MISIAとAIの歌にある強大な説得力 多くの人の心を鷲掴みにする名演を残した2組

 二人の2021年の歌唱にフォーカスを当てて話をすると、『紅白歌合戦』への出演も含め、印象的な出来事に恵まれたことがそのクオリティに大きな影響を与えたようにも感じている。MISIAは東京2020オリンピックの開会式で国歌「君が代」を歌う大役を担当したほか、12月にはおよそ3年ぶりとなるアルバム『HELLO LOVE』を発表。同作には今をときめく藤井 風が楽曲提供し、件の『紅白歌合戦』では藤井本人を交えピースフルなステージを展開した「Higher Love」をはじめ著名なアーティストとのコラボレーションも収め、より多様的な表現の追求に挑んでいる。

明日へ(from 平成武道館 LIFE IS GOING ON AND ON Live Ver.)
MISIA - Higher Love

 一方のAIも、三浦大知との共演作「IN THE MIDDLE」のリリースやライブツアーの開催など、デビュー20周年も絡めながら精力的に活動。かねてより意識を向けてきたSDGs関連のトピックでは黒柳徹子らと並んでHAPPY WOMAN賞(女性の力による持続可能な社会づくりに向けた挑戦や活動を行い、今後に期待できる個人に贈られる賞)を獲得し、エンパワーメント推進のアイコンとしての功績をまた一つ重ねた。そして極めつきは、『紅白歌合戦』でも歌われた森山直太朗作詞作曲、斎藤ネコ編曲の「アルデバラン」である。現在放送中の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の主題歌に起用されたプレッシャーから制作は試行錯誤の繰り返しだったようだが、彼女の温かいボーカルスタイルが見事に結実し、聴き手に語りかけるような低音パート、勇壮な雰囲気漂うサビと数多の聴きどころを携える傑作に仕上がった。

AI - 「IN THE MIDDLE feat.三浦大知」 (official video)
AI - 「アルデバラン」 (official video)

 この一年だけでも大小関わらず、様々な事象と深く結びついては歌に力を注いできたMISIAとAI。そこに込められた人ひとりひとりの思いを見つけるたび、きっと彼女たちは自ら歌うことの使命感を高め、決意を新たにしてきたのだろう。2022年も変わらず、心を真っすぐに射抜くきめ細かい美声の発揮と、豊かな表現力のさらなるアップデートに期待している。

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