ポルカドットスティングレイ・雫に聞く「コロナがマーケティング活動に与えた影響と、熱狂的なゲーム愛」

ポルカ雫が語る“ゲーム愛”

 スマートフォンで遊べる対戦型オンラインTCG(Trading Card Game)『Shadowverse』のプロリーグ『RAGE Shadowverse  Pro League 21-22』の公式テーマソング「ダイバー」をポルカドットスティングレイが担当した。

 ポルカドットスティングレイの雫といえば、もともとはゲーム会社のディレクターとしても活躍し、その知識をバンドのマーケティングにも落としこむ戦略的クリエイターだ。自分が作りたいのは「みんなに求められている音楽」と断言し、徹底したクライアント至上主義を貫く彼女。

 コロナ禍でのマーケティングへの影響や熱狂的なゲーム愛について、思いのままに語ってもらった。(坂井彩花)

一人用のゲームを一生やってることが多い

――ポルカドットスティングレイは、徹底的なマーケティング戦略を強みとしているバンドかと思うのですが、コロナ前後でマーケティングの仕方は変わりましたか。

雫:私がしているのはSNSを中心としたオンラインマーケティングなので、やっていることは何も変わっていません。売れている曲や歌詞が伝えていることの性質も変化したようには感じないので、リサーチする項目なども特に変える必要はないと思っています。

――“売れている曲や歌詞の性質”といいますと。

雫:「恋愛ソングを書いておけばいい」みないなところはありますよね。ほとんどの人間が恋愛をしたり結婚をしたりするから、ターゲットが広いのは当然。「自分のことだ」となってくれる人が多いので、書くのは苦手ですが定期的に恋愛ソングは書くようにしています。コロナ禍に突入してからは、“会いにいきたい”や“声が聴きたい”を歌詞にいれることが増えました。

――雫さんはTwitterで取ったアンケートを参考に、一番多かった意見をサビ、次に多かった意見をフックにして作詞しているそうですね。

雫:みんなの意見を手作業で書き出して、資料を作るようにしていて。“恋人に言われて嬉しいこと”を訊いたときは、票をざっくりまとめて「みんなこれを言われたいんだな。じゃあ、サビ!」みたいにしました。こっちは完全に仕事で無の状態だから「みんな幸せそうだなぁ…」と時に辛い思いをしながら臨んでいます。

――歌詞の傾向分析だけにとどまらず、流行の曲調やサウンドもデータ化するというお話を拝見しましたが、現在も行っているんですか。

雫:最近はタイアップ曲が多く、クライアントさんから「こういう曲がほしい」と要望をいただくので、自らデータを集めることは減りましたね。流行りの曲を分析していたのは、無の状態から制作をすることができない自分にリファレンスを用意するためだったので。唐突に「売れそうな曲を作って」と求められることがあまりないから、バチバチに分析をする必要がないんです。

――マーケティングで集めたデータを元に、雫さんのなかには「こういう曲にしたい」というイメージが具体的にあるわけじゃないですか。それはメンバーに、どうやって共有しているんですか。

雫:パッションですね(笑)。私が歌メロを考えて「これにオケをつけてください」とメンバーに渡す時点で、すでにイメージやBPM、曲のノリは決まってる。わりと正解がある状態で共有しつつ、ちゃんとわかってほしいところはリファレンスになる曲をめちゃくちゃ提示します。「歌は私がやる、楽器は一人ひとりでやってくれ!」って体制なので、各フレーズに関してはメンバーに頼りきりですね。なんなら、私がライブで弾くバッキングギターもハルシが録ってます。

 「雫さんのパートこれね!」なんて言いつつ、歌いながら弾けないようなフレーズを作るから、本番で私が弾けないことも……。最近のライブではギターの音数を減らして、ふんわりやっています。結局のところ、歌のほうが大事なので。

――できることに注力する雫さんは、まさしく“必殺仕事人”って感じですね。

雫:仕事以外、何もできないんですよ。特に家事はマジでできなくて、レンジで温めるだけお湯を注ぐだけでも、なぜか失敗をしてミラクルを起こすレベル。今は仕事という得意なことを見つけられてよかったです。

――大好きなゲームは“得意なこと”ではないんですか。

雫:やるのは好きだし作るのも得意だけど、eスポーツの選手みたいに競技性をもって技術を突き詰めるのは苦手。オンラインで対戦するタイプのゲームをやりこむことはあまりなくて、一人用のゲームを一生やってることが多いかな。

――それは、何か理由があるんですか。

雫:普段のコミュニケーションに難ありなのが、オンラインゲームでも発揮されてしまうというか…。「この画面の向こうにいるのは人じゃん!?」となってしまって。知らない人とのコミュニケーションが発生するし、自分という存在が相手にしっかり認識されるじゃないですか。自分がやると緊張してしまうから、「マジ無理!」ってなりますね。うちのギター(エジマハルシ)とベース(ウエムラユウキ)はシャドバ(『Shadowverse』)のヘビーユーザーで上手いから、羨ましくてイライラしますもん(笑)。時にはボイスチャットをオンにしてゲームしているときもあるらしく、「知らねえ人と会話してんの…?」って思います。

 

――ちなみに重課金していたのは、何のゲームですか?

雫:リアルのフレンドとやっていた『ドラゴンクエストX』です。大学生のときに始めたから、かれこれ8年くらいやってます。学生の頃は金がなかったけど時間はあったので、1日に16時間とかプレイしてました。社会人になって金と時間が逆転してからは、いくら課金したかわからないですね。基本的に課金制のゲームって、時間がない人がお金で解決するものだから。やっぱり“金は力”ですよ。

――“金は力”って勇ましいですね。

雫:実は「マネーパワーがあれば、かつて諦めたゲームに手を出せるのでは⁉」という発想になり、『ファイナルファンタジーXIV』を最近になって始めたんですよ。お金は、すごい親切。ゲームを開発・運営する人の気持ちもわかるから、いいゲームには積極的にお金を払いたいですね。

――それだけゲーム愛が強いと『RAGE  Shadowverse  Pro League 21-22』公式テーマソングの話が来たときの喜びもひとしおだったんじゃないですか。

雫:すごく嬉しかったです! メンバーもゲーマーだからすごく盛り上がって、各々が自分のフレーズを考えるときに気合が入りすぎちゃったくらい。ハルシなんてギターのパートを3本も作ってきて、うるさくて1つ削りましたからね。そしたら、自分の弾けるパートがなくなってしまい、やむを得ずハンドマイクになってしまったんですけど(笑)。

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