乃木坂46 高山一実は「努力・感謝・笑顔」を体現する存在 アイドル・番組MC・小説家、実直な性格で切り開いた多彩な活動
乃木坂46の高山一実がグループからの卒業を発表した。
高山は9月22日に発売となる28thシングルを持って活動を終了。9月8日、9日に開催される『真夏の全国ツアー2021』のファイナル・東京ドーム公演が、高山が参加する最後のステージとなる。乃木坂46は7月14日に松村沙友理がグループを卒業したばかり。今後も伊藤純奈と渡辺みり愛が8月末、卒業と合わせて芸能界からの引退も発表している大園桃子が9月8日、高山が9月末と夏の終わりまでメンバーの卒業が続くこととなる。
「努力・感謝・笑顔」ーー乃木坂46がライブ前の円陣で声を揃えその胸に刻む、デビューから大切にしている言葉。その理念の下、メンバー一人ひとりが乃木坂46というグループを形成してきた。特に高山はその体現者であると筆者は考える。
はっきりと言ってしまえば、高山は同じ1期生の生駒里奈や西野七瀬、白石麻衣といったメンバーのようにグループのシングルセンターを務めるような人物ではなかった。けれど、8月に結成10周年を控える今、高山はデビューシングル『ぐるぐるカーテン』から最新シングル『ごめんねFingers crossed』まで、27作連続で選抜入りを果たす唯一のメンバーとなっている。それは様々なインタビューや卒業発表後に綴った自身のブログにもある、かつて10年続けてきた剣道のように、竹刀を苦手な歌とダンスに変えて直向きに努力してきた証だ。
中でも、彼女にとって努力の結晶とも言えるのが2018年に小説家デビューを飾った著書『トラペジウム』である。アイドルを目指す女子高生・東ゆうの10年にわたる物語を描いた本作は発行部数が25万部を超えるベストセラーに。台湾、韓国、中国など海外でも翻訳版が発売された。執筆は乃木坂46の活動と並行して行われ、制作期間2年の末に完成。ハロー!プロジェクトや宝塚歌劇団など、学生時代からステージで輝きを放つ“アイドル”としての対象を見つめてきた高山だからこそ描ける作品でもある。
アイドルのほかにもクイズ好きとして知られている高山は、2016年にクイズカルチャーマガジン『QUIZ JAPAN』の表紙を飾り、『全国高等学校クイズ選手権』(日本テレビ系)の応援ソング「泣いたっていいじゃないか?」で念願の初センターを務めるなど、当時はまだ乃木坂46にとって馴染みのなかったクイズというジャンルに早くから飛び込んでいったメンバーだ。
そこで高山が任せられたのはクイズプレイヤーとしてではなく、MCという位置。2018年には有吉弘行とともに『オールスター後夜祭』(TBS系)のMCに、2020年4月には『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)にて新MCに就任。『後夜祭』では深夜帯のバラエティ色の強い構成の中、しっかりと有吉やほか芸人のサポートに回り、時には持ち前の明るさで爪痕を残すなど、MCにおいて最も必要とされる安定感を発揮。『Qさま!!』では高山が事前にリサーチした「高山メモ」が番組を盛り上げるアクセントとなっている。そして、ここで触れるべきはもともと高山は決して話すのが得意ではないこと。滑舌の悪さはデビュー初期から自身も認めているが、そのことを微塵も感じさせないのは彼女の努力の賜物にほかならない。