松下奈緒、自分をさらけ出す嘘のない音楽作り コロナ禍で実感した、エンターテインメントを楽しむ大切さ
「楽しいことは“楽しい”とみんなが言えるようにしたい」
ーー今回、8枚目となるニューアルバム『FUN』には、「光~ray of light~」「アカツキ」と、『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)オープニングテーマ曲や挿入曲も収録されています。錚々たる音楽家の方々が歴代で手掛けてきた枠を担当するのはどんな気持ちでしたか?
松下:本当に嬉しかったです。私は『ガイアの夜明け』のMCもやらせていただいているので、視聴者の方を導いていく立場なんですけど、私自身も一緒に新しく知っていくことが多くて。いろんな土地に足を運んで、いろんな方々と出逢ってきた中で生まれた楽曲が「光~ray of light~」や「アカツキ」なんですよね。番組を通して訪れた場所や出逢った人たち、そこで感じたことをすべて入れ込んでいるので、自分の想いがすごく詰まった楽曲でもあるんです。
ーー具体的には、どんなイメージを湧かせながら制作したんでしょう?
松下:綺麗な水辺から鳥が羽ばたいていくようなイメージではなく、もっと土臭いというか、堂々とした佇まいの中にもふと悲しみや悔しさが滲んでいたり、ただ美しいだけではなくて、必死にもがいて這いつくばって大変なことを成し遂げようとしていくその強さを描きたかった。なので、例えば「光~ray of light~」には、ティンパニーや大太鼓などアタックの強い楽器を取り入れたりしています。
ーー『ガイアの夜明け』同様、人間の営みを感じさせますよね。
松下:そうですね。番組を通して出逢った方々の生き様からインスピレーションを受けているので。それが『ガイアの夜明け』のテーマ曲や挿入曲として流れるのは嬉しいですし、とても感慨深いです。
ーー今回のアルバム『FUN』は、そうした番組やCMと共に流れている楽曲が多数収録されていますが、その一方で表題曲でもある「FUN !」という書き下ろしの新曲も収められています。
松下:今回のアルバムは9曲入りなんですけど、8曲まで出揃ったときにタイトルチューンが欲しいなと思ったんです。このアルバムのために書き下ろす純然たる新曲を作りたくて、その時点で『FUN』というアルバムタイトルが先に決まっていたので、そこからイメージを湧かせていったときに「自分が好きなジャンルをすべて盛り込んだ楽曲にしよう」と思って。ちょっとファンクっぽいところに、AOR的な要素など懐かしい80年代のムードがありつつ、ピアノのメロディは今っぽい。そういう様々な要素がミックスされたもので、ライブの最後にみんなで一緒に楽しめるような曲を書きたかったんですよね。なので、制作当初の予定にはなかった曲なんですけど、レコーディングの時にミュージシャンの方もみんな楽しみながら演奏してくれましたし、アルバムのタイトルチューンとしてこういう曲が作れて良かったなと思っています。
ーー今はコロナ禍ですが、こういう状況下だからこそ「FUN !」のようなポジティブな力が溢れている楽曲は必要ですよね。ゆえにミュージシャンの皆さんも楽しみながら演奏されていたんでしょうし。
松下:コロナ禍になってから2年ほど経っていますけど、エンターテインメントの立ち位置を考えると寂しいです。エンターテインメントシーン全体的にどうしてもコンサートやイベントができない状況もあったりして。そんな中で、私は幸いなことに去年ツアーを開催することができて、久しぶりにファンの皆さんと直接会えたんですけど、そこで「やっぱりこういう時間はなくしちゃダメだな。音楽を止めちゃいけないな」と改めて実感したんですよね。誰が聴いてくれるか、来てくれるか分からないけど、いつでも音楽を共有できる準備はしておこうと思いましたし、楽しいことは「楽しい」とみんなが言えるようにしたいし、だからこのアルバムも『FUN』と名づけたんです。その結果「FUN !」のようなポジティブな楽曲も生まれたので、このアルバムを聴いてくれる人には「楽しい!」と思ってもらえたらいいなって。
「純然たる私で構成されているものが音楽」
ーーその「FUN !」は特に顕著ですけど、松下さんの音楽性ってクラシックだけに留まっていないですよね。いろんな音楽に触れて育ってきた方なんだろうなと、今回のアルバムを聴きながら感じました。
松下:意外とクラシックばかりじゃなくて、ラジオがずっと流れている家で育ったので、そこから聴こえてくる音楽にもすごく影響を受けているんですよね。FM802が関西の実家で流れていたので、デイヴィッド・フォスター、Steely Dan、ジョージ・ベンソン、Earth, Wind & Fire、The Doobie Brothersなど、その辺りの時代の洋楽をたくさん聴いていて。もちろん勉強のためにモーツァルトやショパンも聴いていたんですけど、J-POP含め、クラシック以外の音楽も好きでした。その影響は今回のアルバムにも出ているかもしれないです。
ーーそういう部分も含めて、アルバム『FUN』には人間性も色濃く反映されているので、音楽家としてはもちろん、人間・松下奈緒のファンにとっても嬉しい作品なんだろうなと思います。
松下:音楽は人となりが一番出ると思っているんですよね。ドラマなどの役や演じている私を好きになってくれるのももちろん嬉しいんですけど、音楽は私が作って、私が弾いて、純然たる私から出てきたもので構成されているので、それを好きになってもらえたらとても嬉しいですし、自分をさらけ出した甲斐があったなと思う。だからこそ嘘のない音楽を届けたいとも思います。そういう意味では、今回のアルバム『FUN』はいろんな私を知ってもらえると思うんですよ。全編インストですけど、オーケストラの曲もあれば、ポップス寄りな曲もあるし、ドキュメンタリーのために作った曲もあったり、ピアノのプレイ面で新たに挑戦した曲もあるから、本当に盛りだくさんで。そのどれを取っても松下奈緒なんですけど、この中からあなたのナンバーワンの松下奈緒を選んでもらえたらいいなと思います。
ーーそんなアルバム『FUN』を携えた『JAバンク presents 松下奈緒コンサートツアー2022 -FUN-』が5月より開催されます。どんなツアーにしたいと思っていますか?
松下:今、自分の中でコンサートがより楽しくなってきているんですけど、私だけが楽しくてもダメで、演奏するミュージシャンも楽しくなきゃダメだし、足を運んでくれるお客様も楽しくなきゃダメじゃないですか。そのためにはどうしたらいいのかなと考えた結果、聴いて楽しいのはもちろんなんですけど、観て楽しいコンサートをやってみたいなと思っていて。ピアノの演奏って、遠くから観ると一定の動きにしか見えないから、そこの見せ方も工夫していきたいし、そのためにも今まで演奏してきた楽曲も新しくアレンジを変えたりできたらなって。そんなこと言ったらバンドメンバーから「えぇ?」って言われそうですけど(笑)、とにかくいろいろ挑戦しながら各会場に来てくれるみんなが「楽しかった!」「来てよかった!」と笑顔になれるようなツアーにしたいです。
ーーでは、最後にアルバム『FUN』を聴く皆さんへメッセージをお願いします。
松下:3年ぶりのアルバムなので、私が今一番ドキドキしていると思います(笑)。ここ2年間、楽しいことを抑えてきた部分があったし、誰かと何かを共有することが憚れる時間が長かったように感じるんですけど、その分、溜まっていた想いを『FUN』には思いっきりぶつけることができました。その結果、とても楽しいアルバムになったので、皆さんにも楽しんでほしいし、ツアーでも楽しい時間を共有できたらいいなと思っているので、ぜひ遊びに来ていただきたいと思います。
■作品情報
松下奈緒『FUN』
4月13日(水)発売
・初回生産限定盤(CD+Blu-ray)¥4,500税込
・通常盤(CDのみ)¥3,300税込
<収録曲>
01 . it’s MOTTO(佐藤製薬「ユンケル黄帝液プレミアム」CMソング)
02 . 光~ray of light~(テレビ東京系列「ガイアの夜明け」オープニングテーマ曲)
03 . アカツキ(テレビ東京系列「ガイアの夜明け」挿入曲)
04 . Breath ~JUA la Africa~(テレビ静岡・フジテレビ系「地球感動スペシャル みなしごゾウを守れ 松下奈緒ケニア感動物語」テーマソング)
05 . Shiny Blue(佐藤製薬「ユンケルプレミアムシリーズ」CMソング)
06 . FUN !
07 . Orpheus in the Underworld -天国と地獄-
08 . アライブ –Piano Version-(フジテレビ系ドラマ「アライブ がん専門医のカルテ」劇中曲)
09 . みんなのあした(JAバンクCMソング)
<Blu-ray収録内容>
CONCERT TOUR 2020 / 21 “PLAY LIST”
1. Lovin’ You
2. エカテリーナのための協奏曲
3. Melodious Sky
4. うんとしあわせになろう
■ツアー情報
『JAバンクpresents 松下奈緒コンサートツアー2022 -FUN-』
5月14日(土)東京・かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール(開演17:00)
6月15日(水)北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)(開演18:30)
7月1日(金)宮崎・宮崎市民文化ホール(開演18:30)
7月3日(日)熊本・熊本県立劇場 演劇ホール(開演16:00)
7月9日(土)東京・東京国際フォーラム・ホールC(開演16:00)
7月10日(日)大阪・新歌舞伎座(開演17:00)
チケット一般発売日:6月5日(日)10:00~
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