ばってん少女隊、いぎなり東北産、fishbowl、タイトル未定……アイドル論客4者が語る、2021年に起きたロコドルの活況
突如札幌で生まれたタイトル未定の衝撃
ーー4位には、fishbowl「深海」がランクインしています。『アイドル楽曲大賞』としては初登場となりますが、どういったグループなのでしょうか?
宗像:ヤマモトショウさんが、静岡で立ち上げたグループです。fishbowlはテレビ静岡とタッグを組んでいるんですね。番組は2021年6月に一旦終わっちゃいましたが、アイドル観察バラエティとして『fishbowlの本当にデビューしちゃってもいいですか?』が放送されていた。ショウさんから「深海」の音源をもらった時は震えましたね。「深海」のブルーで内向的な感じは、2021年のトレンドを押さえた上で作ったのかなと思いました。
岡島:「深海」はメンバーボーカルの前に、諭吉佳作/menをフィーチャリングしたMVが先に出たんですよね。
宗像:同じ静岡出身の諭吉佳作/menを先に出すという仕掛け方も上手いなと思いました。
岡島:地元を大切にしながら曲を聴いてほしいという表明にもなっていますよね。
ピロスエ:リスナーとしては諭吉佳作/menの方がいいっていう人も一定数いて、そのバージョンが21位に入ってるんだよね。どっちに入れたらいいか迷うっていうツイートもあったよ。
ガリバー:彼女たちはコロナの影響もあってかほとんど静岡を出ないで活動をしているんです。楽曲、MV、SNS上の発信だけでここまできているのは、ロコドルとしては希望の星です。地元での勢いを活かして東京に進出しローカル感が薄くなってしまうような路線からは一歩引いて、ヤマモトショウさんのコネクションを使いながら、定期公演で静岡にゲストを呼んでライブを続けているのは評価されている要素の一つですよね。
ーー続いて5位のRYUTist「水硝子」は君島大空が作詞、作曲、編曲を手がけた楽曲です。
岡島:君島さんは、アイドルだとsora tob sakanaにも楽曲を提供したことのある方です。その他にも、僕が結果発表イベントでレコメンドしたadieu(上白石萌歌)の「春の羅針」も君島さんによる楽曲です。
ガリバー:正直、入れるならこれっていうのがRYUTistファンの率直な思いだと思います。この年のリリースは「水硝子」と「パーティーを続けよう!」の実質2曲で、「パーティーを続けよう!」は久しぶりの有観客ライブで初披露された意味合いが強く、ずっとRYUTistを楽曲で追ってる人は迷うことなく「水硝子」を選んだんだと思います。でも、アブストラクトすぎてついていけないって人もいて、賛否が分かれた曲でもあります。
岡島:RYUTistらしくないという意見なんですか?
ガリバー:いや、RYUTistはこういう曲も、ベタベタなローカル曲もやるし、その振り幅、多種多様な曲をリッチにハイクオリティでできるところが良さなのは言うまでも無いかなと思うんですよ。今回はいかんせんリリースが少ないから。曲だけ聴く人は手放しに絶賛する曲だと思います。それこそ、1位のばっしょーと通ずる部分もある。
ピロスエ:わかるよ。どっちもサウンドスケープが美しいよね。
宗像:私もこれが1位でいいと思ったくらいだけど、アブストラクトすぎるというのもそうだよねとしか言えないので。ハードルが高い中でこれだけクリエイティブが高いポピュラリティとの絶妙なところをついてきたなと。
ーー6位に「鼓動」でランクインした、タイトル未定も『アイドル楽曲大賞』の上位には初登場ですよね。
宗像:タイトル未定は2020年に札幌から出てきたグループですね。僕が2021年に観た中で、最もショックを受けたグループでした。内向的なメッセージを歌うのは欅坂46以降のトレンドでもあったんですけど、そういった内容をローカルアイドルが東京に来て歌ってるのはすごく衝撃を受けたんです。
ガリバー:雪の大地で生まれたグループだからこそ、内向的な雰囲気が似合うのかもしれません。この子たちが歌う必然性があると思わせてくれる。正直、ロコドル感はあまりないんだけど、fishbowlとは真反対の形でライブアイドルとして関東に定期的に出向いて、その積み重ねからファンを獲得していった。tipToe.、アイドルネッサンスとか、そういった内向的でセンチメンタルな楽曲を歌うグループの流れも汲んでいるし、ロックテイストの曲もある。“青春”といったキーワードをセンシティブにパッケージングしたグループが急に札幌で生まれたのはいまだに不思議です。
ーータイトル未定の中でも「鼓動」が上位に来たのは?
ガリバー:圧倒的にこれですね。アルバムのリード曲の扱いですし。
宗像:グループコンセプトがここにはありますよね。
ピロスエ:アルバムと同名曲の「青春群像」って曲は、歌詞に曲名が入れ込んである仕掛けがあったりして。そういったコンセプチュアルな部分はtipToe.に通ずる部分があるのかなと。
ーー先ほども話題に挙がった、いぎなり東北産「うぢらとおめだづ!」が7位、さらに16位に「Whatever」が入っています。
ガリバー:MVは彼女たちがライブを開催している場所で、東北の人たちが大好きな遊園地の八木山ベニーランドで撮影しているんです。僕もここでのイベントに行ったんですけど、最高なんですよね。スターダストがちゃんと地元に根付いて活動をしていることが分かるMVですし、彼女たちの元気な感じが伝わってきますよね。
宗像:「うぢらとおめだづ!」が東北スカパンク、「Whatever」がどバラードって感じで、そういったコントラストもよく出ていたんじゃないかと思います。
ーー8位は、SW!CH「ラヴゴナ」となりました。
岡島:SW!CHは今年1月に現体制の活動を終了し、活動休止に入っています。
宗像:メジャーのPerfumeと同じで、SW!CHに関しても(ランクインした理由は)ディスコソングだからになりますよね。
岡島:RingwanderungやRAYなどが出演している『エクストロメ‼︎』というアイドルイベントにSW!CHもよく出演していた1組で、その『エクストロメ‼︎』勢がこのインディーズのランキングには多く食い込んでいる印象です。4位のfishbowl、6位のタイトル未定 、17位のリルネード、19位のサンダルテレフォン、23位のsituasionもそうですね。アイドル楽曲好きには要注目のイベントだと思います。