VaundyからWurtS、PEOPLE 1まで……マーケティング巧みな新鋭ミュージシャンたち “ブレイクの道”に変化も

Vaundyが初期から見せていたマーケティングの巧みさ

 最後に、こうしたシーンの火付け役の1人と言えるであろうVaundyについて触れたい。SNSを巧みに使いながら全てをセルフプロデュースで行い、ドラマ『ボクの殺意が恋をした』(日本テレビ系)主題歌「花占い」を始め、様々なCMやドラマの楽曲を担当。アメリカのシンガーソングライター、Lauvのグローバルリミックスアルバム『~how i’m feeling~(the extras)』にも参加するなど、国内外で活躍している。2019年6月にYouTubeに楽曲「pain」を初投稿したことを皮切りに、「東京フラッシュ」や「不可幸力」がSNSを中心に話題となり、今年に入り多くのチャートで1位を獲得。YouTubeとサブスクリプションのトータル再生数が10億回を突破するなど、令和の音楽シーンの象徴的な存在として注目を集めている。

 Vaundyのマーケティング能力や分析能力の高さが表れているのが、代表曲である「東京フラッシュ」だろう。J-WAVEを始め多くのラジオでパワープレイされた同曲は、そもそも「J-WAVEに流す曲」というコンセプトで制作された。「音楽活動をするために戦略的に準備をしてきた」とも言う。(※3)。現在のVaundyに対する評価は、準備のためのマーケティングがいかに的確だったかを如実に物語っている。

東京フラッシュ

 このようなマーケティング型のアーティストが増えている理由として、SNSの普及によってユーザーの反応をリアルタイムで、直接的に受け取ることができるようになったことは大きい。これまでレコード会社や事務所などの組織に属していなければ実施できなかったようなアンケート調査も、個人レベルで容易に叶うようになった。また、こういったアーティストの特徴として、1つのアイコンを掲げていながら、マーケティングによって内容をアレンジすることが挙げられる。実際に今回紹介したアーティストの音楽性は実に幅広く、ただユーザーに寄り添うだけではなく、時にはいい意味で裏切ってもくれる。

 メジャーデビュー前からSNSを巧みに使いこなし、誰よりも、自分を支持するユーザーのことを知り尽くしている彼ら。ひと昔のようにライブハウスから日本武道館を目指す道とは違う、使い方ひとつで一足飛びに海外進出も果たせてしまうような夢が、“マーケティング”の先には広がっている。

(※1)
https://realsound.jp/tech/2021/09/post-863995.html
(※2)
https://twitter.com/wurts2021/status/1402488199516090368?s=20
(※3)
https://www.gqjapan.jp/culture/article/20210109-vaundy

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