ソロアルバム『In My World』インタビュー
山本真央樹、作品にかける情熱 ドラマー、クリエイターとしての活動からソロアルバムに至るまでの軌跡を語る
自分がリスナーだったら聴きたいアルバムを作れた
ーー今のDEZOLVEが、初めて組んだバンドですか?
山本:初めてですね。バンドって結婚相手を選ぶぐらい大事だと思ってて。本当にうまくて、本当に気が合う人とやりたいなと思っていたんです。そうしたら、21歳の時に、DEZOLVEのメンバーに出会って、「この人たちとならできる!」と思ったんです。
ーーでも、バンドを組みたいという気持ちがあったのは、意外でした。
山本:バンドを組みたいではなく、フュージョンの音楽をやれる場がほしい、でしたね。セッションではなく、自分たちのオリジナル曲があるインストバンドを組みたいっていう。
ーーライブをやることの興味や、情熱というのは強かった? それとも弱かったですか?
山本:弱いです。ないに等しいタイプです僕は(笑)。どちらかというと、作品を残す方に命をかけたいタイプですね。
ーー(笑)。なるほど。
山本:だから正直、無観客でも有観客でも、あまり自分の中の考えは変わらない気もして。スタジオにいる方が、性に合ってるんですよね。だからバンドで今後一切ライブをやらないでくださいって言われても了承しちゃいそうです(笑)。ただ逆にバンドでアルバムを作らずにライブだけやってください、って言われたら厳しいかと思います(笑)。
ーー外注で受けた作品でなく、自分の作品を残す場としてのバンドだ、と。
山本:言ってしまえば、そういうことですね。あとは、フュージョンを絶やさないための作品作り、っていう感じですかね。
ーー絶えそうになっていると感じる?
山本:本当にまったくないことはないんですけど、ヒットは全然していない。80年代~90年代のブームを知っちゃうと、絶えているようにしか見えないので。もっとやらなきゃ、と思います。
ーーでは最後の軸、このたびアルバムをリリースしたソロについて。
山本:去年、コロナ禍で、DEZOLVEの『Frontiers』っていう5枚目のアルバムのリリースツアーができなくなっちゃったんです。だから、ニューアルバムが作れなくなっちゃったんですね。5枚目の曲を生で演奏せずに、6枚目のツアーが始まっちゃうと、5枚目の曲がかわいそうになっちゃうんです。メンバーと「ツアーができるまで保留にしとこうか」という話をしたりしてました。もともと、ソロアルバムを20代の間に作りたい、っていう欲はあったので、クラウドファンディングをやってみたら、思った以上の反響を頂きまして。そこで作ろうっていう気持ちになったんです。DEZOLVEの6枚目で使おうと思っていた脳味噌を、ソロアルバムに使ったっていう感じです。
ーーこのソロにはメンバーも参加していますよね。全部自分の曲だという以外にも、ソロだと大きく違うところはありました?
山本:言ってしまえば、そんなに作業の違いはないんです。曲も、普段からDEZOLVEのために書いているというよりも、自分のやりたい曲を書くのがDEZOLVEなので。だから、8曲目まではDEZOLVEと変わらなくて、9曲目の「In My World」というオーケストラの曲だけは、自分のソロアルバムでしか出せない分数なのでーー。
ーーそうですね。22分55秒。
山本:DEZOLVEではできないと思っていたから。ソロアルバムでやれてよかったな、っていう感じです。
ーー確かに「In My World」は強烈ですね。
山本:僕のやりたいことを詰め込んだ感じですね。こんな面もあるんだよ、という。クラシックもやっている人なんだ、と知ってもらう場がなかったので。
ーーアルバムを作りあげてみていかがでした? かかった労力とか、楽しさとか。
山本:まず労力に関しては、めちゃくちゃ大変でしたね。全曲自分で作っているので、全曲分アレンジして、全曲分譜面を書いて、全員のミュージシャンと連絡をとってスケジュールを押さえて、全員に資料を渡して、演奏してもらって、全員分の演奏したデータをまとめて……。15人くらいと連絡を取らなきゃいけないし、スタジオの手配とかも、全部自分でやらなきゃいけなかったんで。
ーーじゃあ、ディレクターとかのスタッフはいなかったんですね。
山本:はい、全部自分でやったので。流通とか宣伝に関しては、キングレコードさんに手伝っていただいているんですけど。
ーー完パケ納品ですね。
山本:そうなんです。「この日までにマスターのデータを納めてください」っていう。だから、大変ではありましたけど、それをはるかに超える……自分のやりたい音楽、自分がリスナーだったら聴きたいアルバムを作れたので。それはすごい幸せでしたね。
ーーじゃあ聴き直して「ここ、もっとこうすればよかった」というような悔いはない?
山本:ないですね。マスタリングの日って、もう手直しできないじゃないですか? でもマスタリングの日に、レコーディングのエンジニアさんも呼んで、すぐ手直しできるようにパソコンを用意して。「あ、ここ、ちょっと違う」と思ったらすぐ直す、っていうぐらい、ギリギリまで詰めて作ったので、本当に、なんの悔いもない作品にできましたね。
ーーポップスを書く作家として、ルーツになっている好きな音楽は、どのあたりですか?
山本:僕は、渋谷系の音楽ですかね。かわいい音楽が好きなので、ピチカート・ファイヴとかすごく好きですね。あと、ROUND TABLEとか、Cymbalsとか。影響を受けた楽曲は、よく書いていますね。
ーー逆に苦手な音楽?
山本:鍵盤がない楽曲は、あんまり聴かないし、書くのも難しいですね。パワーコードで押す曲は書けないです。テンションコードを入れがちなので。
ーーパンクの血は入ってないんですね。
山本:ないですね。
ーーハードロック、ヘヴィメタルの血も。
山本:その血は、親子としては入っていそうですけど(笑)、音楽ルーツとしてはあまり入っていない気がします。父親の音楽で例えても、鍵盤が入っているタイプの方がよりは好きなんですよ。厚見玲衣さんがいる時代の音楽はちっちゃい頃けっこう好きで聴いてたみたいなんです。今も、好きなアーティストで、鍵盤がいないバンドはあまりないと思います。
ーー最後に、日本の音楽の好きな部分を、もうちょっと詳しくうかがえれば。
山本:音楽的に言うと、歌心のありかたがすごい好きなんですね。コード進行だったり、アレンジ力も。さっきも言ったとおり、ライブと作品で言うと、僕は作品を優先しちゃうので。作品としては、かっちり精密に作られている音楽の方が好き。日本の方が、そういう音楽が多い気がします。「みんなで一発録りでやろうぜ」みたいな感じよりかは、「こういう音楽をリスナーに聴かせたいから作る」っていう心を感じるのが、日本の音楽だと思います。
■リリース情報
『In My World』
発売:2021年8月25日(水)
価格:¥3,300(税込)
山本真央樹オフィシャルサイト
http://maoki-yamamoto.com/
山本真央樹キングレコードオフィシャルサイト
https://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=46160