『story of Suite #19』インタビュー
AA= 上田剛士、素通りできない現実を描写した異色の1枚 「特殊な時間にいることを形にしておきたかった」
「次に繋がる何かには絶対影響する」
ーーそれこそ最近では、世の中的には衆議院選挙などもありました。コロナ禍のことだけではなくて、政治的な動きなどについても、この状況下で気になり始めた人、これまで気にしていなかったことに気付いてしまった人というのも多いはずだと思うんですね。この歌詞も「今の世の中を信じていいと思えてる?」という問い掛けになるような言葉だと思うんです。
上田:単純に自分が思ってることを言ってるだけなんです。そういう意味では、それこそ僕がよく言っていた政権のことについてもそうだし。実際それを言うとわりと「ですよね!」と言って、反対側の政党とかを応援してる立場の人たちから「そうだそうだ!」って言ってもらえることもあるんだけど、自分としては「いや、俺は別にそっち側も全然信用してないよ」という感じで(笑)。そういうことじゃないし、結局は俺、政治家なんか信用してないんで。別にどちらか一方だけではなく、どっちも信用してないよ、というのがある。ただ、権力の中心に向かっては、より言う必要があるというだけで、逆の側にもっと問題がある場合もあると思うし、そこはいわゆる党派的な人とは俺はちょっとスタンスが違うかもしれない。
ーーええ。ただ、実際に言っているのは「流されちゃいけないよ」ということなのではないかとも思えました。
上田:うん。無論、投票とかには行くけどね。ただ、自分が投票した先の人を全面的に信じているかといえばそういうことじゃないよ、ということで。
ーー今だからこそ形になったもの、形にすべきものだったんだなと思えます。
上田:今は確かに具体的に自分に直結することとして問題が見えやすいですよね。ちょっと前だと、例えば貧困であるとか、分断であるとか、そういったものが作品の中に世の中的なテーマとしていろいろあった。そこはワードとしてはすごくわかりやすいんだけど、体感でいうとちょっと他人事みたいになるじゃないですか。それに対して今回のコロナ禍というのは世界中でみんなが同じように体感して、日本でも同じように体験してることだから共有・共感もしやすいし、共感できない部分についても見えやすいのかもしれない。あえて物語的にしているのは、そういう部分が自分の中にあるからかもしれないですね。
ーーそして「Chapter 5_CLOSED WORLD ORDER」と「Chapter 6_BORDER」が続くところで、〈ORDER(序列・秩序)〉と〈BORDER(境界線)〉という言葉が韻を踏むのも面白いなと思いました。ここでの〈BORDER〉は何を隔てるものなんでしょうか?
上田:やっぱり人間同士の葛藤ですよね。その部分がいちばん苦しいところだし、血なまぐさいところでもある。ぶつかるところだし、超えなきゃいけないところでもある。そこで見えてくることってやっぱり、いろんな社会的状況を含めたところでの人同士の相反してしまう部分であったりとか、孤独であったりとか、逆に繋がりであったりとか。そういうものだと思うので。ここで言ってる〈BORDER〉というのはそういう部分ですかね。国境みたいなボーダーではなくて、もっと内面的なものというか。
ーーそういう意味では、目に飛び込んでくる情景をそのまま書くことにも近かったわけですね。ただ、それくらい当たり前に見える現実を共有できているはずだからこそ、受け手側にはいっそう共鳴できるという人もいるはずだし、その逆の反応があってもいい。
上田:そうですね。もしもそういうところで共鳴してもらえるものがあったならば嬉しいな、という感じはあるけど。でも作ってる時は全然考えてなかったですね、それは。ただ今ある自分の感情をどう表現するか、言葉にどう乗せるかということだけで。音楽の向こう側にあるそれを聴いている人の姿というのは、本当にあまり考えていなかった。
ーー今回の場合は音源が完成した時点で完結してしまっている感じですか?
上田:完結かどうかもわからないですね。とりあえず今、形にできたみたいな感じだし、そういう意味では、これが次々と続いていくような世界なのか、これで終わりになるのかもわからない。自分の時代の捉え方ひとつだとも思う。
ーーつまりこの先の時間と物事の流れによっては、このイレギュラーであるはずの作品を起点とする新たな流れができてしまう可能性もある、ということですか?
上田:わからないけど、そうかもしれないですね。そういう気分になったらそうなるだろうし。願わくはこの1枚で終わるといいんですけどね、世界の状況としては。ただ、自分の中では曲を作るという意味では面白い体験だったなとは思います。ライブを意識するか否かというのも含めて今までのセオリー通りじゃない気持ちで作ったこと自体が面白かったし、誤解を恐れずに言えば楽しかった。これはこれで、この体験がなければできなかったことだから、次に繋がるものの何かには絶対影響すると思うんです。
ーー別の流れにあるものではあっても、今後に影響がないはずがないと思えるほど貴重な体験だった、と。
上田:ええ。世界が元に戻った時も、この体験がないまま作った作品とそうでないものとは絶対に違うはずだと思っています。
ーーそして、この先の具体的なプランというのは?
上田:いや、まったく。特にAA=としては全然ないですね。
ーーあえてひとつ求めたいのは、やはりこの作品に伴うライブなんです。それを前提にしていないからこそ生まれたものではあれ、こうして実際に聴いてしまうとどうしても「この世界観をライブで再現するとどうなるんだろう?」という興味と好奇心が湧いてきます。
上田:実は、ライブはずっとやろうとはしてきたんです、この2年間も。ただ、状況を見ながらキャンセルというか「やっぱり、まだできないよね」と判断せざるを得ない状況が続いて。けど、次にやれるチャンスは確保してありますよ。
ーーただ、完全に昨日と同じ未来ではないわけで、おそらくこれまでとは違った見せ方になってくると。
上田:そうなると思いますね。しかも、それをやることで得たものがまた次に繋がっていくことになる可能性もある。やっぱりそこは、今を生きているわけなんで。今、自分のやれるものというか、やりたいものというのは、常に何らかの形にはしていきたいと思うんです。
※1:https://realsound.jp/2021/11/post-902962.html
※2:https://twitter.com/_aaequal/status/1456222581128761344?s=20
■リリース情報
AA=『story of Suite #19』
※VICTOR ONLINE STORE限定販売商品
予約はこちら
2021年12月1日(水)発送予定
CD+スペシャルフリースマフラー/¥6,600(税込)
全9曲収録(1CD)
2021年11月1日~予約開始/12月1日より順次発送開始予定
<収録曲>
Chapter 1_冬の到来
Chapter 2_閉ざされた扉、その理
Chapter 3_美しい世界
Chapter 4_過ぎていく時は君の物語と似ている
Chapter 5_CLOSED WORLD ORDER
Chapter 6_BORDER
Chapter 7_ある日の告白、広がる銀世界 / COLD ARMS
Chapter 8_WHY DO YOU KNOW MY NAME? ~全てを知っている君は何も知らない~
Chapter 9_SPRING HAS COME、取っ手のない扉が見る夢、またはその逆の世界
AA= 公式サイト:https://aaequal.com/