稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾、共演作から窺える互いへのリスペクト 身近な存在だからこその緊張感も

 また、三谷作品といえば、香取と稲垣もシットコム『誰かが、見ている』(Amazon Prime Video)で共演を果たしたことも記憶に新しい。香取演じる舎人真一は知らぬ間に日常を配信されてしまうハプニング続きの男。対して、稲垣は密かに舎人の大ファンだという人気演歌歌手・レッツ大納言を演じた。

 テレビの配線に手こずる舎人は、レッツを電器店のスタッフと勘違い。配線を直してくれると思い込む舎人と、ファンとして舎人の部屋に訪れて感激するレッツ、そんな2人の会話はどこかすれ違っていて笑いが生まれる、という展開だった。

Amazon Originalドラマシリーズ『誰かが、見ている』本編映像 舎人真一&レッツ大納言出会いのシーン

 当時、稲垣が香取との共演に際して「皆さんが見ている俳優としての香取慎吾はこういう感じなのか!と不思議でした」とコメントしていたのが印象的だった(※1)。「俳優としての香取慎吾」と言いたくなるのは、長年グループとして活動を共にし、香取の様々な顔を知っているからこそだろう。

 いわば演技の場は、グループから離れたソロ活動の領域。そこで共演するとなれば、プロの俳優として、最大限の敬意を払っていこうという姿勢を感じる。振り返ればそんないい緊張感が、ずっと彼らの間には常に漂っていたように思う。

 そう考えると、稲垣、草なぎ、香取の3人で共演した『クソ野郎と美しき世界』は実に興味深い作品だった。それぞれが主演を務める3本のエピソードと、3人が一堂に会するラストエピソードからなるオムニバス形式。3人それぞれが「俳優として」の新しい顔を模索し、互いにそれを堪能する。これまでにない新しい楽しみ方ができる作品になった。

 3人は今も忙しいスケジュールの合間をぬって、互いの舞台やソロステージを鑑賞しに行っている。身近な存在だからこそごまかしが効かない、そんな緊張感がいいスパイスとなっているのだろう。ピリッとできる緩急のある関係性を長年保っていくのは、むしろ難しい。だからこそ、仲睦まじい瞬間がより愛しく、そして共演者としてお互いを奮い立たせるというもの。彼らならではの距離感で紡がれる刺激的な共演作品が、今後も数多く生み出されていくことを楽しみにしている。

※1:https://realsound.jp/movie/2020/09/post-621309.html

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