Saucy Dog、武道館のステージで見せたバンドの頼もしい姿 リスナーに届けた感動と幸福感あふれるメッセージ

 Saucy Dogが、バンド史上最大規模のツアーとなる東名阪ワンマン・アリーナツアーを開催した。今回は、日本武道館2日目の公演をレポートする。数々のタイアップをこなしながらも常にライブを行うことでリスナーに音楽を直接届けてきた、彼らのバンドとしての実力をしっかりと見せつける公演となった。

 会場が暗転し、モニターに映し出されたのは美しい波の映像だった。海の中にギター、ベース、ドラムが沈んでいき、着地すると同時にメンバーがステージ上に姿を表した。石原のギターサウンドが鳴り響き、オープニングナンバーとして「BLUE」が投下された。涼しいブルーのライトや多くのオーディエンスが肩にかけた水色のタオルにより、まさに海の中の特設ステージのような雰囲気を醸し出す。”Saucy Dog初めてのアリーナツアー、『Be yourself』始めます”というスタートの合図を放ち、「メトロノウム」へ。どこまでも進み続ける彼らを象徴するような1曲だ。

 “僕が言われて一番悔しかった言葉”と前置きして歌われた「煙」は、ライブで聴くと音源で聴くよりも何倍もの破壊力を伴う。想いのこもった歌声と最小限のバンドサウンドで綴られる〈好きなだけじゃ一緒に/いられないの〉というパワーワードは、リスナーの胸をぎゅっと掴んでいった。かと思えば、爽やかなポップソング「シーグラス」で会場を盛り上げる。切ないバラードとアップナンバーを織り交ぜ、次はどの曲を歌うのかわからないドキドキ感も、また一興だ。

石原慎也(Vo/Gt)

 「雀ノ欠伸」では石原慎也(Vo/Gt)が会場を見渡して嬉しそうな表情を見せたり、リスナーのクラップに対して手で作った丸を掲げたり、観客とのコミュニケーションも図る場面も。また「真昼の月」では、せとゆいか(Dr)が抜けの良いドラムを、秋澤和貴(Ba)がリズミカルなベースラインを披露し、常に磨きのかけられているサウンドをしっかりと聴かせてくれた。

 「あなたらしく、自分らしく」という意味が込められた、今回の『ARENA TOUR 2022 「Be yourself」』ツアー。タイトルと同名の新曲「Be yourself」も初披露された。モニターには歌詞も表示され、聴覚と視覚の両方で、〈自分のために生きていい〉というSaucy Dogからのメッセージを伝えていく。その後も、リリースから10カ月ほど経った今なお根強いバイラルヒットを続けている「シンデレラボーイ」を炎の演出と共に、「東京」をこれからも東京で歌っていく覚悟と共に届ける。

 中盤戦は、スペシャルゲストを迎えた“アルティメット編成”でパフォーマンス。ピアニストの村山☆潤を迎え、微笑ましいラブソング「魔法にかけられて」をドラマチックに奏で、恒例のアコースティックステージへ突入。せとがボーカルを務める「煙草とコーヒー」と「いつもの帰り道」で、会場が温かい空気に包まれた。途中のMCでは、フルキャパシティでソールドアウトした武道館でライブができる喜びを述べたり、「コロナ禍からの脱出」という裏テーマがあることを吐露したりするシーンもあった。

 再びバンドセットで演奏された「結」と「ノンフィクション」では、ピアノの他にストリングス隊も加えた8名編成によるスペシャルな演奏を披露。壮大に奏でられる楽器隊のサウンドと、その迫力に負けないほど力強い石原の歌声に、会場にいる全員が引き込まれたのは間違いないだろう。

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