アユニ・Dが開拓する多彩な表現形態 PEDROと青虫、両面から見える音楽的ルーツと等身大の姿

 もちろん、そこにはアユニ・D自身のルーツも関係している。2018年に筆者が行ったインタビューでは、北海道で暮らしていた中学生時代まで遡る音楽のルーツとして「ボカロが元々好きで、特にバンドサウンド系のボカロの音楽が好きで、いろいろ聴いていて。ヒトリエのボーカルのwowakaさんがそういう曲を作ってたりしたんで」(※2)と語っている。

 こういうルーツを持つアユニ・Dだからこそ、「歌い手」というカルチャーにも親和性があったと言えるだろう。そして『103号』収録曲「ケーキみたいだ」のドラマーとして、ヒトリエのゆーまおが参加しているということにも、ある種の必然的な結びつきを感じる。

 『103号』に収録されているのは「ケーキみたいだ」「ゆぶね」「記憶の部屋」「化粧と、」の4曲。全曲のソングライティングとプロデュースをくじらが担当しているのだが、全ての楽曲に“生活”というモチーフが共通しているのも興味深い。

〈手洗ったら話聞くから、タオルそこにあるから〉(「ケーキみたいだ」)

〈お湯に溶けた花の色/膝が伸ばせないゆぶねで〉(「ゆぶね」)

〈君が一杯にしていった灰皿は/まだ換気扇の下で〉(「記憶の部屋」)

〈ひねる蛇口をふと、ずらしました。〉(「化粧と、」)

 舞台はどの曲もマンションやアパートの一室。一人暮らしのキッチンやバスルームなどの情景描写が、チル~ベッドルームポップな曲調とあいまって、“半径の狭い”パーソナルな日常や恋愛の叙情に結びついている。そこもいい。

PEDRO / 魔法 [後日改めて伺います Live at Zepp Tokyo]

 一方、PEDROの新作『後日改めて伺います』にも日常をイメージさせる歌詞の描写が見られる。〈目覚まし時計かけずに朝迎えよう〉と歌う「人」。〈明るいね 窓の外/布団に入ろうか〉と歌う「魔法」。故郷の北海道と家族について綴った「雪の街」。アユニ・Dの書いた楽曲は、曲調としても1stアルバムや2ndアルバムの刺々しいパンクとは違った柔らかさを持ち、歌詞の言葉にも東京で暮らす等身大の姿が伺える。ソングライターとしてのアユニ・Dの才能が花開きつつあるのを感じる。

 よくよく考えてみれば、PEDROはロックバンドで、青虫は歌い手。BiSHも含め、それぞれにカルチャーが違う。でも、アユニ・Dという一人の存在を中心に、いろんな新しい結びつきが生まれているわけである。そういうところも含めて、この先が楽しみだ。

※1:https://realsound.jp/2021/11/post-904584.html
※2:https://realsound.jp/2018/10/post-266357.html

青虫『103号』

■商品詳細
青虫 Debut EP『103号』
2021年11月3日(水)リリース
・初回生産限定盤(UNIVERSAL MUSIC STORE限定商品):¥4,500税抜
2CD+PhotoBook+特典(青虫シャンプー/500ml)
・通常盤:¥1,500税抜

<DISC1>
01 ケーキみたいだ
02 ゆぶね
03 記憶の部屋
04 化粧と、
<DISC2>
01 初恋

青虫オフィシャルHP

■リリース情報
PEDRO 3rd AL『後日改めて伺います』
2021年11月17日(水)リリース
初回盤(AL+Blu-ray+2LIVE CD+PHOTOBOOK/BOX仕様)¥11,000税込
映像付通常盤(AL+DVD)¥6,600税込
通常盤(CD ONLY)¥3,300税込
<収録内容>
CD1 [後日改めて伺います]
01 人
02 魔法
03 吸って、吐いて
04 ぶきっちょ
05 死ぬ時も笑ってたいのよ
06 安眠
07 いっそ僕の知らない世界の道端でのたれ死んでください
08 万々歳
09 おバカね
10 雪の街

CD2~3 [LIVE CD]
2021.09.07 『SENTIMENTAL POOLSIDE TOUR』Zepp DiverCity
東京
愛してるベイベー
猫背矯正中
Dickins
GALILEO
無問題
日常
おちこぼれブルース
EDGE OF NINETEEN
SKYFISH GIRL
pistol in my hand
乾杯

浪漫
空っぽ人間
生活革命
自律神経出張中
感傷謳歌
-ENCORE-
うた
NIGHT NIGHT

PEDRO オフィシャルHP

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