Ghost like girlfriendにとっての「音楽」という大きな兆し 変わらないスタンスと変化するマインド

どういう形になっても一生の付き合いで音楽と向き合っていたい

――歌詞に歌われている人と人との関係性みたいなところでも、もちろん100%愛して100%愛されるのがいいに決まっているんですけど、そうもいかないじゃないですか。

岡林:そうですね。

――「この人20%しか愛してくれないな」とか、「俺はどうしたってこの人には10%しか愛を持てないな」とか、そういうときに、「じゃあもういいです」って言わないためにどうしたらいいのか。シャットアウトしないで、ひとつでも繋がれるチャンネルを探している感じがするというか。

岡林:「諦めない」というのは今作の中のテーマのひとつかもしれないです。どうにか頑張って、全部離さないままでいたいっていう。そこに悩まされた3年でもあったけど、それこそ編曲で土器大洋さんが携わってくれたりとか、エンジニアさんももう7、8年ぐらいの付き合いになる方にお願いしていたりとか、そういった長年の付き合いになっている人がこの3年で現れてくれたことも確かで。だから出会うことを諦めないでね、と。出会うこととか、関係性を続けること、運命を諦めないためにはどうするかというようなことは、この3年で一番考えていたことなので、それが表出しているのかな。

――今回のアルバムって、簡単に言ってしまえば「生活」のアルバムだなと思うし、人間同士の話だなと思うんですよね。もう1個、Ghost like girlfriendには当然「音楽」っていうファクターもあって。それがひとつになっている感じがするんです。生活の延長線上に音楽があるし、人間同士の関係性の中に音楽はある。「音楽」という楽曲は、音楽のことを歌っているというよりは、今話してくれたことをすごくストレートに歌っている曲ですよね。

岡林:そうですね。〈幸せにやっぱなりたいと心が言ってる/何度でも目指しても良いよね〉っていう。これは本当に人と会ってない制作期間の中で、たぶん一番時間をかけて作っていた曲なんですけど、だからこそそのときの価値観の濃縮度が半端じゃないというか。

――岡林さんにとっては音楽も大きな兆しなんでしょうね。

岡林:そうです。人によってどういうコンディションでも曲を書ける人もいると思うんですけど、やっぱり一定の精神力とか体力がないと俺は音楽を作れないし、聴けもしないので。復活してある程度心身が保たれてきたときに、ようやく音楽を作る資格が戻ってくるんです。兆しが見えたときに真っ先に手に取るものは、自分にとっては音楽なんですよね。

――最後の「マリアージュ」という曲もなんとなく、音楽のことを歌っている気がしたんですが。

岡林:はい。「マリアージュ」というのは「相性」という意味なんですけど、救われっぱなしだし、借りを返したいけどもらいっぱなしだし……特に自分と音楽の関係性を振り返ってみるとそう思うところがあって。どういう形になっても一生の付き合いで音楽と向き合っていたいなっていうのも、この3年で思ったことのひとつです。だからある種音楽へのラブソングに近いというか、そういう気持ち、感謝みたいなものを形にしようというところから出来上がっていったのがこの曲ですね。

――料理を作って、〈帰ってきた君〉が上着も脱がずに一口食べて〈案外焦げたところが美味しいねと〉言うというのは、この「君」が音楽だとしたらどういうことなんですか?

岡林:難しいな……。すごく丹精込めて、これは絶対世に届くはずだって思った曲が思った通りにいかなかったことの方が圧倒的に多いんですけど、その悔しさも後の音楽に繋がってきたりとか。それは音楽そのものへの手応えもそうですし、人間関係における出会いと別れみたいなものも、どれだけバッドエンドだったとしても、「でもここはよかったよね」とか「これは得られたでしょ」っていうものが毎回ちゃんとあって、自分が今音楽に落とし込みたい議題やテーマになってくれるというか。そういうふうにどうあがいても次に繋げてくれる、拾ってくれる感じを、自分は音楽に対してすごく抱いていて。しかもそれは年々濃くなっている気がするんです。それをどうにか生々しくせずに、素敵な表現で書けないかと思って書いたのがこの曲ですね。

――「Ghost like girlfriendはこうやって音楽やっていますよ」という、宣言みたいなものだと受け取りました。スタートして5年、悩んだり苦しんだりしてきた期間が長かったようにも思いますけど……。

岡林:そうですね(笑)。悩んでばっかりでもあるんですけど、それに対する向き合い方はどんどん変わってる気がして。やるせなさは尽きないのはもう目に見えてわかるんですけど、その折り合いの付け方を増やしていく人生だなと思うんです。その1つの形として今作がありますし、ここからまた違う折り合いの付け方を見つけていった先で、それが作品の作り方に作用して、その作品と地続きの作品ができあがるかもしれないし、またガラッと変わるかもしれないし。やることは変わらないけど、変化はしますよね。

※1、2:https://realsound.jp/2020/11/post-656730.html

Ghost like girlfriend『ERAM』

■リリース情報 
2022年6月8日(水)リリース
¥3,300(税込)

<収録曲>
1. ERAM
2. 光線
3. laundry
4. Rainof○○○
5. 面影
6. 音楽
7. Highway
8. Midnight crusing
9. Birthday
10. Flannel
11. マリアージュ

■関連リンク
公式ホームページ

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