THE BACK HORN、絶望さえも味方にして突き進んだ2年間 コロナ禍で向き合った“4人らしさ”と音楽ができる喜び
「4人の歌詞とメロディが混ざり合うことで音楽の幅も広がっていった」(松田)
ーーなるほど。今回、アレンジはどうやって進めていたんですか?
松田:基本的には作曲者がデモを作るんですよ。それをもとに生のドラムを叩いて、そのデータをメンバーに送って、それぞれギターやベース、歌を入れて、さらにやり取りして。以前はみんなでスタジオに入って、実際に音を出しながらアレンジを決めていたんだけど、今はデータのやりとりが中心ですね。
山田:ドラムと歌はスタジオで録ってるんですけど、ベース、ギターはそれぞれ自宅で録ってます。「瑠璃色のキャンバス」で初めてリモートでレコーディングをやってみて、そこからずっとそのやり方が続いていて。やればできるもんですね(笑)。
松田:ホントだよな(笑)。「同じ空間で呼吸を合わせて演奏したほうがいい」と思えばそうしたんでしょうけど、リモートでしっかりやれると思ったので。自宅で録ることで一つひとつの曲に時間をかけて向き合えるし、そのぶんイメージも膨らんで。バンド感も全然なくなってないし、今はこのやり方がいいのかなと。
ーーそれもコロナ禍のなかで見つけた方法ですよね。栄純さんの作詞・作曲による「ウロボロス」も強烈な楽曲だなと。
松田:8曲目(「疾風怒濤」)、9曲目(「ウロボロス」)が栄純の曲なんですけど、ヤバイですよね。
山田:ぶっこんできたなと。栄純が今やりたいことが詰まってるし、それがTHE BACK HORNらしさにもつながって、さらに深さも増して。ストリングスのアレンジがいいんですよね。ループのフレーズをぶった切って繋ぎ直したって言ってましたけど、この妖しい感じがシックリきて。
松田:うん。最初から「この枠は俺が作る」って言ってたし、カオスな雰囲気もありつつ、コロナ禍で感じたことも表現されていて。アレンジもすごいと思います。『カルペ・ディエム』のときに“打ち込みの音とバンドサウンドの融合”という要素が出てきたんですよ。ただ打ち込みの音を入れただけではなくて、必然性のある交わり方ができたと思うんだけど、「ウロボロス」ではさらに熱さが加わって、すごく強い曲になって。たぶん栄純のなかでも「(前作を)超えないといけない」という気持ちがあったと思うし、相当時間をかけて作ってたみたいなんですよ。「ウロボロス」は自分の尾を飲み込んで輪になってる龍なんですけど、そのイメージもいいなと。サビでは“今を生きる”という力強さも出てるし、タイトル、楽曲、歌詞がしっかり合わさってるなと。ライブでも盛り上がる曲になると思います。
ーーそしてアルバムの最後を飾る「JOY」は、松田さんが作詞、山田さんが作曲を担当。未来への光が感じられる、素晴らしい曲ですね。
松田:“11曲目の「瑠璃色のキャンバス」がアルバムのクライマックス”というのは共有していたんですけど、その後の曲はどうするかという話をずっとしていて。
山田:最後の曲、難しかったですね。
松田:苦戦したね。ツアー中も意見を交換してたんですけど、年末に将司から「こういうのはどう?」ってデモがワンコーラス分届いたんですよ。
山田:クリスマスの日にね。
松田:そう。聴いた瞬間に「いいね」って返事して、全体の構成を作ってもらって、それを受けて歌詞を書いて。そこからですね、「これはいいラストになりそうだ」と思えたのは。
山田:とにかく「瑠璃色のキャンバス」からのつながりを考えていたんですよ。あの曲が持っている夜明けの雰囲気を引き連れていきたかったし、オルガンの音色からはじめて、「ここからまた何かが始まる」という感じにしようと。賛美歌みたいなムードもあるし、個人的にはU2の『ヨシュア・トゥリー』のはじまりみたいなイメージもありました。その後、「4つ打ちのリズムを入れよう」とか具体的なアイデアが加わって。
松田:シリアスな雰囲気もあるし、賛美歌みたいな神聖なイメージもあるんですよね。歌詞もその世界観に合うようにしたいと思っていました。さっきも言いましたけど、コロナ禍で大変なことになって、苦しい経験もいっぱいして。でも、そのなかで大切なことに気付けたし、「自分たちを信じてやっていこう」と思えたんです。どんな状況であっても、それを受け止めて、生きていくしかない……確か広島だったと思うけど、ツアー中に将司とも「お客さんと自分たちのつながりを感じられるような歌詞になったらいいね」みたいな話もしてたんですよ。普遍的なテーマでもあるし、みんなへのメッセージにも聴こえる曲になったと思います。“楽しむ”よりも“喜び”という意味を強く意識してましたね。
山田:あまり大き過ぎないのがいいんですよね、「JOY」の歌詞は。目の前のお客さんと確認し合えるような、優しい歌だなと。
松田:メロディ自体に、そっと問いかけてるような感じがあったからね。
ーーそれも共作の賜物ですよね。『アントロギア』というアルバムタイトルは誰が決めたんですか?
山田:栄純ですね。
松田:古代ギリシア語で「花を集める」という意味で。「ウロボロス」もギリシア神話だし、そういうモードだったのかも。
山田:『アントロギア』は“アンソロジー”の語源にもなってるんですよ。詞を集めることと花を集めることがつながってるって、ギリシア人のセンスすごいよな。
松田:うん。生命力のある花と詞を結び付けるのもいいよね。
山田:花と同じように、詩もギフトだったんだろうね。ロマンティックだな……。
ーーアルバムジャケットのモチーフも花ですね。
松田:この花、4つの色で構成されてるんですよ。“メンバーそれぞれが花を集めるように作った”という意味も込められていて。それもTHE BACK HORNならではだなと思いますね。
ーーメンバー全員が作詞・作曲に関わることで、アルバムの世界観が形成されていて。
山田:そうですね。それぞれにやりたいことがあって、みんなでTHE BACK HORNらしさに向き合っていたので。
松田:全員の良さをいちばん理解しているのが栄純なんでしょうね。曲によって作詞、作曲をする人は違うんだけど、最終的には全員の意見やアイデアがしっかり入っているし。それぞれが作詞・作曲した曲を持ち寄ることは他のバンドでもよくあると思うけど、ウチは組み合わせも曲によって違っていて。たとえば「ユートピア」と「希望を鳴らせ」は、組み合わせは同じでも役割が違うじゃないですか。
ーー「ユートピア」は作詞が山田さん、作曲が菅波さん。「希望を鳴らせ」は菅波さんが作詞で、山田さんが作曲。確かにこういう作り方をしているバンドは稀かも。
松田:最初の頃はほとんどの曲を栄純が作っていて、それがバンドのイメージやアイデンティティになってたんだけど、ある時期から栄純が「みんな作れるんだから、全員で作詞・作曲しよう。それがバンドだ」って言いはじめて。4人の歌詞とメロディが混ざり合うことで音楽の幅も広がっていったし、やりながら手応えを感じるようになりましたね。
ーーアルバムを携えたツアーも楽しみです。リモートのレコーディングがメインだったということは、リハーサルで初めて4人で演奏する曲もかなりあるんですよね?
山田:そうですね。実際に音を出すことで見えてくるものもあるだろうし。
松田:コーラスのパートも多いから、ライブのためのアレンジが必要な曲もあるだろうし。出来上がってから気付いたんですけど、今回のアルバムは温度が高めな曲が多いんですよ。
山田:そうかもね。ギターが歪んでない曲は「ネバーエンディングストーリー」くらいで、激しい曲が多いし。
松田:そうそう。なのでライブでも熱く盛り上がってもらえるんじゃないかなと。アルバムの曲が会場でどう響くか、俺らも楽しみです。
■リリース情報
THE BACK HORN『アントロギア』
2022年4月13日(水)リリース
ダウンロード/ストリーミングはこちら
・完全生産限定盤A(CD+Blu-ray)¥7,150(税込)
・完全生産限定盤B(CD+DVD)¥6,050(税込)
・通常盤(CD)¥3,300(税込)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discographylist/A014057.html
<CD収録曲>
01. ユートピア(詞:山田将司 曲:菅波栄純)
02. ヒガンバナ(詞:松田晋二 曲:菅波栄純)
03. 深海魚(詞:松田晋二 曲:山田将司)
04. 戯言(詞:菅波栄純 曲:山田将司)
05. 桜色の涙(詞:松田晋二 曲:岡峰光舟)
06. ネバーエンディングストーリー(詞曲:山田将司)
07. 夢路(詞曲:岡峰光舟)
08. 疾風怒濤(詞曲:菅波栄純)
09. ウロボロス(詞曲:菅波栄純)
10. 希望を鳴らせ(詞:菅波栄純 曲:山田将司)
11. 瑠璃色のキャンバス(詞曲:山田将司)
12. JOY(詞:松田晋二 曲:山田将司)
編曲:THE BACK HORN
<Blu-ray / DVD収録内容>
・LIVE MOVIE『KYO-MEIストリングスツアー』 feat.リヴスコール [2021.6.11 Zepp Haneda(TOKYO)]
01. オープニング –満天への祈り–(Live SE『KYO-MEIストリングスツアー』 feat.リヴスコール)
02. トロイメライ
03. シリウス
04. ブラックホールバースデイ
05. 超常現象
06. ジョーカー
07. 自由
08. グレイゾーン
09. いつものドアを
10. シュプレヒコールの片隅で
11. 君を隠してあげよう
12. 夢の花
13. 星降る夜のビート
14. コバルトブルー
15. シンフォニア
16. 戦う君よ
17. 世界中に花束を
18. ミュージック
19. ラピスラズリ
20. 刃
・MV
瑠璃色のキャンバス、希望を鳴らせ、ヒガンバナ、ユートピア 他
■ツアー情報
THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」〜アントロギア〜
5月4日(水・祝)神奈川県 KT Zepp Yokohama Open 16:00 / Start 17:00
5月15日(日)大阪府 Zepp Namba Open 16:00 / Start 17:00
5月20日(金)愛知県 Zepp Nagoya Open 18:00 / Start 19:00
5月22日(日)福岡県 Zepp Fukuoka Open 16:00 / Start 17:00
6月03日(金)北海道 Zepp Sapporo Open 18:00 / Start 19:00
6月05日(日)宮城県 仙台GIGS Open 16:00 / Start 17:00
6月10日(金)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO) Open 18:00 / Start 19:00
6月18日(土)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN Open 17:30 / Start 18:00
6月25日(土)岩手県 盛岡Change WAVE Open 17:30 / Start 18:00
7月08日(金)香川県 高松MONSTER Open 18:30 / Start 19:00
7月10日(日)高知県 高知X-pt. Open 16:30 / Start 17:00
7月16日(土)京都府 京都磔磔 Open 17:30 / Start 18:00
7月18日(月・祝)広島県 広島CLUB QUATTRO Open 16:15月 Start 17:00
7月23日(土)茨城県 水戸LIGHT HOUSE Open 17:30 / Start 18:00
7月30日(土)石川県 金沢EIGHT HALL Open 17:30 / Start 18:00
<チケット>
全公演¥6,000(税込・D代別)/購入はこちら