アイナ・ジ・エンドがCMで歌うYUKI「大人になって」カバーが話題 ボーカルに宿る“特別さ”を紐解く

 これらのカバー曲ほぼすべてに共通する特異点として挙げられるのは、どれもまるでアイナの持ち曲であるかのように聴こえるところだ。プロのシンガーであれば当たり前のことに思えるかもしれないが、自分で選んでいない“想定外”のカバー曲であってもそれができるというのは、あまり尋常なこととは言えない。これはおそらく、彼女がアイドルグループという場でキャリアを積んできたことと無関係ではないだろう。「この曲をあてがわれた自分が何を求められているのか」を的確に嗅ぎ分ける理解力と、それを具現化する表現力の両方を兼ね備えているということにほかならない。「アイナが歌えばどんな曲でもアイナの歌になる」と言うと陳腐に聞こえてしまうが、それを本当の意味で体現できるボーカリストは決して当たり前の存在ではないのだ。

 また、一般的に既存曲をカバーする際、原曲との差別化を図る意味で大幅なリアレンジを施すという手法がよく使われる。しかしアイナの場合、逆に「何もしなければ何もしないほど原曲との差異が鮮明になる」という謎の特質がしばしば見受けられるのである。それが特に顕著なのが「冬のうた」で、これは歌詞、メロディ、コード進行、編曲まで含めてほぼ原曲トレースに近く、普通ならカバーというよりコピーになってしまいそうな構造であるにもかかわらず、オリジナルとはまるで違う新たな価値を明確に提示していた。彼女の歌声に独特の主張が備わっていることの好例と見ていいだろう。

 アイナの歌声が“特別”であることは、客演の多さからも窺い知ることができる。MONDO GROSSOやMY FIRST STORY、SUGIZO、ジェニーハイ、東京スカパラダイスオーケストラなど、彼女をフィーチャリングボーカルとして起用したがるアーティストは後を絶たない。仮にもアイドルグループに所属する現役メンバーがこれだけ多方面から“歌”を求められるというのは、かなり珍しいパターンと言える。これはつまり音楽のプロフェッショナルたちが彼女の歌声をスペシャルなものとして認識していることの証左であり、先に述べた彼女自身の驚異的な対応力の高さとも相まって、今後もますます多方面から求められ続けていくことだろう。

MONDO GROSSO / 偽りのシンパシー

※1:https://www.galaxymobile.jp/explore/special/always-together/

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