yonawoが遂げた、演奏や楽曲の飛躍的な進歩 最初で最後のSTUDIO COAST公演を観て

野元喬文

 ここで一転してアップテンポなファンクチューンに。亀田誠治をプロデューサーに迎えて制作した「闇燦々」は、寺尾聡や原田真二を彷彿とさせるような“昭和感”漂う哀愁のメロディを、ディアンジェロやエリカ・バドゥなどネオソウルを通過したセンスでアレンジした、yonawoにしか作り得ない楽曲である。続く「トキメキ」は、昨年6月に配信限定リリースされたシングル。バックビートを強調したタイトなリズム、深いビブラートのかかったドリーミーなエレピ、ジャジーかつブルージーなギターが、まばゆい金色の照明の中で鮮やかなコントラストを描き出していた。

 「楽しんでもらってますでしょうか。こんな感じでやっていくので、ユラユラ楽しんでいってください。よろしくお願いします」と荒谷。レイドバックしたリズムが印象的な「good job」を経て「rendez-vous」では、田中がシンセベースを駆使してスペイシーなサウンドスケープを展開していき、さらに曲のエンディングでは斉藤のディストーションギターが唸りを上げてこの日のハイライトを迎えた。

 荒谷がアコギを抱えた「The Buzz Cafe」は、ドラムにディレイを深くかけダブっぽい処理を施すなど、Young Disciplesや1990年代のポール・ウェラーあたりを彷彿とさせる、ソウルフルかつサイケデリックなアプローチが印象的。続く「26時」は、ディアンジェロの「Brown Sugar」と思しきフレーズを途中で挟むなど「遊び心」を感じさせる瞬間も。さらに、地元・福岡に彼らが新設したプライベートスタジオHaruyoshiでレコーディングしたという「はっぴいめりいくりすます」を披露。一足早いクリスマス気分をオーディエンスと分かち合った。

 ライブ後半は、「矜羯羅がる」や「ijo」など初期代表曲で盛り上げる。そして本編ラストは「蒲公英」でしっとりと締めくくり、アンコールでは冨田恵一がプロデュースで参加した「哀してる」と、アルバム『遙かいま』でもラストを飾る壮大な楽曲「美しい人」を披露した。とりわけ「哀してる」は、呉田軽穂&松本隆の「Woman "Wの悲劇"より」など往年のニューミュージックを彷彿とさせ、yonawoの新境地でありつつメロディメーカーとしての真価を発揮した、現時点での最高傑作といえよう。

 デビュー時と比べて演奏や楽曲の飛躍的な進歩とは裏腹に、相変わらず不慣れでぎこちないMCがまた愛おしく、そんなyonawoの「アンバランスな魅力」が最大限に発揮されたワンマンライブだった。

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