Sexy Zone、Lucky Kilimanjaro、imase……ポップミュージックに広まる「休むこと」を肯定するメッセージ

 Sexy Zoneの「休みの日くらい休ませて」では“決まった日くらいは休もうぜ”というメッセージが描かれていたのに対し、Lucky Kilimanjaroの「週休8日」では休みの日どころか毎日以上のスケール感で「休むこと」を推奨している。クールで洒脱なサウンドが心地よいグルーヴを生み出し、歌で繰り返される〈リラックス〉のメッセージが腑に落ちるように広がっていく。毎日のように何かに忙殺されがちな現代社会だからこそ、フレーズの一つひとつが印象深く響く。

Lucky Kilimanjaro「週休8日」Official Music Video

 chelmicoの「ISOGA♡PEACH」でも、休みを推奨するメッセージが躍り出る。Lucky Kilimanjaroの「週休8日」が推奨する休みの量が極端だったのに対し、chelmicoの「ISOGA♡PEACH」はリアルにも〈週3勤務で週4休み 年に3ヶ月夏休み〉というフレーズでメッセージを紡ぐ。スリリングなトラックの上を、マイペースかつ自然体にリズムをのりこなすchelmicoだからこそ、少しコミカルなフレーズが、リアルなメッセージ性を帯びていく。imaseの「でもね、たまには」でも、〈でもね、たまには一息ついて〉というフレーズから始まる通り、休息を肯定する言葉が展開されていく。ラウドなロックシーンにおいても、打首獄門同好会の「はたらきたくない」に代表されるように、自らの頑張りを認めつつ前向きになりきれない心情に寄り添うような楽曲が散見される。

chelmico - ISOGA♡PEACH official visualizer
【imase】でもね、たまには(MV)
打首獄門同好会「はたらきたくない」

 休みを求めるスケールは楽曲によって異なっているが、奥田民生が「コーヒー」で〈休みが必要〉と歌にしていた時代に比べると、「休もう」というメッセージの共感性と求心力は強くなった印象を受ける。それは多くのリスナーが「そもそも忙しい」状態になってしまったからとも言えそうだし、「もうすでに十分頑張っている」と感じている人が増えたからとも言えそうだ。少なくとも、「頑張ろうと思っていなくても、色んな方面において頑張らざるを得ない世の中になってしまっている」という見立てに、リアリティを感じる人が増えているのは確かだと思う。

 「休もう」というメッセージが応援歌的と言えるかは聴き手によるだろうが、ポップミュージックに内包されるメッセージが少しずつ変容しているのは確かだろう。ポップミュージックがリスナーの生活を投影するものである以上、その変化は明朗かつ確実に進んでいくのだと思われる。

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