ぜったくんの曲をローカルカンピオーネはなぜダンス動画にしたくなる? 2組が初対面、“表現”について語り合う

徹底的に楽しいことをやっていくのがかっこいい

――2組の魅力を語る際、キャッチーで親しみやすいという共通点があるように思います。そういった表現のアプローチには何か理由はあるのでしょうか?

ぜったくん:僕の場合、キャッチーってことだけに関して言えば、ゆずとかSMAPといったJ-POPを聴いて育ってきたことが影響しているんだと思います。とは言え、そこは狙ってやっているわけではなく、単純に自分の好きなことをやっているだけっていう感覚もあって。そこがリスナーとうまく共感できているのが今の状況として一番的を射てるんじゃないかな。

YUKI:僕らは元々、3人それぞれがダンサーをやっていて、どっちかっていうと洋楽でゴリゴリに踊っていたタイプなんですよ。ただ、コロナ禍になったタイミングでローカルカンピオーネを結成してからは、かっこよく踊るよりもみんなに楽しく観てもらえて、楽しく真似してもらえるものをやったほうがたくさんの人に伝わるんじゃないかなと思うようになって。当初はかっこつけて踊ることもありましたけど(笑)、だんだん今の形にシフトしていったら、そのスタイルを自分らも楽しめるようになったんですよね。

KOH:ダンサーとしてはかっこいい振りをつけたい、音をしっかり取って踊りたいみたいな気持ちはもちろんあるんですけど、でもそれじゃみんな真似できないじゃないですか。そもそも僕らは観てくれる人をハッピーにさせたいっていう目標を持って活動を始めたので、だったら徹底的に楽しいことをやろうよっていう。

RYOMA:そういう考え方で活動をすること自体がかっこいいことだと思えたしね。

YUKI:うん。そういうバイブスがかっこいいんじゃないかなって。トガって見せるのではなく、「みんなハッピーに行こうぜ!」って言えちゃうのが逆にかっこいいっしょっていう。

ぜったくん:そういった部分は音楽も同じだと思いますね。音楽って完全に主観じゃないですか。聴いた人が「かっけー!」って思ったらそれはかっけー音楽だし、その逆も然りっていう。そういう意味では音楽やってる人は全員かっけーんですよ(笑)。だからこそ僕も自分の中のかっけーものを信じてやりたい。で、結果としてそれがたくさんの人に広まってくれたらいいなって感じなんですよね。

KOH:確かにそうですね。僕たちも自分たちのことは、もちろんかっこいいと思ってるんで(笑)。そもそも、オリジナルダンスを動画にして毎日上げてたグループって、僕らより前はいなかったと思うんですよ。最近はそういう人たちが出てきたりもしてますけど、「いやいやこれは絶対真似できないでしょ」みたいな思いはありますし。それくらいのことをやってる自信はある。でも一方では、「自分で振りを作ってみました~」みたいな女の子の動画がめっちゃ流行ったりすることもあるわけで(笑)。そう考えると、もうみんなが楽しければいいのかなって気もしますよね。

ぜったくん:うん、そうだと思う。昔だったら僕も他の人の曲に対して「それはダセーだろ!」「何もわかってねぇな!」とか思うこともありましたけど(笑)、今はちゃんと認められるようになった。

YUKI:僕らもそうですよ。昔だったらたぶん、今の自分たちのことを客観的に見たときに「ダセー」って言ってたと思う(笑)。でもTikTokerもYouTuberもそうだけど、何かを生み出して、それで誰かを楽しませてる時点でかっこいいんですよね。はたから見たらバカなことやってるように思われるかもしれないけど、裏ではみんなめっちゃ一生懸命やってますから。

ぜったくん:ローカルさんはほんとに真剣にやってきてるなっていうのがすごく伝わってきますよね。じゃなきゃオリジナルの振りを考えて毎日動画上げるとかムリでしょ。

YUKI:そう言ってもらえるのは、ありがたいですね。

KOH:うん。俺らマジでめっちゃ真剣だからね(笑)。

――ローカルカンピオーネがハッピーな表現にこだわる裏には、今の世の中に対しての憂いがあったりもするのでしょうか?

RYOMA:それはあるよね。

YUKI:うん。俺らは世の中的にネガティブマインドが蔓延してたコロナ禍に結成しましたからね。そこでみんなを元気にさせたいっていう気持ちはありました。

ぜったくん:それはすごいですね。僕の中にも、聴いてくれた人が楽しくなってほしい、いい気持ちになってほしいっていう思いはあるんですけど、そこが最優先ではないというか。曲によってはネガティブな部分が出てるものもあるので、けっこうまだ自分主観で曲を作ってるところがあるんだなって今思いました(笑)。

RYOMA:基本的に僕ら、ほとんどネガティブにならないんですよ。

ぜったくん:それはすごすぎないですか(笑)? マジですか!?

RYOMA:いや、もちろん個人個人にはあると思うんですけど、でも3人集まって曲を選んで振りを考えて踊っていれば元気になってるんですよね。この3人が集まるとすごく強い(笑)。

YUKI:自然とポジティブが生まれてくるっていうか。こないだMVの撮影で上手くいかないことがあって。ちょっとぐったりしてたんだけど、TikTok用の動画でWANIMAさんの「ともに」を3人で踊ったら、もうね(笑)。

KOH:一瞬で気持ちが奮い立ったもんね(笑)。3人で肩組んで「ワーッ!」って。で、その動画を後から見て、また元気になるっていう。「めっちゃいいじゃん!」みたいな。

YUKI:メンバー間で支え合ってる感じがあるよね。

ぜったくん:めちゃくちゃ楽しそうだなぁ。

YUKI:音楽に救われてる部分も大きいんですけどね。それによって元気になれているというか。音楽がなかったらもうヤバイ。今頃、死んでますよ(笑)。

ぜったくん:いやもう僕も音楽なかったらヤバイです。僕の場合、救いは常に音楽の中にあると思ってますから。

――クリエイトに関してお互いに気になることってありますか?

ぜったくん:ローカルさんは毎日のように動画を上げてますけど、僕は続けることの難しさをマジで感じているタイプなんですよ。トラックを作る最初の段階で何も出てこないことが多々あって。そこで、「じゃ、かっけーって思う人たちの曲を写経しよう」と思って、1日1曲書き写してみるっていうことを始めたんですけど、3日でやらなくなっちゃって(笑)。継続することがかなり苦手なんですけど、その辺はどうしてるんですか?

YUKI:新しい振りを毎日考えることに関しては、やっぱりインプットが重要になってくるような気はしますね。具体的に言えば、いい楽曲のリリックがダンスに対してのインプットになってるかもしれないです。

ぜったくん:ちなみにTikTokの動画で見せている振りは、自分の中のダンスの基礎から来てるものなんですかね?

RYOMA:いや、そうじゃないと思いますね。海外も含めたTikTokで流行ってる振り付けがあったりもするのでそれをアレンジしたりとか、単純に歌詞からのイメージでつけた振りもあるし。要は、今僕らがやっていることっていうのはTikTokっていう新しいダンスのジャンルなんだと思うんですよね。ヒップホップやジャズ、ハウスといったいろんなダンスのうちの新たなひとつというか。

KOH:そうだね。「ダンスのジャンルはなんですか?」って聞かれたら、「TikTokです!」って答えるみたいな。あと、振りのパターンとして手話を調べて入れたりすることもあるんですよ。それもインプットのひとつかもしれない。

ぜったくん:あー、なるほど。伝えやすいですもんね、表現として。

RYOMA:そこに気づいてくれる人がいると僕らもうれしいし。

――ぜったくんは普段、どんなインプットを心掛けていますか?

ぜったくん:僕の場合、さっき言った写経もそうですけど、音楽を聴くことに尽きるかな。コード進行を意識して聴いた上で、「あとで試してみよう」ってなることも多いですし。歌詞に関してはもう完全に自分の生活の中で起きたことが元になってます。映画観て「すげー!」って思ったものとかをインプットしてる感じですね。

KOH:なるほど。僕らもアーティストデビューしたばかりだから、そういうお話はすごく勉強になります!

YUKI:アーティストとしては駆け出しだからね。僕らはこれからTikTok用に短尺15秒のオリジナル楽曲を作って、そこに振りをつけてアップしていこうかと思ってるんですよ。で、反響があったらフルにしてリリースしたりとか。まだ全然できてはいないんですけど。

ぜったくん:へぇ、いいですね。現状、配信されてる曲に関して、トラックはどうしてるんですか?

KOH;今はお願いして作っていただいてるんですけど、ゆくゆくは自分たちで作れるようになったらいいなって。でも簡単にはできないですもんね……。

ぜったくん:フレーズのサンプルを配布しているサイトがあるので、そこからピックアップしたものを自分で切り貼りしてオリジナルを作るってことは可能ですね。それだったらすぐできると思いますよ。

KOH:ぜったくんは、トラックメイクをいつからやってるんですか?

ぜったくん:4年前くらいからですかね。全然まだまだ技術が足りないなって思ってて、まだまだ伸びしろはあると思ってるんだけど、なんとなくできるようになったのは3年くらい経ってからかな。3年くらいはやり続けないとなって感じはあります。

YUKI:3年かぁ。長いね(笑)。

ぜったくん:あ、でもことヒップホップに関して言うと、もうちょっと早いとは思いますよ。サンプリングやループを多用する文化だから、やり方さえわかればすぐできると思うので。from LCとしてはどんなことをやりたいんですか?

YUKI:まだ完全に固まってはいないんですよ。ただ、曲調とかってことではなく、活動スタイルとしては変態紳士クラブみたいなことをやっていきたいなとは思っていて。コアな部分はありつつも、ちゃんとJ-POPシーンに届くような活動をしたいです。

ぜったくん:変態紳士クラブはすごいですよね。(J-POPシーンに対して)あんな届き方なかなかしないでしょ(笑)。

YUKI:ああいう動き方ができたらすごくかっこいいなって思うんですよね。僕らが今やってるTikTokerとしてのマインドとも合うような気がするし。

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