「imagination」インタビュー

reche、ソロ活動を通して出会った初めての感情 初オリジナル曲「imagination」に込めた等身大の姿

 EGOISTのボーカリスト 楪いのりとして活動するchellyが、2021年6月にソロプロジェクト“reche”を始動。同年11月にはカバー企画「りしぇかば」をスタートし、12月には初のワンマン配信ライブ『reche 1st live online cloud 9+1』を開催。2022年1月1日には初のオリジナル曲「imagination」を配信リリースと、ソロ活動が活発化している。

 「imagination」は、彼女の等身大の気持ちを表現した楽曲。本人曰く初めて自分が主人公となった楽曲にはまだ慣れないらしいが、ソロ活動に向けての思い、希望的な未来が表れた最初の一歩に相応しい作品となった。昨年リアルサンドで掲載した初インタビューでは、ソロ活動スタートへの心境や展望を聞いたが、あれから半年以上が経過し、オリジナル曲も出した今、recheは何を思うのか。様々な活動を経験した現在の率直な気持ちを聞いた。(編集部)

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ソロ活動を通して自身の内なる声が聞こえるように

reche

――まず、recheとして半年以上活動されてみていかがでしたか?

reche:私の日常生活は何も変わらないのですが、お仕事をする環境が変わったことは実感しています。活動自体はもう少しできたかなという気持ちもありつつ、しっかり準備をして、やっと成果を世に出せたかなと。今までの活動はじっくり時間を使うことがあまりなかったので、それと比べてゆっくりに感じただけなのかもしれないですが、ひとつのものに向き合うのもいいものだなとも思いました。

――大きなところで言うと、2022年1月1日に初のオリジナルの楽曲「imagination」をリリースしました。この曲はもともと2種類(※1)のラフスケッチをもとに一般公募されたものでしたが、このスケッチに対するrecheさんの印象はどのようなものでしたか?

reche:実は、絵を見た時はどんな曲になるのか、あまりイメージが湧いてこなくて。でも、いざ募集して候補になる曲が挙がってくるにつれて、うっすらとビジョンが見えてきました。

――数ある応募曲の中から、なぜ「imagination」を選んだのでしょうか?

reche:たくさん応募いただいたなかで、この曲がダントツでラフスケッチを表現できていると感じました。雨が降っているしっとりした情景を描いてくださった方が多かったんですが、私のなかのイメージではどちらかというと“雨上がり”だったんです。雨が上がって陽がさしてきて、傘の隙間から空を見上げた時に「まぶしい」と感じるような情景で、イメージ通りだったのが「imagination」でした。水たまりでしぶきが弾けている感じの音とかも、「ここまでサウンドで表現できるんだ」と驚きました。

reche 1st digital single『imagination』2022.01.01 release

――制作者のca(+nn)の青木千春さん、永田範正さんとはお話はされましたか?

reche:レコーディングに来ていただいて、ディレクションをしていただきました。その時に、「何も説明していないのに、なぜ私の気持ちがわかるんですか?」とお聞きしました(笑)。たくさん調べていただいて、私のことを思いながら作ってくださったことを知った時は、すごく嬉しかったですね。

――歌詞についてはいかがでしょう?

reche:非の打ちどころがないという印象でした。いざレコーディングするとなった時、「変えたいところはありませんか」と聞かれたんです。でも、本当に言うことがなくて逆に申し訳なかったくらいで(笑)。歌詞の中では、特に〈その先の世界を見に行くんだ〉というフレーズが好きです。

――歌詞には〈胸に届く声だけを信じて〉という言葉もありますが、どのような声だと解釈しますか?

reche:最初に浮かんだのは、「自分を信じる」という自分の声です。今まではまったく聞こえていなくて、そのことに対する不安も特になかったんです。自分がどうしたいとか、こうなっていきたいとか、こういう表現がしたいとか、そういうものがあまりなくて。でも、それは自分をないがしろにしていたのかもしれない、と思うようになりました。

――recheになってから初めてそのことに気づいたのでしょうか。

reche:そうですね。recheとして活動するようになって初めて、自分はどうしたい、という願望が出てきましたし、そういうことを考えるのも久しぶりだと気づきました。自分の中にある小さい声が、みなさんのおかげで少しずつ拾えるようになりました。

――レコーディングの際に意識したことはありましたか?

reche:それは特になかったんです。というのも、私のパーソナルなところに沿った楽曲や歌詞だったので、今までのようにキャラクターとしてのフィルターをかけたり、「この子が主人公」っていうのを考える必要がなかったので。

――逆に、今までと違って曲の主役が自分自身であることに戸惑いはなかったですか?

reche:それはすごくありました。慣れないせいか、最初はどうしたらいいか本当にわからなくて。でも自分自身のことなので、深く考えると逆に偽物っぽくなりそうな気がして、あえて深く考えないようにしました。今、この時感じたことを大事にして、自由に自然体に、感じるまま歌いました。

――そうやって歌った上で、完成したものをご自身で聴いていかがでしたか。

reche:なんと願いのこもったサウンドになったんだろうと思いました。私はもちろん、曲を作ってくれた青木さんや永田さん、関わってくださったすべての人の気持ちが詰まった1曲に仕上がったなと。

――曲が完成したことで、歌詞にある“その先の世界”を見られた感覚はありますか?

reche:もちろん! レコーディングする時は、まだ不安もあったんです。「本当に先の世界を見に行けるのかな」って。でも、歌ったことで新しい世界が垣間見えた気がしました。

自分が主人公になることにまだ慣れていない

「命に嫌われている。」reche (original : カンザキイオリ)【りしぇかば】

――ファンの方から歌ってほしい曲を募集する「りしぇかば」で集まった楽曲を見ていかがでしたか?

reche:尋常じゃないくらいのリクエストをいただきまして(笑)。曲のジャンルはバラバラで幅広かったので、その中から単純に「歌って楽しそうな曲」という基準で選びました。

――歌うのが難しかった曲はありましたか?

reche:カンザキイオリさんの「命に嫌われている」は、歌詞がぎゅっと詰め込まれているので、ちゃんと曲に込められたメッセージを伝えきれるかなと。VOCALOIDならではの曲の作りになっているので、人間の私にこれが表現できるかなという不安はありましたが、自分なりの「命に嫌われている」が歌えたと思います。

「KING」reche (original : Kanaria)【りしぇかば】

――「りしぇかば」は全体的にボカロ曲が多かったのもあり、歌うのが難しい曲が多かったように感じました。「KING」のようにこぶしを入れるような曲はいかがでしたか?

reche:私のこれまでの曲を聴いている人はびっくりするかもしれないですね。ライブで歌っている時も「全部ぶっぱなす」という気持ちでした(笑)。でも、私はどのジャンルの曲でも苦手と思うことはなくて、「歌うの楽しければいいか」と割と楽観的なんです。

――recheさんは歌うことにおいて「楽しさ」を重視されているように思うのですが、どういった時に歌の楽しさを感じますか?

reche:楽しい時って、何も難しいことを考えずにいられる時だと思うんです。なので、音程がどうとか、この歌詞をこうしたいとかは一切考えず、音に乗って自分の感情を動かしている時が一番楽しいです。

――「りしぇかば」と「imagination」を両方歌ってみて、カバー曲とオリジナル曲の違いを感じましたか?

reche:歌に主人公がいれば自然と降りてくるものがあるので、カバー曲は今までの感覚とあまり変わらなかったです。でも、オリジナル曲で自分が主人公となると話が変わってくるので、「imagination」は異例でした。自分が主人公になることにまだ慣れていないので、どう表現すれば良いのかと考えてしまいますね。

※1 https://www.8achi-6ocks.net/fga_002/jp/

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