稲垣吾郎×村上春樹、名言も生まれた上質な対談 2人を結ぶ「夜空ノムコウ」のエピソードも

 また、村上がレコードとCDの音の違いについて語った名言も記しておきたい。「レコードは温泉に入ってる音、CDはお風呂に入ってる音。温泉に入るとじわっとくる、うちのお風呂はあったかいけどじわっとはこない」。その的確な表現に、『THE TRAD』副店長のハマ・オカモトもさすがの説得力だと大納得。

 最近では、音楽ストリーミング配信サービスの普及などで、CDさえも“かつてのメディア”となりつつある。だが、音楽とは一概に便利であることが最善というものでもない。音の違いに敏感になること、手触りや匂いなど他の感覚と共に味わうことで、また広がっていく世界もあるのだ。それは、これだけ動画コンテンツが充実しても、本に対する欲求が枯れないのと同じように。

 音楽も文学も時代を反映していく。だからこそ、その作品が生まれた時の空間に誘ってくれるアイテムにもなる。それが当時のメディア形態のままであれば、より一層その誘う力は強く感じられるだろう。そんなことを村上が好きだと話したSMAPの「夜空ノムコウ」が流れた瞬間に感じた。聞けば、ラジオから「夜空ノムコウ」が流れていた“あのころ”に引き戻される不思議さ。そして同時に「いつか村上春樹作品を演じてみたい」と熱望した言葉が叶う未来に、稲垣がいつか立ってくれたらと願ってやまない。

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