flumpool 山村隆太×緑黄色社会 長屋晴子が語り合う、ボーカリストとしての姿勢 バンドだからこそ経験できた変化とは?
「上手く歌うよりも楽しんでいる気持ちを前に出そう」(長屋)
ーーお二人の歌い方の変化についても伺いたいです。
長屋:私も含めてメンバー全員、緑黄色社会が初めて組んだバンドなので、右も左もわからない状態でガムシャラに進んできて、「上手く歌わないといけない」という気持ちが強くなっていたんですよね。カラオケの採点で100点を取るような歌い方というか。でも、そうするとどうしてもつまらない歌になってしまうんです。
ーーなるほど。
長屋:でも、あるときお世話になっている人から「上手く歌おうとし過ぎているんだよ」と言われて、ハッとしたんです。それで、ピッチが正確じゃなくてもいいし、上手くなくてもいいから、楽しんでいる気持ちや伝えたいメッセージを前に出そうと思いました。
山村:“楽しむ”って見失いがちだよね。
長屋:そうなんですよ。それこそ小さい頃は好きで歌っていたし、楽しいだけだったんですけど、バンドを組んで活動が大きくなるにつれて、プレッシャーや緊張が上回るようになっていって。もちろん、今はライブも楽しいですけどね。
ーー山村さんも歌うことが楽しくなかった時期がありましたか。
山村:ありましたよ。一番はやっぱり声が出なくなったときですね。自分で言うのも恥ずかしいですけど、真面目で強がりなところがあったので、不安や緊張も「自分でどうにかしないと」と思っていたし、弱さを見せられなかったんですよ。でも、発声障害と診断されてからは、むしろポジティブになれて。「今の自分はゼロなんだな」とわかれば、もう強がれないじゃないですか。もちろんメンバーやスタッフも僕の状態を知っているので、強がる必要もなくて。そのとき考えていたのは、「残りの人生、1点ずつ増やしていけばいい」ということだったんです。昨日より今日、今日より明日という感じで1つずつ成長すればいいし、それを喜びにしたいなと。その日が60点だったとしても、「明日の61点のために今日がある」と思えるようになったので、今はライブが楽しいです。長屋さんは、ライブで一番楽しいのはどういう瞬間?
長屋:やっぱりメンバーの顔を見たときですね。ハンドマイクのときはすぐ絡みに行っちゃいます。
山村:ライブだからできること、ライブだから見せられる顔ってあるからね。音楽があるから成立する関係性というか。
長屋:そう、ステージに立つと何かが解放されるんです。だって、普段メンバーと背中合わせで立ったりしないじゃないですか(笑)。
山村:確かにね。俺もそういうことをしたいんだけど、背中合わせようとすると、みんな逃げちゃうんですよ(笑)。「マイク1本でコーラスしない?」と言っても、「嫌や」って。断るっておかしくないですか?
長屋:あははは。でも、こういう話を先輩とできるのはすごく嬉しいです。普段は悩みを抱えがちだし、一人で落ち込んでしまうこともあるんですけど、「先輩も同じように悩んでいたんだ」とわかると、本当に気持ちがラクになるので。
山村:一人で抱えるのは危ういよね。メンバーにも相談しないの?
長屋:私が一番こじらせているというか、相談できないことが多いんです。メンバーも気にかけてくれますけど、私から何か言わないと聞いてこないし。どうしようもなくなってから話したりするので、「何であのとき言ってくれなかったの?」と言われたこともありますね。
山村:実直なボーカリストを周りのメンバーが支えているんだね。メンバーに女性がいることも強みだよね。
長屋:本当にそう思います。
山村:flumpoolは男4人で、みんなクセが強くて(笑)。意地の張り合いみたいなこともあるんですよ。「おはよう」をどっちが先に言うか、とか。小さいけど。
長屋:面白いです(笑)。
山村:仲はいいほうだと思うけど、時々せめぎ合いがあるんですよね。緑黄色社会は男女比も同じだし、バランスいいよね。
長屋:そこについては何も考えていなかったんですけどね。たまたま集まったのが、今の4人だったので。
山村:『Actor』にも男性メンバー同士で書いた曲、女性メンバー同士で書いた曲があるよね?
長屋:はい。多様性があるバンドだなって自分でも思います。
山村:ファンク、ソウルを取り入れていたり、ワルツの曲もあって。音楽的な振り幅に対応している長屋さんのボーカルもすごいと思います。歌うときも声を変えようと意識しているんですか?
長屋:そういう意識はしていないですね。サウンドが曲によって違うので、そこに引っ張られるように自然と歌っているというか。
山村:そうなんだ。自分たちは曲によって「色気多めに」とか「声の低い成分を出そう」とか「尖った感じで」とか、結構意識的に変えてるんですよ。作曲者の一生の意図でもあるんだけど。
長屋:なるほど。私はまだ、ボーカリストとしてのベーシックがないと思っているんですよ。曲によって歌い方が違うように聴こえるかもしれないけど、「全部自分です」という感じですね。
ーーそしてflumpool、緑黄色社会はこの春、全国ツアーを開催します。flumpoolはスガ シカオさん、Saucy Dog、sumika、高橋優さん、フレデリックを招いた対バンツアー『Layered Music』がありますね。
山村:対バンツアーは初めてなんですよね。『北京2022オリンピック』を観ていて、競い合うことって素晴らしいなと感じて。尊敬するアーティストと競い合って刺激をもらったり、ときに嫉妬しながら1つのライブを作っていけたらいいなと思ったんです。それが次の創作にも繋がる気がするので。
長屋:実は緑黄色社会にも声をかけていただいたんですけど、完全にツアーのスケジュールが被ってご一緒できなくて。山村さんから直接電話をいただいたんですよ。
山村:緊張しました(笑)。
長屋:本当に嬉しかったです。次回はぜひ、ご一緒したいです。
ーー緑黄色社会はニューアルバム『Actor』を引っ提げた全国ホールツアー『Actor tour 2022』ですね。
長屋:はい。アルバムを制作しているときは音源を良くすることだけを考えていて、ライブで演奏することを想定してなかったので、今、ライブ用のアレンジを考えているところです。
山村:どこまで生音で演奏するか、とか?
長屋:そうですね。シーケンスの音も使うし、アレンジや音色を変えたりとか。
山村:僕らは音源重視というか、特にアルバムのツアーはなるべく原曲通りにやりたいんですよね。尼川は生音にこだわっていて、一生はシーケンスの音をどんどん入れたいから、そこでもせめぎ合ってます(笑)。緑黄色社会はそういうことで揉めたりしない?
長屋:そういうことで揉めることはあまりないですね。セットリストで話し合うことはよくありますけど。
山村:そうなんや。やっぱり羨ましいな(笑)。
■リリース情報
flumpool コンセプトアルバム『A Spring Breath』
2022年3月16日(水)発売/5,500円(税込)
<収録楽曲>
01. 君に届け
02. サヨナラの瞬間
03. two of us
04. 明日への帰り道
05. 証
06. 夢から覚めないで
07. Hydrangea
08. 誰かの春の風になって
09. どんな未来にも愛はある
10. 花になれ
11. A Spring Breath
<DVD内容>
『ROOF PLAN 〜Acoustic in Billboard Live〜』
2021.12.31 Billboard Live TOKYO Live映像
1. two of us
2. Hydrangea
3. 証
4. 夜は眠れるかい?
5. どんな未来にも愛はある
6. HELP
7. Snowy Nights Serenade 心までも繋ぎたい
8. 花になれ
9. labo
10. 星に願いを
EN. A Spring Breath
■ツアー情報
『flumpool Special 対バン Tour 2022「Layered Music」』
2022年5月5日(木、祝)w/ スガ シカオ
愛知県 名古屋国際会議場 センチュリーホール
開場 17:00 開演 18:00
2022年5月6日(金)w/ Saucy Dog
神奈川県 神奈川県民ホール大ホール
w/ Saucy Dog
開場 17:30 開演 18:30
2022年5月7日(土)w/ sumika
神奈川県 神奈川県民ホール大ホール
開場 17:00 開演 18:00
2022年6月11日(土)w/ 高橋優
東京都 TOKYO DOME CITY HALL
開場 17:00 開演 18:00
2022年6月12日(日)w/ 高橋優
東京都 TOKYO DOME CITY HALL
開場 15:00 開演 16:00
2022年6月18日(土)w/ フレデリック
大阪府 オリックス劇場
開場 17:00 開演 18:00
2022年6月19日(日)w/ フレデリック
大阪府 オリックス劇場
開場 15:00 開演 16:00