『キャンディーレーサー』インタビュー

きゃりーぱみゅぱみゅ、10周年で見せる音楽的アップデート 80~90'sサウンドが引き出す新しい魅力

 今年デビュー10周年を迎えた、きゃりーぱみゅぱみゅ。3年ぶりのアルバム『キャンディーレーサー』は冒頭からダンサブルなテクノ感溢れる意欲作だ。プロデュースはおなじみの中田ヤスタカ。作品が進むにつれ、きゃりーの成長を感じさせるオトナめいた歌詞が解き放つ情緒を感じる言葉の魅力。そして、センチメンタルかつキュートでカワイイ、“原点回避”しながらも螺旋階段上に“らしさ”を磨き上げ、オリジナリティー満載の“きゃりーぱみゅぱみゅ”ワールドをアップデート。そう、まるでテーマパークに遊びに行ったかのような特異な体験ができる1枚なのだ。(ふくりゅう)

当時は、奇抜なことやるな、大丈夫かな、なんて思いました

きゃりーぱみゅぱみゅ

ーー『キャンディーレーサー』のサウンド感は、90年代テクノなテイストを感じる音使いであったり、ジャンル感があります。今、2〜3周して海外ではハイパーポップと言われてますけど、グローバルでも面白がられるアッパーなサウンドセンスですよね。

きゃりーぱみゅぱみゅ(以下、きゃりー):そうですね。中田さんと「ひさしぶりのアルバムでどんなことやりたい?」って話になったときに「雰囲気ガラッと変えたい」という話を自分からしたんです。それが、2、3曲目のダンスチューンで。あと、コロナ禍になって音楽の作り手側の意見やリスナーの想いも変わってきていると思うんです。中田さん自身もそれを感じていて。わたしも、これまではライブが始まったらお客さんを盛り上げなきゃいけないなとか、盛り上がっていないと不安になったりしていたんです。でも、今はファンの方がライブで声を出せなかったり、これまでのように大きく盛り上がれないじゃないですか? なので、10曲目の「夏色フラワー」のようなじっくり聴かせにいく曲もあったり、わたしのなかでは新しい挑戦でした。

ーージャケット写真やアーティスト写真、アートワークなど、デビュー当時からのスタッフでセッションをされたと伺いました。 

きゃりー:きゃりーぱみゅぱみゅのクリエイティブ面の基礎は、デビュー当時のスタッフさんのおかげで出来上がったものだと思っていて。私は高校を卒業した18歳の時に初めてスタジオに入って、アーティストのきゃりーぱみゅぱみゅとしてメイクをしていただいたんです。その時にヘアメイクの小西神士さんに口が裂けたメイクをされたんですよ(笑)。

ーー(笑)。

きゃりー:当時は、奇抜なことやるな、大丈夫かな、なんて思いましたけど、その姿が原宿の看板になったら、すごく話題になって。他にも頭にサメを乗せたり、タコのヘアスタイルにしたりと、いろいろやってきたんですけど、やっぱり自分の中で小西さんの存在は大きいです。あと、カメラマンの半沢健さんやSTEVE NAKAMURAさん、スタイリストの飯島朋子さんのアイデアもすごく好きで。最後に集まったのが3年前のアルバム『じゃぱみゅ』だったんですよ。

ーーそして、初回限定盤は、空中浮揚してますよね?

きゃりー:はい、浮いてます。今回、どんなことをやろうかって話した時に「“パラパラ漫画”みたいにしたいね」という話になって。実は8着くらい衣装を着替えていて、それが切り替わっていくトリックになっているんです。初回限定盤には64ページのブックレットが付いていて、衣装だけでなくメイクやネイルも少しずつ変化するパラパラ漫画みたいで楽しいですよ。

ーーそれは楽しそうですね。

きゃりー:ジャケット写真は、その中の1枚で。今回、通常盤のジャケに関して思ったのは、いままでの自分のアートワークはけっこう顔を決め込んでいるんですよ。でも、今回、ちょっとアンニュイな雰囲気なんです。

 目の開き方がおっとりしていて、それが意外でした。ふとした1枚なんですけど、まさか、この写真が起用されると思っていなかった(笑)。でもそれが今の自分らしいというか、力がいい感じに抜けているのが素の自分とリンクしていて好きです。

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