ASP、エイベックスからメジャーデビュー アンバランスなキャリアが生み出す熱くひたむきな“パンク精神”
ASPは、パフォーマンスにおいてもアナーキーだ。ライブのオープニングは、ならず者たちと一緒に“準備体操”からスタート。「いつでもファッキュー♡」ではマチルダーがフロアに中指を立てるように煽っていく。特筆すべきはデジタルハードコアの「NO REASON」。目を見張るユメカのデスボイスは、ライブ現場で飛躍した、音源では聴くことのできない絶唱である。この日は新曲の「BOLLOCKS」「SPiT OUT」に、ライブチューンの「SAKEBE」、グループにとっての代表曲である「A Song of Punk」「拝啓 ロックスター様」と全23曲を惜しげもなく披露している。遠慮なく言ってしまえば、ユメカ、ナ前ナ以、モグの3人とそれ以降に加入してきたメンバーの実力の差は、当然ながら無視できない。それはボーカル、ダンス、フォーメーション、表情ーー全てにおいてだ。ただ、今のASPには観るものを熱くさせるひたむきさがある。言うなればパンク精神。そんなかつてのBiSHをも彷彿とさせる未完の大器にエイベックスはベットしたのだと筆者は捉えている。
WACK所属アーティストとして野音ワンマンの開催は、2016年のBiSH、2019年のGANG PARADE以来、ASPが3組目。特に落ちサビで一面サイリウムの海となったBiSH「オーケストラ」は今でも語り草になっている伝説のライブだ。今年2月にZepp DiverCity(TOKYO)で行ったワンマンライブ『ANTi SOCiAL PAiNS』がキャパシティの半分も埋まらなかった過去があるASPとしては、野音ワンマンはまさに背水の陣の覚悟。集客的にも、そして実力的にも残り3カ月という期間で急成長しなければならない。だけどきっと大丈夫と、彼女たちを信じたくなるのは誰もが同じだ。メジャーデビューが発表されたアンコールで、次の「A Song of Punk」に移ろうとした隙間でいつまでも鳴り止まなかった拍手。これからの険しい道のりの中で、そんな温かな連鎖が彼女たちを野音に導いてくれることを願っている。この原稿をエールに代えて。