ポルノグラフィティ 岡野昭仁、新旧名曲に新たな解釈で挑んだ『DISPATCHERS』第2弾 数々の音楽との出会いの架け橋に

ポルノ岡野昭仁、新旧名曲に新解釈で挑む

 ライヴもそろそろ終盤戦。7年前に開催したカヴァーライヴでも歌ったという米津玄師の「アイネクライネ」を披露。今をときめくアーティストの楽曲をディストーションの効いたギターと清廉なキーボードのアンサンブルで届けてみせた。

 この日最後のカヴァーとなったのはフジファブリック「若者のすべて」。この季節ならではのノスタルジックな空気感が真空パックされた、幾多ものアーティストが歌い継いできた夏の終わりの名曲。原曲とは違うアコースティックギターを軸としたアレンジで歌い切り、いつかやってくる夏の終わりと、だからこそ夏が終わる前に踏み出す勇気を想起させる岡野の歌唱でカヴァーコーナーを締めくくった。

 再びアコースティックギターを抱え、岡野ひとりの弾き語りスタイルで披露するのはポルノグラフィティの「フラワー」。生きることを真っすぐに肯定するこの曲は、今なお混沌とした社会の中でも懸命に生きるすべての人への応援歌のように響く。今この瞬間歌うことに大きな意味のある1曲を丁寧に歌い上げた。

 再びtasuku、そして渡辺と共に披露するのは、この岡野のソロプロジェクト「歌を抱えて、歩いていく」が始まるきっかけとなった辻村有記との共作「Shaft of Light」。実験的なビートを軸にした怪しげなムードの漂うエレクトロチューンを鮮やかに歌い上げると、続いて極彩色の光線を一身に浴びながらソロプロジェクトの第一弾楽曲「光あれ」を届けた。

  チャットによるファンからの応援が支えとなって、ライヴ開始時は本調子でなかった声が復活したとファンへの感謝を告げる岡野。ライヴの最後に披露したのはスガ シカオと共作した「その先の光へ」。「光あれ」「Shaft of Light」と連なるように「光」がテーマとなった楽曲。岡野の背後にはひたむきに努力を重ねる人の姿が映しだされる。岡野の歌声が力の限り生き続けるすべての人々へ捧げる希望のように響き渡ると、「皆さん今日はご視聴ありがとうございました!」とファンへの感謝の挨拶でライヴを締めくくった。

 今回の『DISPATCHERS vol.2』は前回に比べてより一層幅広いジャンルと年代のカバー曲を歌いこなす岡野の姿が印象深い。彼自身が「日本の音楽史を探訪する」と形容した通り、世代やジャンル、性別を問わず様々な楽曲をカバーする様からは常に岡野が持つ音楽への、そしてそれぞれのミュージシャンへの深く真摯なリスペクトの念を感じずにはいられない。そしてTwitterやチャットページには今回歌唱したカバー曲を初めて知るファンの姿も多く見られた。岡野が架け橋となって、リスナーの新たな音楽との出会いのきっかけになっているとすれば、それは今現在決して元気とは言えない音楽シーンにとって小さくも無限の可能性を持つ希望の光だろう。

 ライヴ終盤、ポルノグラフィティを「母屋」とするならば、このソロプロジェクトは「離れ」だと語った岡野。「それは母屋があってこそ」「そろそろ母屋の様子も見に行かなくては」と彼らしい独特の喩えで今後のポルノグラフィティの活動にも言及し、ファンを喜ばせた。ライヴ終了後、ポルノグラフィティ公式Twitterには謎のカウントダウンを示す動画がアップロードされていた。果たしてこの動画が意味するものとはなんだろうか。今後の展開にも注目だ。

『DISPATCHERS』特設サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる