細野晴臣、アメリカンルーツミュージックへの憧憬 Harry & Mac『Road to Luisiana』から『あめりか』に至るまで

 『ルイジアナ珍道中』からちょうど20年。2019年、細野晴臣はソロアーティストとして初めてアメリカツアーを行った。ニューヨーク(5月29日)とLA(6月3日)で行われたパフォーマンスのうち、LAのマヤン・シアターで行われた公演をライブアルバムとしてまとめたのが『あめりか / Hosono Haruomi Live in US 2019』(2021年2月)だ。細野にとっては、ソロでライブ盤をリリースすること自体、これが初めてだった。

 1999年以降、Tin Pan、SKETCH SHOWとライブパフォーマンス回帰をしつつあった細野が、本格的にソロアクトとして現在も続くルーツミュージックスタイルを選択したのは2005年9月に開催された『ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル』への出演だったとされる。だが、こうして『ルイジアナ珍道中』をその前段に置いてみると、細野のアメリカンルーツミュージックへの憧憬が再び種火のように無意識下に灯ったのではないだろうか。

 細野は第二次大戦後に日本を覆ったアメリカ文化への強い憧れと日本人である自身とのアンビバレンツを終始持ち続けながら育ち、その影響が細野の音楽を形作ってきた。自身の50年にわたる音楽キャリアの原点であり未来でもあったアメリカを、細野はひらがな書きの『あめりか』で表した。経てきた時間と距離があってこその選択だと思う。

 1999年に歌った「Choo Choo Gatta Gotta ‘99」と「Pom Pom Joki」は、再び歌い始めた細野にとって重要なレパートリーとなり、『あめりか』にも収められている(「Choo Choo ガタゴト」は歌詞を一部変更した(アメリカ編)として)。聴き比べてみるのも面白い。

 そういえば、今回の2作のリリースのおかげで気がついたことがある。あのLAの夜、ゲストでマック・デマルコが登場して「Honey Moon」をデュエットした。会場で見てたけど、気がつかなかったな。あのときの二人も“Harry & Mac”だったのに。

■松永良平(リズム&ペンシル)
1968年、熊本県生まれ。ライター。1999年、雑誌『リズム&ペンシル』を友人たちと創刊。以後、雑誌/ウェブへの記事執筆、インタビュー、書籍編集などを行う。単行本「20世紀グレーテスト・ヒッツ」(音楽出版社)、編著書「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)。小泉今日子ベスト・アルバム「コイズミクロニクル」初回特典ブック「コイズミシングル」本文執筆担当。翻訳書にテリー・サザーン「レッド・ダート・マリファナ」(国書刊行会)、「ブライアン・ウィルソン自伝」(DU BOOKS)。編集では中川五郎&永井宏「友人のような音楽」(アスペクト)、朝妻一郎「ヒットこそすべて~オール・アバウト・ミュージック・ビジネス」(白夜書房)、小野瀬雅生「ギタリスト大喰らい~炎のロックギタリスト大全」(P-Vine Books)、『ロック画報/カクバリズム特集号』(P-Vine Books)など。

■リリース情報
『Road to Luisiana』
発売:2021年6月9日(水)
CD(Blu-spec CD2)
価格:3,080円(税込)  
6/9配信開始

アナログ盤   
価格:5,500円(税込)
 
『あめりか / Hosono Haruomi Live in US 2019』
発売:2021年6月12日(土)
アナログ盤
価格:5,280円(税込)  

■関連リンク
https://www. 110107.com/harryandmac
http://hosonoharuomi.jp/

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