。それはライブができることが決して当たり前ではなくなったからこそ、夏フェスシーズンのキックオフとなるこのタイミングに、どのバンドもこれまで以上の気合いで臨んでいたからでもあるだろうし、なんとしてでも『京都大作戦』に成功をもたらし、トリの10-FEETまで繋ぐんだという想いがそうさせていた部分もあっただろう。深い絆で結ばれた同世代のバンドも、10-FEETに憧れを抱く若手バンドも、そして『京都大作戦』を楽しみにしている観客一人ひとりも、会場にいた誰もが10-FEETに夢を託し、その10-FEETが今年予定されている全てのフェスにバトンを繋いでいく。そんなロックの襷リレーによって、サブタイトル通り、2022年の全てのフェスの開幕宣言が『京都大作戦』で成し遂げられたのは、とても意義深い瞬間であった。

 1日目・2日目は、中止となってしまった昨年後半のラインナップをほぼそのまま引き継ぎ、3日目・4日目が実質的な新規ラインナップとなっているが、出演アーティストの数だけ、それぞれの『京都大作戦』に対する想いとストーリーがある。

 HEY-SMITHは2019年、肺気胸による入院で猪狩秀平(Gt/Vo)不在のまま『京都大作戦』に出演。様々なバンドが曲ごとにサポートする形でステージをやり切ったことがあったが、今年はその挽回として気迫のライブで観客を踊らせ、HEY-SMITH本来の狂騒を見せつけた。先輩であるウルフルズは、2019年の対バンがきっかけで10-FEETと交流を持つようになり、「TAKUMAくんは面白いやつやな」と思ったことから『京都大作戦』出演に至ったのだとか。

 10-FEETへのリスペクトが人一倍強いヤバイTシャツ屋さんのライブでは、こやまたくや(Gt/Vo)が「10年前、自分は『京都大作戦』の客席にいたけど、みんなもバンドやれば10-FEETと共演できるかもしれへんで」と語り、改めてこのフェスに出演できる喜びを表現。10-FEETの「JUST A FALSE! JUST A HOLE!」をカバー(コラボレーションアルバム『10-feat』にも収録)した際には、10-FEETメンバー全員がステージ上に乱入した。〈I wanna kill you.〉のところで、KOUICHIが演奏中のもりもりもと(Dr)の髪を本当に“切る”という謎演出で、爆笑を生み出していたことも忘れがたい。

 盟友 G-FREAK FACTORYのライブでは、茂木洋晃(Vo)が10年以上かけて源氏ノ舞台に戻ってこれた感慨を語る。続けていくことは決して簡単ではないと体現するバンドだからこそ、今この瞬間に爪痕を残すような強烈なステージを披露。TAKUMAと歌い上げた10-FEET「アンテナラスト」のカバー(『10-feat』収録)は、心の奥深くまで刺さるほど温かくて壮絶だった。また、一足早く『DEAD POP FESTiVAL』を成功させていたSiMは、愛のあるいじりで10-FEETをおちょくりつつ、持ち時間が押した関係で「Blah Blah Blah」を倍速演奏したところ、スタミナ切れするというレアな場面も。

 逆にこれから初の主催フェス『1CHANCE FESTIVAL』を熊本で行うWANIMAは、「雨あがり」「Hey Lady」「BIG UP」など、2015年の初出演時にも披露していた楽曲で盛り上げ、10-FEET「VIBES BY VIBES」のカバー(『10-feat』収録)を自身の曲かのように華麗に乗りこなしていく。横ノリのグルーヴで源氏ノ舞台に新風を吹かせたVaundyはこのフェスにとっても新たな可能性を切り拓いただろうし、椎木知仁(Gt/Vo)が「『京都大作戦』がすごいのは10-FEETが本気だからだ」と言い放ったMy Hair is Badも、切れ味抜群なライブをしてみせた。

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