「home」インタビュー

リュックと添い寝ごはん、新鮮な出会いを重ねた2021年 3人のベストソングとともにメジャーデビュー以降を振り返る

 リュックと添い寝ごはんが、2021年の締めくくりとなる初の冬ソング「home」をリリースした。彼らが追求してきた「温かみ」というテーマがぎゅっと凝縮された、とても優しい曲だ。きっとこれから先、冬が来るたびに、みんなの心に響く曲になっていくだろう。

 そんな「home」にたどり着いた2021年は、リュックと添い寝ごはんにとってどんな年だったのだろうか。2020年12月にアルバム『neo neo』でメジャーデビューを果たし、たくさんの新たな出会いを経験しながら、自分たちの鳴らすべき音楽を見つめ、そのために必要なものを吸収し、それを新たな曲としてアウトプットし続けてきた1年、メンバー3人はどんな気持ちで過ごしてきたのか。激動の日々を振り返りつつ、その中で出会った音楽、そして2022年に向けての抱負までを語ってもらった、1年総まとめインタビューをお届けする。(小川智宏)

「曲に対する捉え方が変わった」(堂免)

ーー2021年ももうすぐ終わりますが、皆さんにとってはどんな年でしたか?

宮澤あかり(以下、宮澤):出会いや新鮮な出来事がすごく多い1年でしたね。2020年はコロナであまり動けなかったんですけど、今年に入ってからわりと動きも増えて、ライブもできるようになったので、総合して楽しかったです。

堂免英敬(以下、堂免):短く感じるけど、長い1年だったなって思います。思い返してみると「もうこれ1年前の出来事なんだ」って昨日のことのように感じる出来事もあれば、「まだ出してからこれぐらいしか経ってないんだ」と感じることもあって。そのなかでも印象に残っているのは、やっぱり「くだらないまま」ですね。初めてタイアップソングとして書き下ろさせてもらった曲ですけど、そのスピード感とか、今までに経験したことないものだったので。いつも、僕たちってわりと長い時間をかけて、1回寝かせたりして曲を作ることが多いんですけど、あの曲はそのままストレートで作ったので、それがすごく新鮮でした。

松本ユウ

ーー松本さんはいかがですか?

松本ユウ(以下、松本):そうですね、僕もやっぱり出会いが一番大きいかなと思います。人との出会いもそうだし、新しい音楽との出会いもそうだし、新しい機会とかライブとの出会いもあったし、新しい自分たちとも出会えたので。「出会い」っていうのはキーワードですね。

ーー「出会い」という言葉で今パッと思いつくことって何ですか?

松本:今パッと思い浮かんだのはChilli Beans.。

宮澤:ああ~。確かに。

松本:ミナホ(『MINAMI WHEEL』)でライブがあって、そのときに初めて会って仲良くなったんですよね。

ーーそうやって交友を広げながら、新しい刺激を受けてきたということですね。そんな2021年をトピックで振り返りたいんですが、まずスタートは2020年12月に出たアルバム『neo neo』でした。

堂免:やっぱりメジャーデビューアルバムということもあって、今までの音楽と、これから先こうやっていこうっていう音楽を合わせた感じで作っていきました。アルバムの曲をライブでやっても、それまでの曲とは明らかにお客さんのノリが違って、その違いもすごく楽しかったですね。こういうノリ方してくれたらいいねっていうノリ方をしてくれて嬉しかったです。

松本:これが僕たちのフォーマットになったなって思います。リリースしたときはすごく新鮮な感じがしていたんですけど、それが徐々に定着して、お客さんにも浸透していって、リュックと添い寝ごはんの根本には、やっぱり「温かみ」みたいなものがあると思うんですけど、そういうものが僕たちの表現したいものなのかなと。

宮澤:うん、私も同じことを考えてました。アルバムを作ってるときは「うちらに今までなかったね」って言いながら作っていたんですけど、今ではちゃんと定着して、私たちの曲っていう感じになった。1年かけてじっくり馴染んでいった感じはありますね。今作っている曲も、それとはまた違う新しさもあるし、これからもどんどん進化できるって思いました。

リュックと添い寝ごはん / グッバイトレイン[Music Video]

ーーそれこそ『青春日記』の頃から比べれば、全てが変わったと言ってもいいと思うんですけど、その変化というのは自然と生まれていったものなんですか。それとも試行錯誤しながらやってきたなっていう感じ?

宮澤:聴いている曲が増えたのもありますし、新しい曲を作るごとに「どういうイメージで作ってる?」みたいに言われるので、それに合った曲を聴くようになったというか。そういう意味では試行錯誤だったのかなと思います。

堂免:あとは、曲に対する捉え方が変わりましたね。今までは自分で弾いていて気持ちいいフレーズがいいだろうなと思ってたんですけど、今はベースをつけ始める段階から、何かに例えるようになったんですよ。「この曲は〇〇が弾いている感じにしよう」、「散歩しているイメージ」とか「一定のリズムで変わらない機械」みたいな。ベースをベース以外のことで考えられるようになりました。

リュックと添い寝ごはん / 青春日記 [Music Video]

ーーちなみに新曲「home」に関してもそういう部分はありますか。

堂免:「home」は、ベースだけど気持ち的にはボーカルだぜみたいな、もう歌うように弾こうと思って。あとは帰り道を歩いてるイメージだったんで、結構一定のテンポで、だけどちょっとメロディアスな感じでできたらいいなと思って作りました。

ーー非常に高度なことをやってますよね。松本さんの中にあるイメージを、より共有しやすくなっているとも言えるのでしょうか。

松本:そうですね。昨日もプリプロに入ったんですけど、「こんな感じ」っていうのを3つか4つくらいバーッて言ったら、2人とも「ははあ」みたいなリアクションだったんで。理解してくれてるんだなって。

宮澤:たまにわからないんですけどね、「難しいこと言ってるな」って(笑)。でも「home」はわかりやすかった。

「変わらないヒデさんもいいし、変わっていくユウくんもいい」(宮澤)

ーー3人とも、聴く音楽も結構変わったんですか。

宮澤:そうですね。私だったら、さっきも言っていたChilli Beans.に出会ってからは結構毎日レベルで聴いていて。仲良くなれたっていうのもありますけど、それを抜きにしても、いいよね?

堂免:いい。僕が今年一番影響されたのはVulfpeckですね。今年の頭にバンド全員で大ハマりして、コピーしてみようと言ってたんです。めちゃくちゃファンクじゃないですか。その引き出しが今までの自分の中になかったものだったので、その後のベースフレーズ作りにすごく影響を受けたなって思います。

ーー今の話は1個謎が解けた感じがする。Vulfpeckのモダンなファンクネスみたいなものは、今のリュックと添い寝ごはんに出ている気がしますね。ファンキーなんだけど都会的で、汗臭くないみたいな。

堂免:ああ……。

松本:ガチ照れするのやめてもらっていい?

堂免:ありがとうございます(笑)。なんかそういう面でも成長できたなって思ってます。

堂免英敬

ーー松本さんは?

松本:僕はシティポップにどハマりしてる感じですね。山下達郎さんとか寺尾聰さんとか。あの世代の音楽にハマっています。やっぱり都会の風景が浮かぶのがすごいなと思うんです。高速道路とか。そこに魅力を感じていますね。でも、今2人が挙げていた音楽も全部好きです。

宮澤:うん。全員そうだよね。

リュックと添い寝ごはん /東京少女 [Music Video]

ーー11月には『東京少女』をリリースしてワンマンツアーもやりました。その表題曲は、以前の曲を作り直して、今のリュックと添い寝ごはんとして出した曲ですよね。

堂免:あの曲は当時からものすごくいいものができたなと思っていて。いつ出すのかって自分たちでも考えていた曲なんです。でも期間が空いて、もう1回見つめ直して、今の自分たちの視点を入れたことで、もっと洗練されたかなという印象があります。当時は、高校最後の軽音の大会前に作った曲だったので、なんか“終わり感”があるベースを作っていたんですよね。どちらかというと集大成みたいな気分で作っていたというか。

宮澤:それにフレーズを作る上でも、大会からの制限みたいなものが結構あったんですよ。だから今の方が断然いいなって思うし、高校生のときに作ったフレーズのよさも相まって、大好きな曲になりました。懐かしいと思いつつ「私はこんなこともできるようになったんだ」と思えて。歌詞もだいぶ変わったし、ちょっと大人になったなって思います。私、2番Aメロの歌詞が好きなんです。ここは新しくできた部分で、〈このままでも良いと言おう〉っていう「home」とも違う温かさがあって。(松本に向けて)いい歌詞を書きましたね!

ーーお母さんみたいだ(笑)。

松本:なんか変な感じ。きょうだいに褒められてるみたい(笑)。

宮澤あかり

ーーきょうだいっていうのはまさにその通りで、高校生のときから今まで、すごく変化の大きな時期を3人で一緒に過ごしてきたわけじゃないですか。お互いどういうふうに変わったと思いますか?

松本:宮澤は本当に変わらないんですけど、自分の中にある芯が徐々に表に出てきている気がします。ヒデ(堂免)も変わらない。とりあえず顔がびっくりするぐらい変わらない(笑)。

堂免:生後3カ月から変わってないから(笑)。

松本:でも、根底の尖ってる部分はやっぱりまだちゃんとあるし、すごくいいことだなって思う。そこは変わらないでほしい。

ーーどうですか、堂免さん。そう言われて。

堂免:なんか複雑ですね(笑)。全然、尖っているつもりはないんですけどね。ユウ(松本)はすごくボーカリストっぽくなってきたなと思います。高校のときは気を遣ってるなっていう感じだったんですけど、今はもちろん気も遣いつつ、言いたいことを言うようになってくれて。なんか、今まで以上に向き合えるようになった感じがします。宮さんはあまり変わらない(笑)。自分が通ってるなっていう感じがしますね。

ーー2人ともそこは同じ意見ですけど、宮澤さん自身ではどうですか?

宮澤:何が芯だかちょっとわからない。でもそう言ってくれてるってことは、あるんでしょう(笑)。

ーーそんな宮澤さんはメンバーに対してはどう思うんですか?

宮澤:まだ2人とも子供らしさがあるなと。

堂免:わ、お母さんだ、今日(笑)。

松本:なんか悔しい。

宮澤:なんか、『ポケモン』の話ばっかりなんですよ、この人(堂免)。曲を制作してるときに『ポケモン』(のゲーム)の新作が出たんですけど、この制作が終わるまでは買わないって言ってて。ゲームをご褒美として考えているところがある。いいところなんですけど(笑)。ユウくんは髪型がたくさん変わりました(笑)。いいことだと思います。変わらないヒデさんもいいし、変わっていくユウくんもいいし、バランスが取れていると思います。

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